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第55話 クンクン嗅がれた、ってことですか?

ふぐう、腹に強烈なダメージを喰らって一晩苦しみましたよぉ。


夕飯に餃子を食べようと思って焼いて、お皿に盛りつけようとしたらツルッと滑って……後はお察しください。三秒ルールなんて都市伝説だという事を身を持って思い知りましたよ。落ちた瞬間、皿を置き、即座に拾い上げたわけですが、なんかついていたんでしょうね、寝ようとした時に腹が痛くなってきましたよ。


ハモニカは結構そういう悪い意味での勿体ない精神が強いようで、結構やりますが、今回ほど表だって腹の中を重戦車が走り回ったのは初めてです。


いつもはバイクが走ってるくらいが精々で、全く影響ないときの方が多かったためですね。


いや、正直重戦車が歩兵一個連隊連れてやってくる感じ? ザッザッザッザッていう音が聞こえてきて、その後にキュラキュラキュラキュラってデカいのがああああああ!!!


ああ、今度からこういう事が無いようにしたいですね。ここの更新だけでなく学業にも影響でかねないですから。


とはいえ、今現在も実はちょっとまだ残ってたりww


前書きなのに関係ない話してましたね、ではでは本編どうぞ。








イテテww


「勝負あり、だな」


ジャックが試合終了を宣言する。


セラの喉元に巨大な剣を突きつけながら、ジャックは得意げな表情をしている。


「アクイラの人間兵器は健在のようね……」


皮肉を込めてセラがそう言うが、今のジャックにはむしろそれは褒め言葉のようだ。ニッと笑うとジャックは大剣を引き、その代わりに反対の手を差し伸べた。


試合は終始アクイラ騎士団有利に運んだ。エリカが登場しなければならない理由はほぼなかっただろう。シルヴィアが倒されたのは予想外であったが、それ以外の損耗はなかった。


ジーンは多少傷を負ったが、問題ない程度だ。バーバラに関しては言わずもがな、怪我と言えるようなものは一切受けていない。


ジャックはセラとやりあったために随分と傷があり、出血も激しいが、正直あの程度で死ぬような男ではない、というのがアクイラ騎士団内共通の認識であるため、出血多量でジャックが死ぬ心配はない。


正直、黒こげになっている部位も決して少なくはない。


だが、ジャックは満足げに息を吐きながらセラの手を掴んで立たせると、「どうだ参ったか」と言わんばかりに剣を天に突き上げる。


その瞬間、闘技場に割れんばかりの歓声が響き渡る。


バーバラが剣を納めて闘技場を見上げるとティティがホッとした表情をしている。その隣でグラン王が憮然とした表情で観客と共に拍手をしている。これは国家同士の競い合いではあるが、決して負かすための試合ではない。それを深く理解できているからこそ、グラン王は勝者に拍手を、そして敗者に労いをかける事ができるのだろう。


「ジーン、さっさとジャックを控室まで引っ張りなさい。あのままじゃぶっ倒れるわ。そうなったら運ぶの面倒だわ」


「了解っと。ジャック、ファンサービスは良いからさっさと戻るぞ」


「じゃかましい。俺は全然大丈夫……でもなかった」


「アホッ!」


立ちくらみでも起こしたのかジャックが額に手を当ててフラフラするのでジーンが慌てて肩を支える。実質1人でセラを相手していたジャックの体力損耗が激しいのは致し方のない事だ。


ジャックが後先考えずに突貫してくれたからこそ、バーバラは冷静に戦況を見る事が出来た。そしてジャックを中心においてセラを無事倒すことが出来た。


そのセラは、仲間に支えられながらすでに闘技場を後にしていた。向こうの控室から騎士団員と思しき女性が現れてセラたちに治癒魔法をかけている。


「さて、私たちも戻らないとね」


バーバラはそう言うと、足元もおぼつかないくせに口だけは達者なジャックとそれを支えるジーンの後を追って闘技場を後にしていった。















「お疲れ様でした~」


極力冷静を装った。そのせいか語尾が間延びしてしまったような気もするが、試合を終えて一息つこうとしているジーンたちはエリカの労いの言葉に力なく返事をすると部屋に備え付けられている椅子やソファに倒れ込んだ。


