3.できました!
「できた!」
満面の笑みを浮かべながらルミリア様は生地の乗った鉄板を見せて下さいました。鉄板の上には謎の形をした生地が並んでいました。
えっと、まずこれは――剣、ですよね? そしてその隣にあるのは――盾、でしょうか?
他にも奇妙な形をした槍や斧らしきものがあったり、顔のあるキノコらしきものや、円から手足(?)が生えたような見たことのない生き物らしきものなどがあります。……なんとコメントしたら良いのでしょう。
とりあえず無難に「すごいですわ、ルミリア様! 出来上がりが楽しみですね」と言ってすぐにオーブンへ入れました。
クッキーが焼き上がるのを待っていると、ルミリア様のお腹から「ぎゅるるる」と音が聞こえてきました。
はっ、いけません! クッキー作りのことばかり考えていて、ルミリア様のお腹のことを考えていませんでしたわ。主のことを優先して考えれていないなんて侍女失格です。
「申し訳ありません、ルミリア様。今すぐに軽いものを用意いたします」
私は急いで厨房で使っても支障のなさそうな食材を探します。
「い、いいよ、シェリエル。もうすぐクッキーが焼けるでしょ? 試食として食べるから全然大丈夫だよ。それに先に何か食べてたら味が分からなくなっちゃうし」
「……仰る通りですわ。ではお水だけでも用意いたします」
「ありがとう」
私は食器棚からコップを取り出し、水を注いでルミリア様にお持ちしました。
オーブンから香ばしい香りが漂い始めてきたので、私はクッキーを取り出しました。
クッキーはほとんど焼きムラなく良いきつね色に焼けております。
「ルミリア様、キレイに焼き上がりましたわ♪」
「あ、本当だ。じゃあ早速試食してみよう!」
ルミリア様は早速クッキーに手を伸ばされました。
「おいしい~! シェリエルも食べてみなよ」
「よろしいのですか?」
「もちろんだよ。一緒に作ったんだから」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、いただきます」
私も試食をさせていただきました。
食感は硬すぎることなく丁度良い硬さです。味もほどよい甘さです。
「おいしいですわ、ルミリア様。あとは冷めたらこの袋に入れて……やはり時間ギリギリになってしまいますね」
「えっ、そうなの? なら、さっきのクーラーボックスに入れちゃうのはどうかな?」
「それではクーラーボックス内の温度が上がってしまうのであまりよろしくないです」
「そっかぁ……。それなら私が魔術で冷ましておくのはどうかな?」
「そうですね、すみませんがよろしくお願いいたします」
私はルミリア様にお願いし、急いで鉄板からクッキーを移動させて鉄板を片付けます。
ルミリア様は風の魔術でしょうか、クッキーを浮かべてまるで竜巻に巻き込まれたもののようにぐるぐると回してらっしゃいます。……ちょっと楽しそうです。
片付け終わった頃に、クッキーも冷めたので急ぎつつも丁寧に袋へ入れます。最後にリボンで飾りつけをして完成です!
「さぁ、お部屋へ戻りましょう」
と言った直後、厨房の扉がガチャリと開き、調理服姿の男性2人が入ってきてしまいました! どうしましょう、急いで隠れなければ!