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ムネヨシ  作者: 大原英一
第一章 吉宗
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リストラ大作戦

 まったく、どてらいミッションを授かったものだ。

 昼休み会社近くの公園で、缶コーヒーを口に含んだあと吉宗は一人ごちた。上司は数名のリストラを考えている。吉宗はその下地づくりを命じられたのだ。

 有事町のデータセンターのことは吉宗も知っていた。まったく採算のとれていない現場で、そこに古参の社員が数名へばり付いていた。

 吉宗のミッションはその数名を狙撃スナイプすること。ゴルゴばりにやるわけだ。が、もちろんライフルを使うわけじゃない。


 作戦の手始めに、吉宗自身が現場へと送り込まれた。有事町のデータセンターで実際に働いた。仕事をおぼえるためだ。

 三か月もするとほぼ仕事をマスターしてしまった。これは吉宗が優秀だから、ではない。仕事が超簡単だからだ。

 データセンターという場所は、ようするにサーバ(コンピュータ)の貯蔵庫だ。やる仕事といえば機器の巡視とエラーがでたときの通報、あとは磁気テープにデータを保存するくらいしかない。

 誰でもできる仕事だ。誰でもできる仕事に社員を充てていたら会社が疲弊する。なので、使えない古株たちを一人ずつ引っ剥がしていくのが吉宗に与えられたミッションである。


 具体的にどうするかといえば、社員を減らし派遣に切り換える。わりかしどこの企業でもやっていそうなことだが、実際はそう簡単ではない。

 ひとくちに派遣といってもピンキリだし、データセンターにおけるオペレーション業務のような交代勤務は、チームとしての連携がもとめられる。

 たとえるならベテランばかりが幅を利かせている弱小野球チームに少しずつ若手を補充し、チームとして機能させつつもじわりじわりとベテランを削っていくようなスタイルだ。性格が悪くなりそうだと吉宗は思った。


 派遣会社を選ぶ必要があった。吉宗の勤める会社は中堅のシステムベンダだったが、ウチをつかってくれと申し出る派遣会社はごまんといた。

 何度も言うが派遣さんはピンキリだ。有名な派遣会社の優秀な人材なら、それは安心だろう。だが値段が高い。

 そもそも今回のミッションは社員を減らしてコストダウンしようという目論見なのだから、高い買い物をしては意味がないのだ。

 なので安い値段で質のいい派遣さんを見つけなければいけない。これがまた超たいへんなんである。コストを抑えるとびっくりするくらい、バイトかっていうレベルの人材しか集まらない。


 願わくばふつうのレベルであってほしい。そうすれば吉宗のほうで教育することができる。そのためにわざわざ現場に入って仕事をおぼえたのだから……。

 ともかく、かぎられた予算で最良の人材を見つけるしかない。吉宗はこれまでの取り引きの有無にかかわらず、かたっぱしから派遣会社に声をかけて行った。

 そのなかにマンパワーパラダイス社という、ちょっと浮かれた社名の派遣会社があった。



 剛流 舞という名の営業担当は、そのごっつい名前とは裏腹に、思わず二度見するくらいの美人だった。

 ゆうても吉宗は既婚者だ。いくら営業さんが美人だからといって、それだけで派遣会社を決めるわけではない。

「ちょうどオペレーション経験者が空いておりますので、すぐにでもご提案できるかと……」

 彼女のその言葉を聞いて、吉宗は九分九厘ここに決めようと思った。女きか!

 そんなわけで、さっそく剛流さんイチ推しのスタッフと面談を組むことになった。いくら営業さんがキレイでも彼女が現場で働くわけじゃない。スタッフ本人を見てダメそうだったら、それはしゃーない部分がある。


 剛流さんに連れられて面談にやってきたのは、大川誠一という三六歳の小柄なおっさんだった。まあ吉宗自身が三四歳だから、さして変わらない。おっさんとか言ってごめんなさい。

 かるく業務やシフト勤務のことなどを聞いてみたが、問題なさそうだった。それで吉宗は大川に決めた。

 華麗なるリストラ大作戦の、その一期生となるスタッフを、マンパワーパラダイス社というこれまで取り引きのない派遣会社から迎えた。金額がリーズナブルだったというのもある。

 ちなみに営業さんはめっちゃ美人である。

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