#2
並列接続された十数台のサーバ、散在する端末類、医療器具、アンテナ、受信機、その他不明な機材が雑多に置かれている。真田の研究室の床は配線で埋め尽くされ足の踏み場もない。中央には被験者用のユニットが置かれ、寝台に横たわっているのは一昨日死んだばかりの男性の死体だ。真田と今泉があらかじめ全身にマーキングしてあった経穴に手分けして鍼を打っていく。左側頭部と後頭部には外科処置が施され太いプラグが差し込まれている。プラグから伸びたケーブルの先はルーターで分岐され各種機材につながっている。心電図もあるが波は平らのままだ。
すべての鍼を打ち終わると真田と今泉それぞれの席につき端末を叩きはじめた。
「霊性情報の検索を開始します」
今泉がエンターキーを叩く。コマンドラインの最後尾でカーソルが点滅しているのを見つめながら辛抱強く待つ。前触れもなく英文が表示され検索が終了したことを告げる。
「真田先輩、霊性情報をキャッチしました」
真田がキーボードを叩く手を止め、今泉のモニターをのぞきこむ。
「ダウンロードしてチェックサム算出」
今泉は命令を打ち込み、しばらくすると画面に英数字のランダムな列が表示された。死体がまだ生きてた頃にその霊性情報から算出した英数字の列と比較する。
「符号しました」
「インストール開始」
並列接続されたコンピュータたちが一斉に唸りを上げた。寝台の上の死体を見ると全身が淡い白光に包まれはじめた。この作業に慣れているはずの今泉だが死体の発光現象を見るといつも不気味に感じてしまう。
端末の画面に表示されたインストールの残りのパーセンテージがどんどん減っていく。「0.00%」と表示されたと同時に死体の発光現象もおさまった。
「インストール完了しました」
真田と今泉は死体を見つめる。今泉はこれから起こる事象にそなえ身構えた。突然、死体がぶるぶると激しく痙攣し寝台の上で暴れた。体に巻かれた拘束ベルトのおかげで落下せずにはいるがかなり激しく暴れている。今泉はひきつった表情でそれを見ている。しばらくすると痙攣が徐々におさまり死体は再び静けさを取り戻した。心電図は平らのままだ。
「起きろ」
真田が無表情のまま死体に向かって命令した。反応はない。「起きろ」ともう一度命令したが同じく反応はなかった。真田は諦めて今泉に「言語認識プログラムを」と言った。今泉が端末を叩くとすぐに「言語認識プログラムのインストール完了しました」と答えた。
真田が死体に命令する。
「起きろ」
死体が反動もなく上体を起こした。まるで糸で操られたマリオネット人形のようだ。真田が死体に顔を近づけて言う。
「目を開けろ」
死体の目が開く。瞳孔は開いたまま。瞳の奥には闇がひろがるばかりで命の灯火をみつけることはできない。
「お前に俺が見えているのか」
死体はなにも答えない。




