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転生

ジリリリリリリリ……



けたたましく鳴り響く音が私を夢の世界から現へと呼び戻す。



窓から差し込む朝日から顔を隠すように枕に顔を埋めながら、依然鳴り響く目覚まし時計を止める。



「はぁ……また仕事かぁ」


憂鬱な気分をひとり吐き出し、重たい体を無理矢理起こす。



目覚まし時計を見ると、いつも通り6時を少し過ぎた頃を指している。



ひとつ、伸びをして体をほぐし、ベッドから出る。


飽き飽きするほど平穏でつまらなく感じてしまうほど同じことを毎日繰り返している間に、社会人になって4年が過ぎた。



学生の頃は楽しかった、そんなどうでもいいことを考えながら歯を磨く。



大学生は人生の夏休みだーーそんな言葉通りの楽しい大学生活を過ごしたあと、つまらない社会人生活を送っている。



口に溜まった歯磨き粉を吐き出し、コップに溜めた水で口をゆすぐ。



水を吐き出すと顔を洗い、着替えて化粧をする。


頭はぼーっとしていても、体が普段通りの行動をちゃんとしてくれる。



もう26歳か……。



しがないOL、秋山冴(あきやまさえ)

それがこの私。



彼氏はかれこれ3年いない。


毎日同じことを繰り返している。

飽き飽きだ。つまらない。



こうして朝起きて、支度をして電車に乗るために駅に立つ。



通勤電車は20分後か。

見慣れた風景、見飽きた景色。



確か、通過電車がもうすぐ来るはずだ。



結婚でもして、子供でもできたら変わるのだろうか。



学生の頃も社会人になれば変わると思っていた。

結局変わらないのかもしれないな。



子供の頃には色鮮やかに見えた景色も、いつしか灰色になってしまった。



新鮮味もなければ刺激もない。

おそらく、この日本の労働者の多くが思っていることなのだろう。

仕方ないとは思えても、耐えかねる。



「間も無く電車が通過致します」



駅構内に通過電車が来ることを知らせるアナウンスが鳴り響く。



その直後、轟音とともに電車が迫り来る。




ドン。

不意に背後から衝撃が加えられ、私の体はホームから弾き出された。



……え?


ホームから弾き出された体は宙を舞いながら線路へと落下していく。



スローモーションになったかのような感覚と共に、幼少期からの思い出が一気に頭を駆け巡る。



走馬灯というのは、一説によると死の局面に遭遇した際、これまでの経験からそれを回避しようとする現象らしい。



そんなことを考えられるほど、不思議と私は冷静だった。



誰が押したのかーーそんなことはもはやどうでもよかった。



ただ、この退屈な日々に幕を下ろせることに安堵しつつも両親への謝罪を心の中で述べた直後、世界は暗闇に包まれた。

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