とはいえ、ジャックはすぐに戻ってきたフィアによって小言を言われながら医務室直行、部屋にはエリカを含めてバーバラ、ジーンしかいない。


「エリカが出る状況にならなかったのは嬉しいが、不満か?」


「まあ、ちょっと……」


実際のところ、試合をしていた4人と同程度かそれ以上の激しい戦闘をこの部屋で繰り広げていたのだが、ユーリの迅速かつ正確、そして何よりその完璧な仕事により部屋から血の気配はすっかり消えていた。


返り血をそれこそ血で染まっていない所などないほどに浴びたが、ユーリがエリカごと・・・・・御手製ドラム式洗濯機に放り込んでくれたおかげできれいさっぱり落ちている。髪の毛もユーリが慣れた手つきで乾かしてくれたので、正直普段よりもスッキリしてしまった。


まさか、ここで10人ほど殺しましたと言うわけにはいかないので、エリカはありふれた答えを返すと刀の柄に触れながらぼんやりとしているそぶりをする。


しばらく無言の時間が続き、バーバラがコーヒーを入れて飲む音だけが部屋に響く。


「今日はこれで終わりなんですよね?」


沈黙に耐えられなくなったエリカが天井に向けていた顔を水平に戻し、ジーン、バーバラ両者に聞こえるように言う。


「ええ、明日は午前がエオリアブルグ対ブラゴシュワイク、明後日がブラゴシュワイクとの試合、そして勝率が高い騎士団が優勝ね。次の日は1日休息があって、その次の日、つまり4日後にその騎士団に対する最後の試練をやって終わり。優勝するのは良いけど、最後の試練とやらが面倒としか言いようがないわ……」


バーバラが暗記した内容を思い出す様につらつらと述べる。


「…………」


「……言いたいことは分かるわよ」


表情に出ていたのだろう。ブラゴシュワイクのタロン騎士団との試合があるのを改めて聞かされ、やはり良い気はしない。


言いたい事は山ほどあるが、それを全て言葉にする気はさらさらない。


死なせはしない。命での贖いは先刻10人分の命によって支払われた。あの馬鹿トリオに望むのは、彼らが恐怖すること、自分たちがどれほど愚かな真似をしたか、それを知らしめるために刀を振るおうとエリカは心に決めている。


「ブラゴシュワイクとの試合では、全員一度に出るわ、その方があなたが暴走した時止めやすいから」


「暴走なんてしませんよ。ただ、彼らにはちょっとキツイ……、いや痛烈な? ……いや地獄を見せ……いや生きている事を後悔させ……じゃない……泣いて死を懇願させ……とにかく反省させてやります」


「……死ぬこと前提になってないか? 後半気になる単語があったんだが」


「気のせいです」


ソファで横になっているジーンの疑問をバッサリ切り捨て、エリカは憮然とした態度を貫く。


「まあ、殺さなきゃ何しても良いのがこの大会なんだけれど、それにも限度ってものがあるわ。それを超えるようなら止めに入るから。それと、あいつらもそう簡単には殺されてくれないわよ?」


バーバラの最後の台詞に「殺すの前提か」というジーンの呟きが聞こえたが、あえてスルーしてエリカはバーバラの話に耳を傾ける。


「あの馬鹿トリオも一応騎士の端くれ、魔法の技術に関してはそれなりの力を持っているわ。近づけないよう必死になられたら近づくのは容易じゃないわ。それに、彼らの従者がいる」


以前、何か思い出したくない事を思い出した時に見せたあの表情にバーバラがなった。


こうなるとその後に楽しい話は確実に来ないからエリカもそのつもりでバーバラの次の言葉を待った。


「貴族ってのは馬鹿よね、自分たちが本当に実力を持っていると思ってる。そして、本来主力となりうるだけの実力を持つ騎士たちを卑下して、虐げる」


「……残りの2人は、本当に強いということですか」


肯定の頷きが返される。


エリカはシャリオ王子が言っていた言葉を思い出して、今の話と照らし合わせる。


「ブラゴシュワイクの貴族以外の騎士は対人戦については突出してるわ。元々あの国は陸軍国家だから、その手の実力者はわんさかいるのよ。ただそれを束ねる指揮官が無能なだけ」


随分な言われようだが、あながち間違ってもいないようなので黙っておく。頂点に立つであろうシャリオ王子はそのご多分には入っていなさそうではあるが、少なくともあの馬鹿トリオがそれに当てはまっているのは事実だろう。


