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賞金稼ぎと魔法使い  作者: 徒 涼他
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おねしょメインのお話です。

人里離れた、魔物が住む森を進むと、そこに一軒の家があった。

「あそこが僕の家だよ」

ゼロが指差したその家はまだ建てられて間もない綺麗な家だった。

(こんな所に家を建てて大丈夫なのか?)

レオンは首を傾げる。

ゼロの家は森のちょうど真ん中にある。つまり魔物が住む森に囲まれているのだ。こんな所にあってはいつ魔物に襲われてもおかしくない。

しかし、レオンとゼロが森に入ってから魔物の姿を見るどころか鳴き声すら聞いていない。

(何か魔法がかかっているのかもしれないな)

辺りを見てみるが、魔法使いではないレオンには特に何も見つけられない。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。ここの魔物は人を襲ったりしないから」

「そうなのか?」

「うん。皆臆病な性格だから人前には滅多に現れないんだ」

「そうか・・・・・・」

レオンは安心すると同時に体を震わせた。

「ゼロ、その」

「何?」

「トイレは何処にあるんだ?」

もじもじしながら顔を赤らめるレオンを見て、ゼロは思わず笑ってしまう。

「笑うな!」

「だって、そんなに恥ずかしがらなくても!」

「いいから場所を教えろ!」

「あれだよ」

ゼロが庭の隅に造られたトイレを指差すと、レオンはそのままそちらへ駆けていく。

(あんなに笑わなくても・・・・・・!)

ゼロが見ていないことを確認すると、レオンはぎゅっと前を押さえた。実は森に入ってから尿意を覚えていたのだが、魔物を警戒して用を足せずにいたのだ。ゼロに言い出すこともできずひたすら我慢していたが、警戒を解いた途端それは強い波となりレオンに襲いかかってきた。

(早くしないと!)

もう少しでトイレに到着するというその時だった。

じわりと温かいものが下着の中に溢れ出した。

(まずい!)

レオンは前を寛げると、慌てて自身を引っ張り出した。既に先からちょろちょろ溢れ出しており、レオンが狙いを定めると勢いを増して地面を濡らしていった。




「お茶、美味しくなかった?」

「えっ?」

いつの間にかゼロに顔を覗き込まれ、レオンは慌てて首を振った。

「そう?それならいいんだけど」

レオンは先程のことをゼロに言えないでいた。用を済ませて家に入るとゼロがお茶の用意をしていたため言い出せなかったのだ。少し濡れてしまった下着を替えることもできず、いつゼロに見つかるかと思うとつい顔が強張ってしまう。

「飲んだら部屋に案内するね」

「部屋?」

「僕を見張るってことは一緒に暮らすってことだろう?見張られるのは嫌だけど、外で寝ろなんてことは言わないよ」

「そ、そうか」

カップを持つレオンの指が微かに震えている。

(そうか、そうなるのか。そうなるとなると・・・・・・)

そんなレオンの様子を見て、ゼロは首を傾げる。

「どうしたの?何か心配なことでも」

「ない!」

レオンはカップに残っていたお茶を一気に飲み干した。

「さぁ!さっさと案内しろ!」

「えっ?僕まだ」

「早くしろ!」

ゼロが渋々立ち上がって部屋を出るとレオンも荷物を持ってその後に続いた。やはり濡れた下着が気になり、ついズボンを摘まんでしまう。

「ここだよ」

それは家の中で一番外れにある部屋だった。ドアを開けると埃臭さと薬臭さが鼻につく。

「以前は研究室として使ってたんだけど、使い勝手が悪くて」

窓を開けると新鮮な空気が入ってきた。レオンも堪らず窓の方へ近付く。

「まずは掃除だね」

「そうだな」




暗く湿った森の中。

幼いレオンは歩き疲れ、木の根本でうとうととしている。歩き慣れない森の中を進むには体力が足りず、レオンはそこから動けずにいた。

(これからどうしよう?)

