第一章 出会い。 第三話 君と九十九世界。
夥しい数の世界が重なり合って、一つの大きな世界……宇宙と言えばいいのかな……を形作っている。その一つに彼らが住んでいて、他のどれかに君が暮らしている。僕たちはそれを直感として知っているけど、科学で立証されないことは大きな声で言わないのが僕たちの世界の……マトモな人達の……ナラワシ。
だから、誰も言わない。
それでも、世界は無限に重なり合っていて、それぞれはとても離れた場所に位置しながら、密接に絡み合っている。僕たちの世界ではそれに名前をつけることはないけど、彼らが生きている世界では「九十九世界」と呼んでいる。古い言葉でミュ・ヒュールとかテュー・デュラなんて呼んだりもする。僕たちの世界の「積層してる事」や、「折り重なってる事」を表す単語との間に発音上の共通点がある訳だけど、それは当然の事なんだ。魂は全ての世界を循環しているから。魂が記憶を運んでいるからなんだ。「九十九世界」の「上方世界」や「下方世界」 にさえ魂は巡っているんだ。魂は全ての世界を循環するエネルギーで、それぞれの世界でそれぞれの神……超越体と呼んだ方がいいかな……が流れを司っているんだ。物質科学も確かにすばらしいけど、本当に価値があるのは「魂の力」なんだ。例えば……電話したりメールしたり、チャットしたり出来る科学はすごいけど、そこに本当の価値は無いんだ。電話やチャットを通しながらも実際にそばにいるかのように感じるキモチが大切なんだ。僕たちは、そういった「ツナガル感覚」をもっと大切にして行かなくちゃいけない時にきてるんだ。この感覚は、次のステップに進む為に……魂で世界を巡る為に必要なチカラなんだ。彼らはそれが僕たちなんかよりはるかに上手に出来るんだ。魂の力を操り術を執り行ったり、魂の力を集中させ、普段出せない力を出したり出来るんだ。ちょっと、話がそれちゃったかな。
まぁ、そんな訳で、簡単だけどこれが「九十九世界」。
僕たちの世界の隣にある……遥か彼方の世界。
……トリアエズ、ようこそ。