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第7話 朝に弱いのは少女の務め


エリカの得物決定!


そしてエリカが少女かどうかはノーコメント!


おk?




「エリカちゃん、朝よ~」

「……ふみゅ」


翌日、フィアはいつもの時間に起きた。

いつもの、と言ってもそれは騎士団の中でのいつもの、という事であり、まだ日が姿を現して間もない時間帯だ。太陽の反対側にはまだ闇の残り香がかなり残っており、目を凝らせば地平線近くに星を見ることも出来るほどだ。


その時間に起きて、手早く着替えを済ませるとフィアは未だにベッドで丸まって寝ているエリカの身体を揺さぶって起こそうとするが、なかなか起きない。


「エ~リ~カ~ちゃん」

「…………あ、フィアさん」


かなり強く揺らすと、エリカの口から声が漏れ、フィアも起きたかと思って揺するのを止めてエリカの顔を覗き込もうとする。


「それ、残すならあたしに……むにゃむにゃ」

「寝言だったの!?」


あまりにタイミングの良すぎる寝言に、フィアはずっこけかける。

再び揺すり始めるが、今度は寝言すら漏らさないほどに反応しないというこれこそベッド職人冥利に尽きる熟睡っぷりで、エリカを起こすのにはさらに数分を要する結果となった。












「……酷いです、フィアさん」

「あなたの寝起きの悪さは天下無双ね。これからは気を付けることにするわ」


頭の頂上を刺激しないように優しく撫でながら、涙目で隣のフィアを見つめるエリカであったが、帰ってきたのは無情な勧告。


結局、身体を揺する、耳元で叫ぶ、と言った起こし方ではエリカに対して無力であることを思い知ったフィアは最終的にベッドを傾けてエリカを床に叩き落とすという荒業に打って出た。


ところが、それでも寝心地が悪そうに寝返りを打つだけにとどまったため、業を煮やしたフィアはなんとエリカに魔法で発現させた冷水をぶっかけたのだ。エリカは水をかけられた瞬間に目覚めたのだが、フィアは今度は水を乾かすため、と言って炎でエリカを囲み、灼熱地獄よろしく、とでも言おう修羅場を作り出したのだ。


エリカは何が起こったのかも分からないまま蒸し焼きにされる1歩か半歩手前まで行き、そこでようやくフィアは炎を消してエリカの前に立つと強烈な一撃をエリカの脳天に見舞った。


それは女性のくり出したとは到底思えない重さを引き連れてエリカを襲い、そして今に至ることになる。痛みは未だに頭蓋の周囲をグルグルと回ってエリカを苦しめているのだが、フィアは悪びれる様子もなく、憮然として歩いている。


「ど、どうしてこんなに早く起きたんですか?」


痛みに耐えながらエリカが口を開くと、フィアは窓の外を指差した。


窓の外には、昨日見た修練場が広がっている。すでに何人かの騎士が己の武器を手に鍛錬を始めている。その中には、昨日会った騎士たちの姿もある。


「昨日、ジーンがあなたの武器選びをしたいって言っていたでしょう? この時間なら、訓練用の模擬剣とかを持ち出す手間も省けるのよ。他の人が出してくれているからね」

「そういう事ですか。しかし、皆さん個性があるというか、すごいですね」


窓から見える範囲でも、武器の種類はかなり多く見える。オーソドックスな剣や、女性は細身のレイピア、身体の大きい騎士は長い槍と言った具合に、自らに合った武器を使っているようだ。剣が最も多いように見えるが、同じ剣でもそのタイプは様々な物が窺い知ることができる。


エリカの様子を見て、フィアは軽く騎士団の中身について説明を始めた。


アクイラ騎士団はジーンが言っていたようにこの王国、アールドールンにおいて唯一のドラゴンスレイヤーが集った組織だ。


唯一である理由は、現代において龍が人里を襲うという事がゼロに近いという事がある。『竜の森』が近い国ではドラゴンスレイヤーの育成と組織化が行われているが、遠方の王国ではやはりその分の労力を別に回していることも少なくない。危機意識の違いから来るのだろうが、やはり実用性が低いという事も原因の1つなのだろう。


