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番外編 レッツ、ショッピング!

先にお知らせしておきます。


時系列的には

  

  退院→番外編→鍛冶屋に出発


という事になっています。


ところが、よくよく考えてみたら、退院した翌日に出発してくれてるじゃないですか! 何やってくれたんだ我が主人公!


と言う訳でこの番外編は退院したその日の昼から午後にかけての出来事、という設定になっております。


ですが、それでも矛盾している場所があるかもしれません。


もしそのような点があっても、番外編という事でちょっと作者がおかしかったと思ってください。


そして、予想以上にネタが入らない……。


まあ、息抜き程度に書きましたから。


それはそうとして、5万PV突破の嬉しさのあまり書いたのですが、投稿しようとしている今(8月28日16時現在)6万PVになりかけているのです。


うわぁ


完全に記念でもなんでもねぇ……


と言う訳で、ただの番外編としてお送りします。


ではではどうぞ


8月29日:間違い修正

「くり出すわよ!」


全てはフィアのその一言から始まった。


退院したエリカは、すぐにでも鍛冶屋の元へ向かうために部屋で持っていく物を整理していた。そこへフィアがやって来ると、問答無用で部屋から引っ張り出された。


「ちょ、フィアさん!?」

「黙ってついてきなさい!」


かなりの剣幕で言われ、エリカも口を閉じてしまう。


出発は明日という事で決まっているだけに、出来るだけ早く用意を済ませてしまいたいところなのだが、フィアの態度からのっぴきならない事なのだろうと考え、大人しくフィアに引っ張られる事にした。


「ど、どこへ行くんですか?」

「城下町よ。服を買いに」


「……はい?」


一瞬、フィアが何を言っているのか分からなかった。


「服よ。あなた、私の着ていない服と団服しかバリエーション無いでしょう? 今時の女の子らしい可愛いのを幾つか買ってあげる」

「そ、そんな事してもらわなくても……。あたしはフィアさんの服で良いですよ?」

「私がそうはいかないわよ。お年頃のあなただから少しはお洒落しなさい。私の服は結構実用性ばかりの可愛げのないのばかりだから」


とはいえ、エリカとしては自分のためにわざわざお金を使ってもらうのは忍びない。別に困っている訳でもないので、必要ないとフィアに言うが返事はなく、フィアに引きづられるエリカはそのまま城の城門まで腕を掴まれた状態で連れてこられることになった。


「あれ、ジーンさんに、ジャックさん?」


城門の前に、騎士団の宿舎にいる時よりも随分とラフな格好をした2人がいた。外出用、とでも言うべき涼しそうな服を着ている2人が、エリカとフィアを見つけるとこっちに手を振ってきた。


「嬢ちゃんが服を買いに行くと聞いたからな。ついでで付き合おうと思ってな」

「男の目から見てもらう、っていうのも重要だしね」


どうやら、フィアが呼んだようだ。


エリカにはその辺りの知識がない。そもそも服を着るという概念しかなかった生き物であるためだ。そのため、何も分からないエリカはただ「はあ」と呟いて3人について行くしかなかった。背後をフィアに遮られては帰る事も出来ない。


ちなみに、アレックスはエリカとフィアの部屋でお留守番している。3人護衛がいれば問題ない、と判断したのだろう。


「とりあえず、明日着ていく服じゃなくても良いから、あなたが好きな服を選んでね。それから、それが似合うか私たちが判断するわ」

「そんなことを言われても、何を着ればいいのか……」


そこまで呟いてフィアがエリカの顔の前で人差し指を立てた。その表情は至極真剣だ。


「服にはね、着るべきもの、なんてのは正装くらいしかないの。あなたが直感で『良い』と思った服を選びなさい」

「はあ」


そんな事を話しながら、4人は城の前の下り坂を進んでいく。


(そういえば、町に行くのは初めてですね……)


思えば、城の外に出たのは、城の裏の森以外では初めてだ。初めてここに来た時の事が随分と昔のように思われる。


正午を直前にして、町は賑わっていた。


町の人々が通りで買い物をしたり、食事を楽しんだりしている。


フィアが道案内をしながら、4人は目的の服屋へと向かう。


目的の服屋は、町の中心部、大きな広場にあった。店の前にまで商品であろう服が並べられており、時折店の中にお客が入っていく。


それなりに繁盛しているようで、店は大きく、外観も数多くの装飾が施されていて、巨大な看板がかけられている。広い広場の反対側からでも確認出来そうな巨大な看板の店に近寄ると、店の前で立っていた店員と思しき眼鏡をかけた女性がこちらに向かって手を振ってきた。


