助けてくれる存在
陛下は私を抱き上げ、女性と向き合う。
何故か、陛下という存在に酷く安心した。体から力が抜け息を吐く。
この数分でどっと疲れが出た。
「何をしている、と聞いたのだが」
女性は陛下を見て酷く驚いた顔をしたが、直ぐに我に返り頭を垂れた。
「へ、陛下!?何故、こちらに……い、いえ。ご機嫌麗しゅう、陛下。フェニエア伯爵家が長女、ガーネットでございます。そちらのか、方がどうやら迷っていらっしゃったみたいで、話を聞こうとしたのですが!」
声が震え、足がよろける。
彼女は涙ぐんで陛下を見つめるとヒィッと声にもならない叫びをあげた。
私は思わず陛下を見ようとすると、陛下の手で目を背けられた。そのまま私は陛下の後ろ側を見る。空気を読まないのかニクロスがヘラヘラしながら手を振ってきた。
「何がご機嫌麗しゅうだ馬鹿馬鹿しい。この子が迷うわけないだろう。近くに近衛兵も常駐し、見守るこの花園で。
というか、何故お前がここにいる。」
「ど、どういう意味でしょうか」
「チッ…物分りの悪い馬鹿だな。今日この花園は立ち入り禁止のはずだ。それなのに何故お前がこんな所にいるのかと聞いてる。」
キィンと金属の音が聞こえた。
「……ひッ、ち、違うのです!その、どうしても花が見たくて…!陛下がいらっしゃるとは知らず!申し訳ございません!大変失礼を!!申し訳ございません!お許しください!!」
「別にここでお前の首を跳ねてもいいんだがな。近くには白い花もあるしお前のような汚い血で汚す訳にもいかない。さぁ、どうしてくれようか…」
「許して…許してください!!…何よ、もうっお、終わりだわ…どうせ殺される…うっ…な、何なのよ!!
陛下がいらっしゃるって聞いただけなのにぃ!!そんなの、そんなの仕方ないじゃない!はっ…娘…?もしかしてその子、第1王女のラベンナ様?どうりで!噂に違わず礼儀がなっていらっしゃらないはずだわっ!…これが、こんなものが第1王女だなんて、笑わせてくれるわっ!あは、あはははははははは」
「おい!近衛兵!この女を捕らえて牢に入れろ!今すぐにだ!!」
ニクロスの指示であっという間に女性は捕まり連行されていく。気が狂ったのか、あははははと笑いが止まらずそのまま連れていかれた。
しんっと、先程の嵐が嘘かのように静まり返る。
「…………陛下?…あの~機嫌直してください??これから!お茶会ですよ!準備完璧にできましたから!ね??」
「ニクロス」
「……はい?」
「アイツは俺がぶち殺す。それまでは何もするな。何もだ。いいな?」
「…はい。」
「先にいけ」
いつもよりドスが聞いた低い声で命令する陛下に流石のニクロスも流せないみたいだ。冷や汗を流し顔がこわばっていた。
陛下は先にニクロスを行かせ、近衛兵も散らした。
そして二人きりになると、私を地面に降ろす。
「…大丈夫か」
そう言われて、怖くて逃げたかった気持ちを思い出す。
怖かった…。まだ微かに震える手をさすり、滲み出る涙を流すまいと我慢する。
そんな私に陛下はどこか遠慮がちな手つきで私の背中に手を回し、優しく抱きしめてくれた。
大きくてゴツゴツした豪腕な手は私を落ち着かせるかのようにポンポンと叩く。
そんな事をされては、我慢が耐えられない。一粒の涙が頬を伝ってしまう。それが次々にと溢れ、私は震える手を伸ばし、陛下の背にしがみついた。
私はらしくもなく声を上げて泣いた。
きっとマナーの先生が見たら怒るだろう。レディーにあるまじき行為だと。
でも、今日は、今だけは見逃してほしい。
初めて触れる父親という存在がどれほど安心する存在か、身を通じて感じてしまったのだから。




