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ムネヨシ  作者: 大原英一
第一章 吉宗
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ご無沙汰

 リストラ作戦発動からちょうど一年が経ち、経過はまずまず順調だった。

 マンパワーパラダイス社から一期生スタッフとして大川誠一が入場し、以降同社から続々と派遣スタッフが送り込まれた。大川を含めすでに四人である。

 念願の社員削減のほうも着々と進んでいた。この一年でふたりが異動になった。派遣四人に対して社員がふたりだから、まあまあのペースといえよう。


 吉宗は有事町データセンターでの教育係としての役目を終え、晴れて本社勤務に戻っていた。

 これも何もかも、一期生スタッフの大川が頑張ってくれたおかげである。むろん一期生だけに吉宗も力を入れて教育した。

 大川の飲み込みがよかったので、彼の後輩スタッフを教えるのはずっとラクだった。三人目からは大川が吉宗の代わりに教育係を引き受けるまでになった。

 それでお役御免になった吉宗は、本社勤務に戻れたというわけだ。

 マンパワーパラダイス社の営業担当である剛流さんに感謝しなくちゃいけない。ふつう、取り引き実績のない新規の派遣会社で、ここまで出来ませんよ。

 大川というオペレーション経験者をあの値段で連れてくるとは、見事な手腕というほかない。おまけに彼女は美人だ。


 一年ぶりに吉宗は平穏な日々を噛みしめていた。やはり、アウェーの地は居心地が悪かった。その土地の社員たみを根絶する使命を帯びた吉宗なら、なおさらだ。

 今後しばらくは有事町データセンターの業務量と派遣スタッフの育ち具合を見ながら、リストラの進行を図ることになる。

 だがそれを決めるのは部長であって吉宗ではない。そう考えると、吉宗はただ教育係として使われただけのような気もする。

 べつに構わない。だってそれがサラリーマンっしょ!


 ひさしぶりに釣りでも行こうかな、そう考える余裕すら出てきた。この一年は吉宗にとって本当に釣りどころじゃなかったのだ。

 ふとデスク上の、一枚の履歴書が吉宗の目に入った。

 佐藤宗義……マンパワーパラダイス社から最近入った派遣スタッフだ、四人目の。吉宗も顔合わせはしているはずなのだが、正直まったく印象に残っていない。

 さとうむねよし……ムネヨシ! そうだ、たしかムネヨシとかいう吉宗のそっくりさんがいると、田島のおっさんが言っていたっけ。

 まあ佐藤宗義については、そっくりさんという線はないだろう。どんなに印象が薄いといっても、そこは気がつかないわけがない。

 惜しむべきは手許の履歴書に佐藤の顔写真が載っておらず、すぐに確認できないことだった。派遣会社が提出してくる履歴書というのは特殊な規制がかかっていて、一部個人情報がカットされていた。だが、わざわざ有事町まで出向いて佐藤の顔を確認するまでもないだろう。


 田島とは尾白川以来、一度も会っていない。最近ではフェイスブック上で彼の記事も読んでいない。そもそも吉宗は、最近フェイスブックにログインすらしていない。

 もし万が一、田島からコメントなりが届いていたら、それを無視するかたちになり申し訳ないと吉宗は反省した。それでひさしぶりにフェイスブックにログインした。

 ところがだ。

 ない。「友だち」の欄に田島の名前がなかった。これはいったい、どういうことだ。吉宗が無沙汰をしているあいだに、なんらかの都合で登録を抹消してしまったのだろうか。

 その後、「友だち検索」で探してみたが、吉宗の知っているあの釣りのセミプロはどこにも見つからなかった。お手上げだった。

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