「今日の試合はこれで終わりだから、早々に城に引き上げるとするか。ジャックたちを拾ってくる」


気怠そうにジーンは立ち上がると、ジャックたちを呼びに部屋を出た。


城とコロシアムの間は、定期的に往復する馬車がある。それに乗れば疲れている身体に鞭打つ必要もなく城まで行けるという寸法だ。


ジーンを見送り、部屋にはエリカとバーバラだけになった。そしてジーンが出ていった扉が閉まる音を合図にしたかのようにバーバラは立ち上がってエリカの前に仁王立ちした。そこには先ほどまでのどこか冗談めいた空気を纏っていたバーバラはおらず、鋭い目でエリカを睨んでいるバーバラがいた。


「吸血鬼の嗅覚を侮ってもらっては困るわ、エリカ」


全てを見透かしたような瞳にエリカは顔を背けそうになる。だが、それをすれば自白したも同然、エリカはバーバラの目をまっすぐに見返す。


「……だんまりかしら? こう言っちゃなんだけど、気のせいっていうレベルの話じゃないわよ、これ・・。多分ジーンも気が付いているわ」


「え……」


ジーンの名前が出てきた事に生まれた一瞬の動揺、それをバーバラは見逃さなかった。エリカもすぐに自分の失態に気が付くが、時すでに遅し、全て露見してしまった。


「何があったかはあえて聞かないわ。だけど、これだけは言わせて。私たちは仲間なの、もう少し頼ってよね?」


最初、叱責が来るとばかり思っていた。


エリカはバーバラの言葉を理解するのにしばらくかかり、それを完璧に理解した時、ただただ頭を下げるしかなかった。


「細かい事は後でアレックスに詳しく聞かせてもらうから。アレックス、あなたもちゃんと牙綺麗にしないとね」


<う、うむ……>


アレックスが気圧されたような声で言うのが聞こえ、エリカは苦笑してしまう。


姫黒と黒羽についた大量の血は全て拭ってある。刀身が黒い、または黒に近い事もあり、拭いきれなかった分もほとんど目立たない。さすがに10人近くを斬って完璧に血を拭い去る事は出来なかったが、そこはユーリによって可能な限り磨かれた。大概の事は出来るユーリに、エリカは感嘆と感謝しか出てこなかった。















ジャックたちを迎えに行くためコロシアムの中の通路を歩いていたジーンは、鼻を撫でながら険しい表情をしていた。


バーバラの予想通り、ジーンは血の臭いを嗅ぎ取っていたのだ。


ジーンはエリカと初めて会った時も、随分と距離があったにも関わらずエリカが食べるために殺した獣たちの流した血に敏感に反応した。10人分の血が流れた現場に来て、それに気が付かないほど鈍感ではなかったという事だ。


(バーバラは何も言わなかったが、何か心当たりでもあったのだろうか?)


ジーンが部屋を出た直後、バーバラが立ち上がる気配を扉越しではあるが感じ取った。ジーンが気が付いてバーバラが気が付かない道理はない、エリカに詰め寄ったのだろうとジーンは見当をつける。


とはいえ、それで問題が解決したわけではない。


そもそも、エリカ1人だけがいたあの部屋で何故それほど大量の血が流れたのか、その根本が分からない。


決して心当たりがないわけではない。試合前にブラゴシュワイクの騎士と一悶着あったせいとも考えられなくはない。


それだけの事で、とジーンは考えたが、よくよく思えばエリカは彼らを殺そうとしていた。仕返しとばかりに「今度やったらこうだぞ」と警告を発しに来て返り討ちに合ったとも考えられなくはない。


(それが本当だったとしても、この事が表沙汰になることはないだろうな……)


警告だろうがどうだろうと、この事が表に出ればブラゴシュワイクにとって今後を左右しかねない不祥事に発展する。それだけは防ごうと必死になって関係者は事態の隠蔽に努めるだろう。


シャリオ王子の耳にでも入れば話は別だろうが、そういう事を専門にする者が情報を漏らすとは思えない。結局、何も「なかった」事にされるだろう。


エリカ自身が、戻ってきたジーンたちに何も言わなかったところからも、彼女自身なかったことにしたいという思いがあるのだろう。


(だが、仲間を殺されかけて黙ってるほど俺たちもお人よしじゃない……)