少なくとも彼女に記憶のないエリカは固まったままだったが、フィアがそれに応えて手を振った。どうやらこの店はフィアの行きつけか何かのようだ。


「待ってたのよ、フィア。久しぶりに来るっていうから、待ちきれなくて外にいたのよ?」

「ごめんなさいね、レナ。ああ、3人とも会うのは初めてよね、私の幼馴染のレナ。このお店の店長よ。レナ、騎士団の仲間よ。右からジャック、ジーン、エリカ。そして、今日の依頼は、彼女」


最後にエリカを紹介すると、レナは眼鏡をかけ直してエリカに視線を向けた。


足元から頭のてっぺんまで観察すると、レナはポケットから小さなメモ帳を取り出して何事か書き取り始めた。


「身長164……」

「い、今ので全部分かるのか!?」


驚きの声を上げたのはジーンだ。見ればジャックも感心したような表情で口笛を吹いている。


「レナはこの筋では一流よ。見ただけで服選びに必要な事は分かるわ。それはともかくレナ、その書いてる事を口にする癖、どうにかならないの? 女性としては致命的な事を男に知られる可能性もあるのよ?」

「……えっ? ああ、ごめんごめん。意識してないとつい、ね。だけどエリカちゃん、で良いのよね? 彼女の体型は正直って私でも羨ましいくらい綺麗よ。しかもその黒くて長い髪、真っ赤な目。魅力は十二分にあるわ。……これはコーディネイトのし甲斐があるわね」


細く微笑むと、レナは4人を引き連れ自らの店の中へと入っていった。


店の中は外以上に服が溢れていた。いや、そういう店なのだから当たり前なのだが、2階部分を吹き抜けにした店には、巨大な棚のようなものが壁一面にあり、何重にも服が並べられている。その上、フロアも迷路のように入り組むほどに服が置かれており、吹き抜けの中央には地図がぶら下げられている。


「男物は置いてないから、連れの方は少し居づらいかもしれないけど、我慢してね。代わりに至福の時を味わわせてあげる♪」


店には男性の姿はなかった。見たところ売っている服も決して男性が進んで着たがるような代物ではなかった。そのせいかジーンは目のやり場に困ったようで視線を泳がせては床に行きついている。逆にジャックは興味深げに周囲を見渡している。


「さてさて、あなたくらいの子なら、この辺の服がサイズ的には合うはずよ。あとは、似合う服を選ぶだけね」


そう言って指差された区画は、丁度エリカの身体のサイズに合った服が置いてあるであろう場所。だが、そこはあまりにも「この辺」で言い表されるには広い。年齢的に、今のエリカの肉体年齢の頃がそういう意識を持ち始める頃なのだろうか、他の区画よりもはるかに店内での場所の割合が大きい。


ちなみに、次に大きいと思われるのは水着の区画だ。


食事時な事もあってか、買い物に来ている女性はそれほど多くはなく、数人いる店員も暇を持て余しているのか談話をしている。


「さあ、エリカちゃん、好きな物を選びなさいな」

「好きな、って言われても……」


そもそも、数が多すぎる。


お洒落という事に関して疎いにもほどがあるエリカにとって、何が良くて何が悪いのかさっぱりな状態だ。とてもじゃないが自分から選ぶなんて事が出来るとは思えない。


「う~ん……レナさん、どういうのが良いんですか?」

「丸投げかよ、嬢ちゃん……」


ジャックの声は無視して、レナに視線を向ける。初っ端から意見を求められて若干意外そうな顔をしたレナだったが、すぐに柔和な笑顔に戻って少し考えるようなそぶりを見せた。