アクイラ騎士団は、巨大な武器を使う騎士が多い。巨大な龍を相手に戦うのだから、当たり前だろう。細い武器では龍の鱗で折られてしまう。斬るというよりは、叩き壊すことを主眼に置いた武器が多いのもその影響だろうか。


基本的に、男性騎士が大きな武器を持ち近接戦闘を行う。大きく固い武器を持っている騎士が圧倒的多数を占めているのは、窓から見える騎士たちを見ても一目で分かる。


女性騎士も近接をやる騎士は決して少なくない。だが、やはり体力面や力でどうしても男性に劣るため、補助的な役割に回ることが多い。逆に、フィアのように完全後方支援型として仲間を支援する女性騎士が多い。魔法には人それぞれ得意不得意があるが、女性は男性よりもアドバンテージがあるため、こちらに回る。フィアは攻撃魔法としては炎や、水、風を操るが、例えば炎を仲間の剣に纏わせることで剣と炎で同時に攻撃をすることが出来る。


風を纏う事で自らの周りに隔離された空間を作り出し、水中で呼吸を可能にすることも出来る。

剣では届かない高空を飛ぶ龍は魔法によって地上に叩き落とすなど、いわゆる魔法騎士の重要性は高い。魔法を主体に戦う騎士は魔法騎士、剣などを使う騎士は単に騎士と呼称される。


「まあ、バーバラさんは女性だけど騎士なんだけどね」

「すごいですね」

「吸血鬼ってのは、すごく打たれ強いんですって。ちょっとやそっとじゃ死なないんじゃなくて死ねないですって」


会話しながら歩いていると、突き当りに外へ出る扉が姿を現した。フィアがその扉を開くと、2人は修練場へ出る。


修練場には10人程度の騎士がいた。体力だけではどうにもならない魔法騎士の姿はあまりなく、もっぱら男性の騎士が素振りや仲間との模擬戦を行っている。


その様子を離れた場所で眺めているジーンとジャックを見つけ、2人の元へと歩み寄ると、ジーンが手を振ってきた。


「すまんな、まだ慣れてないのにこんなに早い時間から」

「いえ、素晴らしい魔法の無駄使いをしてくださったおかげで眠気は飛び去っていますので」

「…………フィア?」


冷水をぶっかけられ、炎で蒸され、これ以上になく意識は覚醒している。それを伝えると、ジーンは冷めた目でフィアを見つめ、ジャックは頬を引きつらせている。


「ちょ、あなたたちはエリカちゃんの寝起きの悪さを知らないから言えるのよ! 現場を見たらきっとキツイやり方するに決まっているわ!」

「嬢ちゃん、うちの者がすまないな」


珍しくジャックが頭を下げてくるので、エリカは慌てて首を振ってジャックの顔を揚げさせる。


「い、いえ、起きなかったあたしにも非はあるので……。それよりも、何をするんですか、ここで」


引っ張られるのも嫌だったので、話題を変える。

するとジーンが前に出てきた。


「朝食を取ったら、団長の所に入団志願を申し出る。その時に、使用する武器を申請する必要があるんだ。その申請した武器で戦闘試験を行うから、朝のうちにしっくり来る武器を見つけてくれるとありがたい」


ジーンはそう言うと倉庫から模擬戦用の武器が山のように積まれた箱をジャックと2人がかりで持ち出してきた。置いた衝撃で上の方に積まれていた模擬剣が崩れ落ちて地面に落ちる。


ジーンはそれを拾うとエリカに手渡した。


「これは騎士団で男女共にオーソドックスな剣だ。女が使っても威力が出るが、決して弱いわけでもないから男も使う剣だ」


エリカはその剣を受け取ると軽く振ってみる。

風を切る音がして縦に、横に流れるように振ってみるが、いまいちしっくりこない。というより、やはり若干軽すぎるようで力を持て余してしまう感じがする。


「軽いですね……、もうちょっと大きくても良いのですが……」

「ふむ、軽いか……。そういえば、エリカは魔法は使わないのか?」

「魔法ですか……」


言われて考え込むエリカ。


龍というのは、自らの親などに影響を受けて様々な能力を得ることが多い。火龍から生まれれば大体が火を操る事が出来る。水龍から生まれれば水を操れるように、龍も一族によって得意不得意がある。


