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神鋼人類  作者: 真宮寺
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ヘパイストス

稲穂に抱きしめられてからかれこれもう30分は立つ

「そろそろいかんと、稲穂そろそろはなしたれや」

「3年間も離ればなれだったあと数時間は必要」


このままあと数時間…だめだ目眩がしてきた

3年の疲労と森を駆け抜けたことで俺は立ってるのがやっとの状態だった

「もう…だめ…」

ガクガクっと足がゆれ、意識が遠退く


「ほらみぃ、はなしたれやゆうたやろ」

「凱!凱!」

稲穂が俺を揺さぶるがその努力もむなしく俺は意識を落とした




気がついたらそこは知らない天井…じゃないどこか懐かしい天井だ

「ここは…俺の部屋か?」

思い出した三年前まで住んでいた財前家の俺の部屋、捕まった日から何も変わってはいない


俺はゆっくりと体を起こして周りを見回すタンスからダンベルまで整理されているが間違いなく俺の部屋だ

「本当に帰ってこれたのか…」

頬をつねる、ジリジリとしたが痛みがこれは現実だと教えてくれる

立ち上がろうとベットに手をおくとなにかに触れた

大きく少し暖かい


「んっ」

もぞもぞと隣でその何かが動く


「なんだ稲穂かよ」

布団をめくると俺の横で稲穂が寝ていた

懐かしいな、よく潜り込んできたっけ


「おうおう、起きたら女が横におったのに反応うすないかにぃちゃん?」

声の主の方を向くとニヤニヤした修夜と無表情の男の子と指の隙間から顔を真っ赤にしてこちらを覗き見る女の子がいた


「別に朝起きたらもはや家族と思っている女が寝ていたただそれだけだ反応のなにもねぇよ」

「家族ね、まぁわいらにはわからんことやけど…嬢ちゃんがこれから苦労するってことだけはわかるわ」

修夜が少し悲しそうな目をして少し笑いため息をつく


「すまねぇ今俺は無神経な事をいったかもしれねぇな」

彼らも鉄鋼人種家族を知らない奴がほとんどだ、彼らもそうなのだろう

「きにすんなや、今は家族みたいな奴らがおる」

「なっライ、フウ」

修夜はわしゃわしゃと双子の頭を撫でる


「あははくすぐったいよ」

「やめてよ、僕はもう子供じゃないんだ」

女の子は心底嬉しそうに、男の子は少し照れながら笑った


まるでほんとの家族のような光景に昔死んだ父さんと母さんを思い出した

「凱には私たちがいるよ」

いつのまにか起きていた稲穂が優しく手を握る

察してくれたのだろう、昔からそういうのが得意だったからな

「あぁありがとう稲穂」


稲穂はニコッっと笑い腕に抱きついた

「だからもう二度と離れないでね」

「あぁもう捕まらねぇよ」

俺も修夜と同じように稲穂の頭を撫でる


気持ち良さそうに目を細める稲穂が懐かしくてつい頬が緩んでしまった

「おあついでんなぁ、お邪魔でしたら出ていきまっせぇ」

またニヤニヤした修也に煽られてしまう


「あと二時間したら戻ってきて」

「わかったわ、延長すんるなら別料金やで」

はぁはぁいってる稲穂と手を金マークにしながら下がっていく修夜

「やめろ、俺をおいてくんじゃねぇ」

こいつと二人にされたらなにされるかわかんねぇ


「オッホン、二人ともおふざけが過ぎるんじゃないのか?」

わざとらしく咳払いをするおっちゃん


「ちっ、いたんですか父さん」

「いやぁ財前のおっちゃん堪忍してや、あまりに反応がおもろぉて」

恨めしそうに睨む稲穂と顔の前て手をあわせ軽く謝る修夜


「すまない凱、君に会えて舞い上がってるようだ、普段は大人しい子なんだけどね」

「いや別におじさんが謝ることじゃねぇよ」

「そういってくれるとありがたい、そろそろ離れなさい!稲穂!」

「わかったよそんなに怒らないでよ父さん」

渋々離れていく稲穂だがまだ手は握ったままである

「これを離したらまたいなくなるかもしれないこれだけはまだ離せない」

ぎゅっっと握る力を強める稲穂


「はぁ~まったくすまない凱くん」

「いいですよ、これで稲穂が安心だというなら」

3年間も心配かけたんだ、これくらい我慢しよう


「じゃあそのまま聞いてくれ、私がここにきたのは凱くん君に話があるからだ」

「話ってヘパイストスとかいう組織の事ですか?」

「覚えてくれていたのなら話が早いあの時の君はふらふらだったから覚えてくれているかわからなかったから不安だったんだ」


「覚えてますよ」

「じゃあ」

「はい、参加させてください、あんなところにもう戻りたくない、誰もあんな地獄経験させたくない」

知らず知らずに俺は拳を強く握っていた

稲穂の手を握る手も次第に強くなっていく、その分稲穂も強く握り返してきた


「そうか、共に作ろう安心して暮らせる世界を」

強く握った拳をおじさんは優しく握る


懐かしいな、おじさんの体温がゆっくりと伝わってくる

よくこうやってはげましてもらったな


「おっしゃじゃあ歓迎会と行きたいとこやけど、あそこじゃろくな飯でえへんやったやろ、今日は軽めのもんくってねえ歓迎会はまた明日や」

修夜が俺の肩を叩いて部屋を出ようとした


「ちょっと待ってくれ」

「ん?なんや」

俺は修夜を引き留めた


「もう一度、礼を言わしてほしい、本当にありがとう」

俺は深く深く頭を下げた

「ええてええてこれからがんばろな、期待してるわ」

修夜はニカッと笑い後ろ向きに手を振りながら部屋を出た 

俺はもう一度ベットに倒れ眠りに落ちた

あの時とはちがう、希望のある眠りに



目を醒ますと相変わらず稲穂が横で寝ていて、テーブルにはどこかみたことがあるメイドが朝食を用意していた

「お目覚めですか、凱様」

「あぁありがとう」

お粥のようなものとスクランブルとハムとトーストのプレートがあった

俺はプレートの方に座ろうとするとメイドに止められる

「そちらは稲穂様の分ですよ」

「やっぱりか」

俺は大人しくお粥を啜った


「稲穂はまだ寝てるな」 

「はい、凱様が連れ去られてからあまりお眠りになれていなかったようで」

「心配かけたんだな」

俺はお粥を飲み干し茶碗をおいた

「我々メイドもとても心配しておりました凱様よく戻られました」

「ありがとう」

この家には長い間住んでいた、親父とお袋が死んで財前家に預けられた時からだ10年近く住んでいた皆家族同然だ


「食べ終わられましたら食堂に来てください、皆様がお待ちになっております。」

「分かったすぐ行く」

俺は稲穂を起こしてお粥をすする











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