「そうねぇ、どうもあなたは硬い印象を受けるのよね。それ、素?」

「嬢ちゃんはいつもこんな感じだぜ? まったく、もう少し柔らかくても良いと思うが……」

「ジャックさんほど柔らかくなる気はさらさらありません」

「……それは酷いぜ、嬢ちゃん」


ジャックにはそう言うが、確かに自分がほぼ全ての人に対して敬語かそれに近い言葉で話しているのは事実であるし、砕けた会話をするなんて滅多にない。


よっぽど感情が昂ぶりでもしない限りは素には戻らないし、そんな現場に居合わせるのはバーバラやアレックスくらいなものだ。


「硬いから……見た目から変えるのもアリね……」


そう言ってレナは数多い衣服の中から白い服を取り出した。


「白のワンピース……。とりあえず着てみましょうか」


レナからワンピースを受け取ったフィアはエリカを引っ張って試着室に入っていった。その場にはレナと男2人が残され、しばらく静寂が3人を覆う。


「お2人は、この間の試合で選ばれた方ですよね?」


そんな空気に耐えられなくなったのか、レナはジーンたちに話しかけた。


「あ、ああ、と言っても、こいつはそれ以前から有名人だろうがな」


ジーンは苦笑いしながらジャックを指差す。


ジャックは巷でも有名だ。この町に住んでいれば一度は名前を聞くこともあるだろう。悪名高いわけでもないから騎士団も別に問題視していないし、むしろ人気があるため一たび存在が知れればちょっとした騒ぎになりかねない。


「確かに、ジャックさんは人気者ですから。ですが、この頃は彼女の方が話題沸騰、と言ったところですね」

「エリカが……? まあ、当然か……」


入団1週間で選抜試合への出場が許され、おまけに決勝まで破竹の強さを見せつけた上、コロシアムに第二の太陽のような代物を作り出したのだ。話題にならないわけもない。


「見たところ、あの子はまだその・・世界を何も知らない。あなたたちが守ってあげてくださいね。普段不満を漏らさない人って、溜めこんで潰れるかもしれないし……」

「初対面の人間に言われちゃあ、世話ないな……」


ジャックが小さくため息をつく。


「嬢ちゃんは責任感がある。言い換えれば全部背負いこんでいるってことか。ジーン、頑張れよ」

「な、なにを頑張れと言うんだ」

「お~お~、顔を赤らめて、本当に分かってないのか? 本っ当に?」

「だ~! うっさい、黙れ!」


男2人がじゃれ合っているのを少し笑いながらレナが見ていると、試着室の中からフィアの声がしてきたのが耳に入った。


「ちょ、フィアさん、この服肌出過ぎじゃ……」

「あのねぇ……、色気ナシの団服から比べれば全部肌出過ぎよ。恥ずかしがってないで外に出なさい。見てもらわなきゃ良いか悪いかも分からないでしょう?」


試着室の扉が開いてフィアが出てきた。そしてその背中の影にエリカが立っている。


「ど、どうでしょう、か?」


フィアがその場から横にずれると、レナと男2人の前にエリカが姿を現す。騎士のそれとは思えないほど細い身体、白い肌が白のワンピースと相まってエリカを騎士としての彼女ではなく、1人の少女としての彼女に豹変させていた。黒い髪とのコントラストも相まってかエリカの魅力をこれ以上になく引き立てている。


「良いわね。ただ、その靴はどうにかしないと……」


エリカの見た目は、それこそ「純白」という言葉がぴったりだ。だが、騎士団員用の靴がそれを台無しにしている。レナは何かを思い出したのか、店の奥へ駆け足で戻っていった。


「ジーンさん、似合い、ますか?」

「あ、ああ。すごく似合ってるぞ」

「あらら、何慌ててるのよ、そこの純情さん?」

「はっはっはっ、ジーンもまだまだお子様だな」


大人2人にニヤニヤされて真っ赤になるジーン。その様子がおかしくてついエリカも笑みが零れる。


「あったあった、はい、これ履いてみて」


レナが戻ってきてエリカに白い女性用のサンダルを手渡した。バンドの部分に小さな花のアクセサリーが付けられている物で、エリカは渡されると、騎士団の靴を脱いでサンダルに履き替える。


ヒールがあるため少し目線が高くなったエリカは慣れないサンダルにヨロヨロと立ち上がるとその場で回りながら歩いてみる。


「うぅ、歩きにくっ、わっ!」


案の定、というか少し歩いてすぐにバランスを崩して倒れそうになる。慌てて助けに入ったジーンの手を借りて転倒は防ぐが、慣れないサンダルをさっさと脱いで騎士団用の靴に履き替えてしまう。背後でレナが随分と残念そうな顔をしているが、まともに歩けないサンダルを履いていても意味がない。


