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ムネヨシ  作者: 大原英一
第三章 犯人
12/21

麗子の変容

 あの日以来オレと麗子の関係は変わった。鬼怒川吉宗をオレが知っていると彼女に伝えた、まさにあの日だ。

 麗子と最後の電話をしたとき、彼女にこう言われた。

「ごめん、しばらく会えないしケータイの番号も変えちゃうけど、アタシのこと嫌いにならないでね」

「……しばらくって、どれくらい?」

「一年くらいかな。信じて待っていて、そのかわり、毎月あなたにプレゼントを送るから」

「なにを?」

 ふふふ、と笑って彼女は電話を切った。それ以降、彼女のケータイはつながらなくなった。

 ふつうに考えると、ちょっと怖かった。まさか猫の死体とか送ってこないよな……。

 それにしても麗子に何があったのだろう。単純にオレとの関係を清算したくなったのだろうか。彼女の言葉を信じて、一年待てばまた元どおりになれるのだろうか。


 数日後、差出人の書いていない封筒がオレのアパートに届いた。どうも、これっぽいな……。

 開封するとなかに鍵が入っていた。ロッカー・キーのようだった。さらにメモが入っていた。XX駅の南口ロッカーと記載されていた。

 麗子がオレに渡したいものは、その指定されたロッカーに入っているということか。ものすごい念の入れ様だ。

 封筒の宛先もメモも両方パソコンで打ち出された文字だった。彼女はテコでもオレと接触した痕跡を残したくないらしい。

 ここまでされると逆にロッカーの中身が楽しみになってくる。まさか鍵を開けた途端に爆弾が爆発とかは、ないだろう。オレなんて殺す価値もない。


 さっそくXX駅へ出向いた。指定されたロッカーに鍵を差し込むと、アホほど簡単にそれは開いた。

 ロッカーのなかに、またしても封筒が入っていた。おいおい、これって堂々巡りのマトリョーシカじゃないだろうな……。

 が、封筒を手にしてみると厚みがあった。とある期待をもってそれをアパートまで持ち帰った。

 開封するとやはり現金が入っていた。二〇万円なり。オレがもらっていいの? この封筒にはメモが入っていなかった。

 あれこれ考えるまでもなく、ありがたくオレは頂戴することにした。麗子はオレにプレゼントすると言ったのだ、問題ないはずだ。

 え、たしか「毎月」と麗子は言ったよな? オレは思わずニヤついた。彼女からこれまでもらっていたお小遣いの比ではない。

 これはもしかすると、あれか。念願の情夫への昇格ということか。毎月この金額をオレに送るのは並大抵じゃないだろう。


 それから半年間、オレは毎月指定の口座じゃなくてロッカーに金を受け取りに行った。麗子は約束を守った。

 半年を過ぎるともう送金がストップされるんじゃないかという不安はなくなった。彼女の言葉どおり、一年間は続くはずだ。

 なぜ彼女がオレに金を送るのかは明白だった。オレを紐につないでおくためだ。まさしくヒモである。

 麗子はなにかを待っている。それは半年後くらいには、あきらかになりそうな雰囲気だった。

 もしかすると恐ろしいことかもしれなかった。ダンナを殺してほしい、という彼女の言葉がよみがえる。



 オレがロッカーの前に立つのは、これで一三回目だった。金を受け取りはじめて一年が経ってしまった。さすがに、そろそろ終了かもなと思っていた矢先のことだ。

 ロッカーを開けるとなかに封筒はなく、かわりに一枚のカードが入っていた。カードにはパソコンではなく手書きの文字でこう書かれてあった。

『この駅の北口を出て。クルマであなたを拾うから。麗子』

 そうか、今回にかぎりここへ来る時間までがメモで指定されていたのは、そういうことだったのか……。

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