そこでエリカの一族の事に話が及ぶのだが、エリカの父親は白龍で、母親は水龍だ。では水を操れるかと言うと、そうでもない。白龍の血を継承していたのか色はともかくとして無類の硬さを誇る鱗を持っているが、むしろそれを駆使するばかりで魔法など使ったこともなければ考えを及ばせたこともなかった。


よくよく考えてみると、龍は魔法をあまり使いたがらない傾向にあるように思える。使う以前にケリがついてしまうという事もあるのだが、やはりヒトと違って別次元にある龍の魔法は規模が違う。


以前、エリカは父親が魔法を使ったところを1度だけ見たことがある。


相手が何だったのかは教えてもらえなかったが、黒龍の鱗以上の硬度を持つ白龍の鱗を貫通し剥がしたと聞かされ、相当高位の敵と戦ったのだろうと見当をつけていた。その時に、エリカは天変地異が起こったのではないかと思ったほどの大魔法の発現を目の当たりにした。


水を操る、炎を操るなどと言う小ぢんまりとしたレベルの話ではなかった。

水ならば水を含む雲ごと操り、水だけではなく、空からひょう降らせ、大雨に雷を伝導させて森に火を振り撒き、その炎を風で拡散させると敵がいる場所をグルリと囲む炎の包囲網を作り上げ、包囲網の中心へと風を吹かせて敵を殺そうとした。


戦いの後、戦場となった森の一帯は1本の例外すら許さず焼野原となり、森の真ん中に丸い広場のようなものが作り上げられていた。そこは今でも生き物が住まない荒れ果てた荒野のようになっている。


それはともかくとして、要はエリカは自分が魔法を使えるかどうかも分からないのだ。

何しろ使ったこともないのだから仕方のない事なのだが、ジーンに問われて使えるかどうか真剣に考えることにした。


「使えるのなら、別に俺たちみたいに剣を担いで戦わなくとも、フィアと共に後方に回れるんだが」

「使えるかはわかりませんから。使ったことが無いので……。フィアさん、今度魔法の使い方を教えてください」

「良いわよ~」


フィアが快諾したのに礼を言うと、エリカは先ほどの剣をジーンに返して今度は自分で他に使えそうな武器を積み上げられた武器の中から探し始めた。


「嬢ちゃん、こいつはどうだ?」

「あたしをどう戦わせたいのですか、ジャックさん」


取り出されたのは巨大な槌のついた武器。ジャックですら両手で抱えているのだから相当重い物だろう。そんなものを振り回せば目立って目立ってしょうがない。


振ることが出来ない、とは言わないエリカである。


「俺たちみたいに大剣を使うか?」

「あたしの身長を考えてください。背中に担いだら地面に刺さります……」


その図を想像したのかジャックが腹を抱えて笑い出したので、ジーンとフィアにアイコンタクトで許可を求めるとすぐに許可が下りた。


そして今持っていた槍のような武器を思い切り振りかぶると、腹を抱えているその腹目掛けて振り、ジャックの腹に振られた槍がめり込んでそのままエリカが振り切るとジャックは情けない悲鳴を上げながら少しだけ宙に浮き、地面に叩き付けられて15メートルほど地面を転がっていった。


すぐに起き上がって何か喚いているが、エリカはそれを無視して武器選びを続ける。


「ん、これは丁度いいですね」


山を切り崩して下の方をあさっていると、剣よりは細いが、そこそこの重厚感ある武器が姿を現した。刃に反りが入っているのか、剣を収める鞘は若干の弧を描いている。


「ああ、それは刀って奴だな。叩き斬ったりできないから、あまり龍相手に使うには不利だが」

「こういうのは力で斬るんじゃないんですよ。引いて斬る感じですから」


見覚えのある武器だった。


どこで見たかなどさっぱりなのだが、竜人族の誰かが使っていたような気がする。


エリカは刀を振ってみると、違和感に襲われて首を傾げる。


「あれ、これって模擬剣じゃあ……」

「ああ、刀は使う奴が少ない、と言うよりいないから模擬剣を作らなかったんだ。おそらく騎士団の武器庫にも刀はその1本だけだろうな。どうして模擬剣の山に埋もれていたのかは知らんが」