「普通の服とかあります?」

「普通? 何を以て普通とするか教えてもらえる? 上半身裸が日常な男だっている世の中なのよ」


冗談混じりにレナがそう言うと、エリカはフィアの着ている服を引っ張って指差した。


「フィアさんが普段着ているようなのが良いです。なんかホッとできるっていくかなんというか……」

「……生まれて初めて見た動く物を親と見なす生き物がいたような気がする」

「ジャック、黙ってた方が身のためだぞ」


何か聞こえたような気がする。


とりあえず、ジャックへの制裁は後回しにしてフィアが普段着ているような服があるか聞いてみた。フィアから借りている服はやはり少しサイズが大きい。大きいサイズの服をざっくり着こなすというのもありなのだろうが、エリカにはそういう知識はない。自分に合った服を欲しがるのも無理はない。


「フィアが着てるような服、ねぇ。あるにはあるけど、本当にいいの? もっと個性を出すってのもアリよ?」

「そうだぞ、フィアが2人いても俺たちが困るだけだ」

「……ジャック、今日のお会計、あなたが払いなさい」

「なぜだ!?」


ジャックの反論は無視という形で拒否され、領収書を取り出したレナは「ジャック、と」と呟きながらジャックの名前を領収書に書きこみ始めた。


「ジャック、恨むならお前の口の軽さを恨むんだな」

「ジーンまでなんだ! 昨日酒を買い込んだから金ないんだよ!」

「なら、騎士団の方に送っておいてくれ、レナさん。こいつの給料から天引きしてもらう」

「了~解。分割はどれくらいになさいますか、ジャックさん?」


男2人とレナが会計の話をしているのを、遠巻きに見ていたエリカはハッとなってフィアの方に顔を向けた。


「お金、あたしが着る事になるんですからあたしが払いますって!」


ところが、フィアは人差し指を顔の前で左右に動かしながら首を振った。


「これは、あなたの退院祝いも兼ねてるの。それに、あなた今お金持ってないでしょう?」

「うぐっ……」


騎士団は騎士に対して毎月報酬を支払っている。最初の月は何かと入用なのもあって通常より少し多めに渡されることになっているのだ。


エリカが入院している間にその給料日と言うべき日を過ぎたのだが、エリカの場合、月の途中から入ったため日当扱いになり、月給をその月の日数で割って大体20日分ほどの給料が支払われた。


だが、給料日に入院していたエリカには直接手渡されるのではなくフィアが代理人として受け取っている。現在エリカは手持ちのお金が無い。


「それにね、レナの店は騎士団の女性ご用達なのよ。こんな内装だけど、私たちの団服のデザインから製造まで全部レナが中心でやったるの。だから少しだけど割引してくれるのよ。ね、レナ?」

「ん? ああ、そうよ。だからジャックさんも安心してね」

「安心できねえっつうの。フィア、あんまりたくさん買ってくれるなよ?」


諦めたようなジャックの声が店内に響く。


「ところで、水着は買うのかしら?」

「そうね、エリカちゃんのを買おうかしら」

「みずぎ、とは?」

「…………」


レナの問いに至極真面目な顔で答えてしまったがために、何故か物凄く可愛そうなものを見るような目で見られてしまった。


レナは小さくため息をつくと店の反対側に向かって歩いていった。


「えぇとね、エリカちゃん。水着って言うのは水の中に入るときに着る……服よ」

「そこで一瞬の躊躇いがあったのはどういう事ですか?」


何故か目を逸らされたので、フィアの顔を回り込むように覗き込むエリカに、気を取り直したジャックがエリカの肩を叩いた。


「来月、と言ってももうあと20日もないんだが、エオリアブルグでの大会があるだろう? 実はエオリアブルグの首都の近くに大きな湖があるんだ。大会が終わったらその近くで各国の騎士団が和気藹々やろうってのが通例になってるんだ。まあ、戦い合った者同士仲良くやろうぜ、ってことで遊ぶのもアリだろ?」

