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愛される王女の物語  作者: ててて
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転機


バァンッ


「おはよう、シルフィオーネ。よく眠れたかしら」


朝早々からお出ましなのは、ピンクの髪にピンクの目をして、お腹のお肉が気になるラベンナ様。


私ににんじんを投げてくる。


「はい、優しい優しい(わたくし)がわざわざ貴方のためにご飯を持ってきてあげたわ。拾って食べなさい」


流石ににんじんに毒はない…はず。

まともに食べていない私のお腹はそろそろ我慢の限界だ。もうこの際にんじんでもいい。

にんじんを拾い、水で洗う。持っていたナイフで皮を向き、スティック状に切ると生でポリポリと食べ始めた。


それを見てラベンナ様は満足そうだ。


「くすくす…まるで家畜だわ」



ラベンナ様は私のクローゼットを開ける。まぁ、素晴らしくらいにワンピース1着しか入っていない。


「貴方、これだけなのぉ?嘘でしょっ、女の子として終わってるわねぇ~。わたくしはここからここまでいーっぱいドレスが入ってるのよっ!」




「まぁ、貴方みたいな不細工にドレスなんて無駄よねっ。こんなボロボロの服の方がよっぽどお似合いだわ」




「あーあ、可哀想。本当に貴方可哀想。こんな美人な私の妹だなんて…私でくすんで見えないでしょうに…。声だってブッサイクだものね…まだ黙っていた方が安心だわ!」


毎日毎日似たような事をして、飽きないのでしょうか、ラベンナ様。

そろそろ、泣こうかな…


「…ちょっと、貴方いつも泣くか下を向くかするじゃない。何よ、生意気ねっお母様に言いつけてやるんだからっ!」


そう言ってラベンナ様は部屋から凄い勢いで出ていった。


あぁ、やってしまった。

どうやらタイミングを誤ってしまったらしい。

もっと面倒臭い方が来てしまう…


バァンっ


本日2度目、扉がなんの躊躇もなく開く。私はもう、目が覚めていて着古したヨレヨレのワンピースを着ていた。


「っ、あらあら。何かあったって聞いたけど()()()()()じゃない。」


入ってきた貴婦人は紫色の髪に寄せた胸、大きく高そうな宝石がたくさん散りばめられたドレスを着ている。

ドミニカ様だ。


「12歳のお誕生日おめでとう。良かったわねぇ、無事、歳が重ねられて。」


ペコっと頭を下げる。


「ふん!ったく、そんな汚らしい格好して。辞めてちょうだい。ラベンナが真似してくれたらどうするのよ!」


そういい私を睨みつける。


「本当にゴミみたいね。聞いたわよ?ラベンナに失礼なことをしたそうじゃない。」


そういうとドミニカ様は右手をおおきく振り私の頬に落とした。


パンッ


「今日は外にいなさい。邪魔よ」



そう言ってドミニカ様は私の腕を引っ張り外に無理やり放り出した。勢いよくお尻をぶつけたためヒリヒリする。


今日は外に出される日か…

まだ、鞭で叩かれるよりはいいのかもしれない。



…せっかくだし、庭でも散歩しようかな。

いつもなら、お腹がすくのであまり動かず隅で座り込むのだけれど、今日はにんじんを食べれたし歩いても大丈夫そう。


多少ふらつきはあるが、ゆっくり歩きながらいつもは行ったことのない奥まで歩く。


辺りを見回すと一つだけ飛び抜けて大きなお屋敷があった。きっとあそこが王宮だろう。あの国王陛下と第1王子が住んでいらっしゃるらしい。


しばらく歩き、王宮と後宮の間の庭園を見渡す。たくさんの花が咲き誇っていた。


綺麗…

しっかり手入れをされていて、この花は愛されているのね。


「ねぇ、その頬どうしたの?」


後ろを振り向くと金髪に青の目をしたお兄さんが立っていた。驚いて固まってしまう。お兄さんは先程ドミニカ様に叩かれた頬を心配してくれてるみたいだ。


「それ痛くない?」


こくり、と頷いてみせる。


「ねぇ、ここで何してるの?」


何をしている…花を見ているだけだけど…指で花を指す


そうすると彼は隣にしゃがみこむ。


「花が好きなの?」


いや、こんなに近くでまともに見たのは今日初めて見たのですが…

好きと言われたら好きなのかな。綺麗だから。

きっと綺麗という言葉は花のためにあるんだろう。あの義姉や義母のためでなく。

こくりと頷いてみせる。


「………ねぇ君、喋れないの?先程から一言も声を発していないけれど。」


怪訝そうに問いてくる。


あ……ついクセになってしまっていた。ここにはラベンナお姉様も居ないし喋ってもいいのかな…?

この方は身なりが整っているし、偉い人の子供かも…私、とても失礼な態度とってるかも?


「い、いえ。もうし、わけござい、ません。

あまり、話すことにな、れていなくて…」


やはり、喉の調子は昨日に引き続き悪い。毒の影響…それとも今まで声を出さなかったのが原因か……


「謝らなくてもいいよ、良かった。話せるには話せるんだね。」


そう言い、優しく頭を撫でてくれる。

驚いた。メイドや使用人たち以外でこんなに優しく微笑んでくれる人がいるなんて…


思わず顔をまじまじと見つめてしまった。

その時に目が合うと、彼は一瞬手を止め目を見開く。


「……君、どこから来たの?誰か使用人の子ども?いや、そんなまさか…迷子じゃないよね。」


どこって言ってもあそこですが…


私は何気なく後宮の方へ指を指す。

お兄さんは私の指の方向へと視線をやってから二度ほど私を見た。


「……まさか。」


そういうと、お兄さんはグイッと私を抱き上げる。


「きゃっ」


「ごめん、確かめたいことがあるんだ。

一緒に来て」


そう言ってお兄さんは走り出す。

風を切るような音を立てながらどんどん視界が変わっていった。


気づいたらどこかの建物の中に入り、ある部屋の前にいた。そこで下ろされ手を繋がれる。


コンコンコンコン


重厚な扉の音が響く。



「入れ。」


中からテノールの声が聞こえた。





「失礼します。」





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