鞘から細い紐が伸びており、それは鍔に固く結びつけられている。その紐をほどき、鞘から刀を抜くと、長い間使われていなかったにも関わらず曇りのない刀身が姿を現し、朝日を反射させて美しく輝く。


「綺麗……」

「大剣ほどじゃないけど長いわね。エリカちゃん、どうする?」


刀身はジーンやジャックが持っている大剣とは違い、光を反射させるだけでは飽き足らず、エリカの顔を認識できるほどに綺麗に磨かれている。


長さはエリカの腰より少し高い程度。若干長い気もするが、気にならない程度だ。


「これにします。慣れない武器より少しでも知っている物にしたいですし」

「ようし、そうと決まれば……、ジャック、武器庫の爺さんにこれを持っていくって伝えておいてくれ」

「おう、っと嬢ちゃん、さっきの借りはそのうち返させてもらうからな。痛てて……」


腹を押さえながらジャックは城の方へと向かっていった。

エリカは刀を胸に抱いて「やりすぎました?」と2人に聞くが、2人は首を横に振ってエリカを弁護してくれた。


「それじゃ、エリカちゃん。自分が使う武器は相棒みたいなものよ? だから、寝る時と体を洗う時以外は常に身に着けるようにするといいわよ」

「分かりました」

「うん? もう飯の時間だな。食堂でジャックと合流しようか」

「は~い」















「へえ、刀を使うんだ」


騎士団の宿舎の2階、ベランダから修練場の様子を眺めていたバーバラは面白そうに口元を歪めていた。


<話をしに行くのではなかったのか?>

「ダ~メ、ジーンとかフィアちゃんとかいるし。多分私の予感が正しければあの子たちに聞かれるわけにはいかないだろうしね。今夜にでも会いに行くわ。」

<……吸うのか?>


アレックスはバーバラの隣で大人しく座っている。

だが、その目はバーバラと同じように修練場で刀を振ってみせるエリカに注がれている。


「場合によってはね。逃げるようなら」

<それが人に物を聞く態度か?>

「ふふ、肉体言語は大切よ?」


バーバラは笑みを浮かべる。

金髪が風になびいて美しく揺れる。


<はあ、もう少し穏便に事を収めようとする気はないのか?>

「カラッキシ。そうしたいのならアレックス、あなたがおやりなさいな。それなら私も協力してあげる」

<声が聞こえなければどうにもならんだろうが……>

「だから、可能性はあるわ。やってみる価値はあるわよ、きっと」

<ふふ、ならば楽しみだ>


アレックスは狼ながら笑みを浮かべると部屋の中へと戻っていった。

それを目で追って部屋の中へ消えていくと、修練場に目を戻した。エリカたちはどうやら食堂へ向かうらしく移動を開始した。宿舎の中にその姿が消えるまで目で追うと、バーバラも部屋の中へと戻っていった。




え~、ハモニカは驚いております。


7話しか書いていないにも関わらず、感想を頂きました。


嬉しくて涙がちょちょぎれる思いであります。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。


それはともかくとして、作者は恐ろしい力によって拘束されてしまっていたようです。


女性主人公⇒得物は刀系


あれ?


よくあるパターンじゃないですか、これ?


馬鹿な!


ネタ武器でハンマーでも振り回させようとか考えていたのに!


ジャックが出したせいで拒否られてしまいました!


こ、これが世界の修正力ですか!(違います)


くっ、そんな力には負けま……、負けてましたね……


しっかし、何故よりにもよって刀を選んでしまったのか。


栄える、からでしょうか。


まあ、とりあえず当分エリカは刀をブンブン振って戦う予定です。


ドラゴン相手に刀が利くのか、という意見があるかと思いますが、今は流してください。


ではでは、今日はこの辺で


感想などお待ちしております!



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