「ジーンさんたちもその、水着ってやつを買うんですか?」

「俺たちは元から持ってる奴で行くさ。ジャック、またあの恐ろしい奴着るんじゃないぞ」


ジーンが思い出したくもない、という表情でジャックにそう言うと、ジャックは心外だと言わんばかりに胸を張ってジーンを見下ろしてみせる。


「ビキニパンツこそ、男の肉体美を漏れなく知らしめることが出来る唯一の水着だ。いつまでも短パンなお子様には分からないだろうがな」

「なっ! あんなのただの露出狂だろうが!」

「なにぃ!? 水泳競技をしている全世界の男たちに謝れ!」

「貴様だから言っているんだ!!」


「女性用の服屋で何を話しているんだか……」


言い合いをしているジーンとジャックを尻目にレナが戻ってきた。その手に数着の水着を持って試着室の扉を開けると、エリカを手招きして2人で試着室に入る。


フィアはとりあえず今にも取っ組み合いをし始めそうな男2人を鎮めるために小さく息を吐くと、2人に向き合った。


「少し、頭冷やそうか……」















「「すいませんでした」」


頭に大きなたんこぶを作ったジーンとジャックは試着室の前で正座をさせられていた。


「分かればよろしい。と、そろそろかしら」


エリカとレナが試着室に入って随分経つ。


フィアは2人の耳が物理的に痛くなるほどお説教をしていたから時間の経過に気が付かなかったが、どうやらだいぶ時間が経ってしまったようだ。


「こ、これはいくらなんでも見せすぎではないでしょうか……」

「良いのよ、水着だし、これくらいは当たり前よ」

「で、ですが、これでは防御力というものがあまりにも脆弱では……」

「こんな格好で戦場に出るつもりなら、止めておきなさい」


何やら試着室の中から可笑しな会話が聞こえてくる。


「そ、それに、これは……見えてません?」

「う~ん、ちょっとキツイかしらね。女性の魅力を引き出すならこれが一番なんだけど」

「そういうのは結構ですから。ああ、これなら、まだマシですね」

「ええ~、それ? ていうか何故それを選んだ! 私それを持ってきた記憶ないわっ、ってちょ、破壊力ヤバッ!」


試着室の扉が勢い良く開いてレナが飛び出してきた。随分と息が荒いようで、心配したフィアがレナに駆け寄る。


「ど、どうしたの?」

「あ、あの子に黒のビキニは殺人級……ガク」


鼻から血を流し、親指を立てながらレナは意識を失った。


「あ、あの、レナさん大丈夫ですか?」


開いたままにされた試着室の扉の向こうからエリカが顔だけを覗かせながら少し戸惑った表情をしている。


フィアは小さくため息をつくと、エリカに顔を向けて首を横に振った。


「こいつの悪い病気が出たわ。当分起きないと思うわ。まあ、死にはしないだろうから大丈夫よ。それで、気に入った水着はあった?」

「え、ええと、よく分からないので適当に選んだら突然レナさんが飛び出してしまって……。でも、今着ているのが良いかなあと」

「へえ、どんなのよ。見せてみて」

「こ、ここでですか?」


しどろもどろになりながらエリカが困った表情をする。その視線は依然として正座をさせられているジーンとジャックに向けられている。


視線を追って男2人に行きついたフィアはなるほど、と納得して男2人を物凄い形相で睨んだ。


その目を直視したジーンとジャックは瞬時にエリカに向けていた視線をまっすぐに正した。


「それじゃ、それでお会計済ませましょう。エリカ、着替えてその水着を持ってきなさい。さっきのワンピース、私が着てる服のデザインの奴、そしてその水着をジャックに買ってもらうから」















この日、エリカは自分だけの服が5着増えた。


フィアの服とお揃いの服、レナが選んだワンピース、そして、自分が適当に選んだ結果レナの吐血と鼻血を誘った水着。


これらが日の目を見るのは、エオリアブルグに行った時だろうか。


ちなみに、ジャックは案の定と言おうか持ち合わせでは足りず、騎士団の方に領収書が送られて大幅な天引きを喰らう事になった。


そんなジャックが思う事は1つだ。


「なぜ、ジーンとフィアは金を出さない」


ただ、それだけであった。


自業自得なのだが。



最後に書きましたが、この番外編は番外編のくせして本編に後々絡んじゃいます。と言うより、「ああ、あの時の奴か」程度でしょうけど。


結構中途半端に終わってしまったのもそのせいなんですよね。


まあ、あれですよね。


女性用の洋服とかの店に男が引きずりこまれて服選びに付き合わされるのは世のさがってやつですよ。


結構、男衆が空気だった気もしますが。


そして、何か起こるとすると大体フィアがきっかけと言う……。


1人くらいこういう人いないと面白くないしなぁ……


ま、番外編はまたそのうち出来たら良いなあ、なんて願望を持っています。ネタが尽きるのが先か、完結するのが先か、難しい所ですな。


ではでは、皆様、また次回。


ご感想などお待ちしております。

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