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ムネヨシ  作者: 大原英一
第五章 舞っちんぐの推理 
19/21

ダイアローグ2

「ねえ、アタシと大川くんがもし一年前に一度しか会ったことがなくて、いま急に電話がかかってきたら、アタシの声だってわかる?」

「いやー、無理でしょう」

「だよね。たぶん、今回の犯罪はそれとおなじ手口が使われたんだと思う。犯人が田島さんに『なりすまし』て、吉宗さんを電話で誘ったのよ」

「え……でも、田島さんのケータイから発信されたのは間違いないって、通話記録も調べたって佐久間刑事が言ってましたよね。犯人はどうやって、彼のケータイを手に入れたんです?」

「犯人は田島さんに近しい人間よ。ってゆうか、ぶっちゃけ彼の奥さんだと思うの」


「マジっすか」

「いまどきケータイやスマホを二、三台持っているくらい、めずらしくない。とくに田島さんはお金持ちだし交友関係も広いし、浮気の疑惑もあった。こういうシナリオはどうかな。田島さんがメイン・ケータイとサブ・ケータイを持っていたとして、サブのほうを浮気用に使うか使うつもりだったとしたら」

「なるほど、そりゃあ奥さんに怒られますね」

「うん、奥さんはサブ・ケータイを没収する。でも解約はしなかった。浮気のチェックという名目でキープしていたのよ、もちろん後で犯罪に使うために」


「うーん……すると必然的に、奥さんには共犯者がいたってことですね。しかも男性だ。その彼が田島さんに『なりすまし』て、サブ・ケータイを使って吉宗さんに電話した、と」

「そう。……ねえ大川くん、なにか気がつかない?」

「あっ、そうだ! 佐久間さんとも話題になった電話番号の件。やっぱり吉宗さんと田島さんは、尾白川で番号を交換したんですかねえ」

「アタシは、してないと思うの」

「え……ええーっ!」

「主犯である奥さん……ややこしいからレイコね。レイコは、フェイスブックで吉宗さんの顔と名前を知っていた。夫から吉宗さんの『そっくりさん伝説』も聞いていた。これがすべての、はじまりだったの。そこへある偶然が加味して、この殺害計画を思いついた」

「偶然……」

「そう、その偶然こそが、吉宗さんの番号を彼女がゲットしたことよ」


「でも、どうやって」

「番号の書かれたメモを道で拾ったんじゃない? ……ってゆうのは冗談。まあ、いちばん考えられるのは、レイコの共犯者で浮気相手でもある男が吉宗さんの知り合いだったとか」

「また好都合な……でも、レイコに男がいたのは間違いなさそうですね。ダンナの浮気を責めておいて、ひどい話だ」

「その共犯の男を仮にエックスと呼ぼうか。セックスじゃないわよ?」

「セクハラっすか」

「で、文字どおりセックスのあとでエックスがシャワーを浴びているあいだに、レイコは彼のケータイを盗み見る。電話帳機能から吉宗さんの番号を探し出してメモする。さあ、ここからが彼女の長い一年のはじまりよ」


「えっ、それが一年前? ……ああ、でもそうなるか。それって必要な準備期間だったんすかね」

「もちろん。理由その一、夫と吉宗さんの動向を静観する必要があった。もし彼らが意気投合しちゃって、しょっちゅう一緒に釣りをするような関係になったらこの計画はパア。あくまで一年後かそれくらいの、しばらくぶりに、ふたりが再会するってゆうシチュエーションづくりが要るわけ。じゃないと『なりすまし』の電話も通用しないでしょ、こいつ声が違うぞって」


「たしかに……」

「だからレイコはフェイスブックに目を光らせていたでしょうね。さいわい吉宗さんの仕事が忙しくて、ふたりが再会するのはおろかフェイスブック上でのやりとりすら、ほとんどなかった。

 理由その二、彼女自身がエックスとの関係を修正する必要があった。不倫の関係はヤメにして、しばらくは大人しくする。痴情が絡めばそれだけ尻尾を出すリスクが増えるから。アタシがレイコだったら、ケータイも番号ごと変えちゃうなー」

「なんか、実感こもってますね……」

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