二月二十八日の日記
二月二十八日の日記
まさかわたし自身がこんな事件に巻き込まれるとは思ってなかった。
この日記を書いている時間は二十三時だ。
二十二時に警察の事情聴取を終え、三十分前に帰宅したところだ。
習慣として日記を書いているが、この行為が無ければわたしはモヤモヤしたものが気持
ちを今以上に覆っていたかもしれない。
今日、警察にこういった内容を説明した。
家族三人で近くのスーパーマーケットに買い物をした帰り道。カイトを真ん中に両サイ
ドをそれぞれわたしと俊平が手を握ってた。カイトは鼻歌なんかを歌っていた。わたし達
は鼻歌のリズムに合わせながら、カイトと繋がっている手を前後に揺らしてた。
その時にわたし達の背後で、それも遠い位置で何かの音がした。
最初に気がついたのは俊平だった。
立ち止まり音がする方向に見た。
わたしが「どうしたの?」と尋ねると「何か聞こえない?」と質問を返された。それを
聞いた時に何を言っているのかと思った。けれど、段々とその異音が大きくなるのが分か
った。遠くを見ると何かが道の幅目一杯にゆらゆらと左右に揺れていた。その場に居たわ
たし達三人がずっと見ているとそれが車だとわかった。
俊平が「壁に寄って!」と大声と叫び、わたし達はその言葉に従い壁に急いで並んだ。
その何秒後には猛スピードを出しながらわたし達の前を通っていった。その時、俊平が
カイトとわたしを覆い守ってくれた。
車はそのまま猛スピードを出し続けながら電柱にぶつかり止った。
「見てくる。この場に居て警察を呼んで」と言い、止まった車の元に行った。わたしは
電話をして警察を呼んだ。その後に「どうなの?」と呼ぶと「来ちゃ駄目だ!死んでる」
と大声でわたしに言った。後で俊平に聞いたらまるでナメクジが塩を浴びたように運転手
の体は溶けていたそうだ。
こんな事態に巻き込まれるとは信じられない。
事故で大きな音が響き、やじ馬が何人も来てた。ただ、その中にスーパーマーケットで
出会った黒ずくめの男が居た気がした。
気のせいだといいのだけれど。
つづく