ジーンは前を見据える。通路に突き出た「医務室」の案内を視界に捉え、扉の前に立つ。


(考えても仕方ないか……。エリカ、お前の口から聞かせてもらうまで、俺たちは待ってるからな)


部屋の取っ手に手をかけ、それまでの考えを心の奥底にしまうと、扉を開いて医務室の中に入る。


「ジャック、大丈夫……か……?」


思考を普段通りに戻して医務室に入ったジーンは、茫然と目の前に広がる光景を見つめる事になった。


「んぐ―—っ! ん―—ん―—っ!!」


ジャックが体中に包帯を巻かれ、ベッドに縛りつけられていた。そしてそれをフィアとシルヴィア、そしてシータス騎士団の面々が眺めているという状態だ。


何とか自らに施された拘束を外そうとジャックが暴れる度にベッドが揺れてガタンガタンという音を立てる。


「あら、ジーン、どうしたの?」


フィアがジーンに気が付いて顔を向けてくる。


「あ、いや、城に戻るから皆を迎えに来たんだが、どういう状態だ?」


「怪我は直したけど、一晩は大人しくしていて、って言ったら『俺が大人しくなんてすると思うか?』なんて言ったのよ。だから、実力行使☆」


フィアは既にだいぶ回復しているようで立っているシルヴィア、そしてセラたちシータス騎士団に視線を向ける。


どうやらジャック捕縛にはシータス騎士団も協力していたようだ。


「私たちとしても、人間兵器を負かす事が出来たような気がして気分が晴れました。これが、勝利というものですね」


多分、というより絶対に違う。


ジーンは内心でそんなことを思いながらセラの言葉を聞いていた。だがシータス騎士団の面々にとってはまさしく「大勝利」だったらしく、騎士たちが何故か感動によるものであろう涙を流している。よく見れば試合の後に出来たと思われる生傷があり、捕縛に際してジャックが激しく抵抗したという事が分かった。


手負いの熊は相当大暴れしたようだが、最終的には捕えられ、今に至ったということだ。


「ジャックはこのまま運んでもらうとして、シルヴィアとジーンは先に行って良いわよ。私はここの後片付けしてから戻るから」


「分かった」


「それじゃ先に戻ってるわね。セラ、今度は私とも戦いましょう?」


シルヴィアは部屋を出る前にセラに呼びかけた。セラは治療した後にまた激しく動いてしまったせいか塞いだ傷が開いたようで腕や足に包帯を巻かれた状態だったが、ここは指揮官らしく姿勢を正して力強く頷いてみせた。


「もちろん、負ける気はありません。ジーン殿、あなたとも一度サシで勝負がしたいのですが」


「ああ、ジャックが今回全部持っていってしまったからな。よろしく頼むよ、と他の方とも、もちろんね」


ジャックを中心に戦った今回は、相手と正面から戦うというよりはヒットエンドランの戦い方が多かった。是非とも正面から戦いたいというのは、騎士として当然欲するところだった。


ジーンがそう言うとセラだけでなく、他の騎士たちも嬉しそうに握手を求めてきた。


ブラゴシュワイクの騎士たちもこれくらい愛想が良くて親しみやすいと助かるのだが、などと考えるが、求めてもそうなるはずもないためその可能性は諦める。


「それじゃ、また明日。明日のブラゴシュワイクとの試合、応援してるよ」


ジーンはそう言うとシルヴィアと共に医務室を後にした。



は~い、表の試合はエリカ出ずに終了しちゃいました、テヘ、ヤッチマッタZE♪


いや、本当は血の臭いさせながら戦って、その過程でバーバラなりジーンなりにばれる予定だったのですが、おやおや? 予想外にジャックがやりすぎた、といった感じになってしまいました。


ジャックは超絶神兵ですからねぇ。


超☆絶☆神☆兵


って書くとネタにしかならないんですがねw







それはともかくとして、皆様覚えていらっしゃるでしょうか?


以前番外編でエリカの水着云々の話をしたんですが、実を言うと書いた本人であるハモニカがこの事実をパーペキに忘れていたらしく……え? 古い? いや、ハモニカはそんなに古い人間ではないので大丈夫です……今さらになってそのイベントを何とかこじつけようとして、一日の休暇が出来ちゃったわけです。


ね、バーバラが今回言ってたでしょう?


はい、実害が出る前に間に合ってよかったww


ではでは、また次回お会いしましょう。


ご感想などお待ちしております。



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