寝ている間に置き去りにされ、森の中をさ迷い歩いてどれ程の時間が経ったのだろうか?まともに日が差さない森の中で時を知る術はなく、レオンは不安に押し潰されながらも何とか自分を保っていた。

その時レオンの体が震える。

レオンはのろのろ立ち上がると木の後ろに回り、ズボンと下着を下ろした。上着を捲り自身を前に突き出した。

その時だった。

何処からか唸り声が聞こえてくる。

慌てて身仕度を整えると、レオンは茂みの中に身を隠した。

ざくざくと草を踏み分け歩いてくる大きな魔物。

鋭い瞳が、レオンを捕らえる。

「うわぁ!」

這うように逃げ出したレオンだったが、魔物はすぐにレオンの上に覆い被さる。

「やだ!やだ!助けて!」

レオンがどんなに暴れても、魔物はびくともしない。レオンの肩に牙を突き立てる。

「ぎゃあぁぁぁぁ!」

肩が熱い。

そして、股間から熱いものが溢れてくる。

「あぁぁぁぁ!」





「レオン!」

ゼロの声でレオンは跳ね起きた。

「あっ、あっ」

「しっかりして!」

「噛まれた、肩、肩を」

「大丈夫だよ!ほら!」

ゼロが肩を掴む。レオンは身構えたが、痛みはやってこなかった。

「大丈夫、夢だったんだよ」

ゼロはレオンを優しく抱き締めると背中をポンポンと叩く。それが合図のようにレオンの両目から涙が零れ落ちた。

「痛くない、大丈夫」

「でも、血で濡れて」

「ちょっとごめんね」

ゼロが掛け布団を捲ると確かにシーツとズボンが濡れていた。もちろん血ではない。ツンと鼻につくアンモニア臭。それは尿だった。

「ほら、見て?血じゃないよ?」

レオンはおそるおそる下半身を見た。見た途端顔が青ざめる。

「これ、あっ」

「怖かったんだね。よしよし」

今度は首まで真っ赤になる。

「違う!俺は寝ションベンなんか!」

「はいはい、着替えようね。風邪引いちゃうよ?」

「話を聞け!」

叫んだ瞬間、ズボンの染みが更に濃くなった。レオンも自身の先が熱くなるのを感じ慌てて押さえたがそれは止まらず、シーツの染みが更に濃くなっていく。どうやらまだ残っていたものがあったようで、叫んだ拍子に溢れてしまったらしい。

「そんな、これは、その」

言い訳しようにもゼロはその瞬間を見てしまった。レオンは身を固くする。

しかし、ゼロはにこにこ笑ってレオンの頭を撫でた。

「よしよし。全部出たね。すっきりしたでしょう?」

「えっ」

「濡れて気持ち悪いね。お着替えしようか?」

「ゼロ、待て」

「大丈夫、何も心配いらないよ」

ゼロはさっさとレオンのズボンと下着を脱がすと、レオンをベッドから下ろしてシーツを剥ぎ取った。

「今日はもう遅いから洗濯は明日にしよう」

慣れた手つきで作業するゼロを眺めるレオン。

「大丈夫だよ」

ゼロはもう一度笑った。



レオンはゼロのベッドで横になり、ゼロはその横に椅子を持ってきて座っていた。

「ゼロ」

「何?」

「何も聞かないのか?」

そう言ったレオンの瞳は不安そうに揺れていた。

「話したくないんだろう?だったら無理には聞かないよ」

掛け布団をかけ直して、そっと髪を撫でる。

「でもおねしょのことは言ってほしかったな。そうすれば対策くらいしたのに」

「言えるか!」

「恥ずかしいの?」

「当たり前だろ?18で寝ションベンなんか・・・・・・」

耳まで真っ赤になったレオンの髪を撫でながら、ゼロは笑った。

「僕なんかもっと大きくなってもしてたよ。気にすることないのに」

「気にする!お陰で宿にも泊まれない!」

「だからずっと野宿だったんだね」

ここに来るまでの間幾つか夜を越えてきた。その間街に寄りはするものの、宿で休むことは一度もなかったのだ。

「ここにいる間は心配しなくていいよ。どんどん濡らしていいからね」

「誰が濡らすか!」

レオンはゼロに思いきり枕をぶつけた。ゼロはそのまま椅子から転げ落ちる。

「俺はまだお前を信用してないからな!いつかその化けの皮剥いでやる!」

そう怒鳴るとベッドに潜り込んだ。

「はいはい、楽しみにしてるよ」

ゼロはクスクス笑いながらレオンの頭を撫でた。

腹が立っているはずなのにゼロの手は温かく、レオンはすぐに眠ってしまった。

今までで一番ぐっすりと眠れた夜だった。

読んでいただきありがとうございます。

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