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第9話 入団テスト



戦闘シーン来たぁ♪



満足良くものが書けるか未知数ですが、張り切っていきましょうか





ジーンは、不安になっていた。


エリカの対戦相手を務めるのがジャックと分かったからだ。


いつもは軽口を飛ばしているし、ジーンとどっちが大人びているか分からないジャックであるが、実力は年相応のものだ。ジーンのように身体が細いわけでもなければ、これと言った欠点がない、典型的な騎士であるジャックは、巨大な剣を両手で握ると切っ先をエリカに向けた。


「朝の借りは早々に返させてもらうぜ、嬢ちゃん!」


借りをその日のうちに返せるようなら、それは借りとは言わないのではないか?


そんなことを考えながらも、ジーンはエリカの反応を窺う。エリカはジャックが相手と知ってかなり驚いているようだが、後ずさったり、気圧されたりする様子はない。


この時点で、ジーンはある種の驚きを感じていた。

ジャックは、戦闘となるとかなりのプレッシャーを発する。その体格も相まって並みの騎士ならばそれだけで戦意を失いかねないほどなのだが、エリカは全く動じていない。むしろ、感じていないとも取れる反応だ。


(鈍感なのか、はたまた……)


戦闘試験は真剣を使う。

模擬剣では実際の戦場のプレッシャーを感じることはできない。お互い寸止めを心掛けるよう指示されているし、ジャックも素人の剣が、エリカは刀だが、抑えられないほど腕が無いわけではない。万が一の際には審判であるヴァルトが飛び込むことにもなっているから、よっぽどの事がなければ大怪我を負うことはない。


「試験は5分間だ。それで決着が付かなければ私が勝敗を判断する」


ヴァルトが2人を交互に見ながらそう言うと、2人からある程度離れていく。


「勝てると思う?」


隣にいたフィアが不安そうに聞いてくる。

フィアもまた、ジーンと同じくジャックをよく知っている。彼の戦い方も、癖も、2人にとっては自分の事のように分かる。1年も共にしていれば、そのくらいは分かるのだが、分かるからこそ、エリカの身を案じた。


「正直、厳しいだろうな。ジャックはごり押しの中に繊細な攻撃を絡めてくる。大振りだと甘く見ると、痛い目に合うな」

「あなたがそうだったようにね」

「ああ……」


ジーンは、入団した際にジャックと戦っている。その際、大振りと甘く見て懐に入ろうとしてそこを狙われた。ジャックの武器は大剣だけではない。その屈強な肉体も、対人に限って言えば強力な武器となる。


「ドラゴン相手にどこまで役に立つかは分からんがな……」

「剣の腕もかなりのものだし……、はあ、ジャックの悪い癖が出たかしら」


ジャックは強い相手と見ると戦いたくなる癖がある。俗にいう戦闘狂バトルマニアと言う奴だ。見ず知らずの相手に喧嘩を仕掛けてはメッタメタに痛めつける為、彼をよく知っている者は決して実力や力の話題を口にはしない。言って興味を持たれでもしたら、目も当てられない結果が待っているからだ。


だが、その事を知らないエリカは、先日もジャックの目の前で軽々と重い箱を持ち上げてしまった。遡れば、ジーンたちが初めてエリカに会った時の状況からも、ジャックはエリカにそういう意味で興味を持っていたのかもしれない。アルドリアに来る馬車で言っていた「下心」とは、ジャックにとって1度戦ってみたい、ということだったのだろうか。


「ジャックの武器は一撃が重い。エリカの刀じゃ1発で折れてしまうかもしれないな……」

「そうなったら、入団もおじゃんね……、エリカ~! 負けるんじゃないわよ~、そんな筋肉ダルマ、してやりなさ~い!」

「フィア! てんめえ、筋肉ダルマはねえだろ! 俺はそこまでムキムキじゃねえ!!」

「あんたに言ってないわよ!」


フィアが一喝するとジャックが悔しそうに歯ぎしりする。エリカはどのように反応すれば良いのか迷っているようで、ジーンたちとジャックを交互に見て助けを求めている。


頑張れ、とジーンは目で伝える。

それが伝わったかは分からないが、エリカは困惑していた表情を消して顔を引き締めると、刀を抜いて構えた。


「嬢ちゃん、全力で来い。嬢ちゃんの本気じゃねえと、俺には効かねえぞ」

「言われるまでもなく、最初から全力で行かせてもらいます」

「ほっ、楽しみだぜ。団長、合図頼んます!」


ジャックは目だけをヴァルトに向けて大声を上げる。

ヴァルトが無言で頷くと、右手をゆっくりと振り上げる。


ジャックとエリカの距離は5メートルほど。飛び込めばエリカの刀でも届く距離だ。

だが、それはもちろんジャックも織り込み済みだろう。


「では、両者構えて……」


ジャックは大剣を体の前でわずかに斜めにずらして構える。それに対してエリカは刀の切っ先がジャックの喉元の高さになる位置で構えている。


そして、ヴァルトの手が勢いよく振り下ろされた。


「はじめ!」















エリカは戸惑っていた。


曲がりなりにも命の恩人、これが赤の他人なら心置きなくボッコボコにしてでも入団しようと思っていたエリカであったが、相手がジャックではそれも出来そうにない。


朝に棒で殴り飛ばしておいて言うのもなんだと思うが、朝は加減していた上に峰打ちだったからジャックにも大きな怪我はなかった。


だが、今エリカが持っているのは刀。ジャックは鎧を着ているが、顔は守られていない。下手をすれば大怪我に繋がってしまう。ジャックの武器もまた、一撃喰らえば確実にノックダウンさせられるのは目に見えている。


ジーンが感じたジャックのプレッシャーは、もちろんエリカは感じ取っている。だが、それはエリカにとって取るに足らない物だった。ジャックには申し訳ないのだが、エリカは500年間で数多くの猛獣やヒトと戦ってきた。正直、ジャックのプレッシャーはそれに比べればまだ「生ぬるい」のだ。


確かに、ジャックは歴戦の騎士だ。だが、エリカはもっと脅威となる、極論すれば自らの父親を目の前で見てきたのだ。たとえ殺意が自分に向けられていなくても、首筋に剣を当てられているかのような錯覚を受けるほどの殺気を何度も感じていたために、そういう感覚がマヒしてしまったのかもしれない。


「嬢ちゃん、本気で来い。嬢ちゃんの本気じゃねえと、俺には効かねえぞ」


ジャックがニヤリと笑っている。

それは、心底戦うことを喜んでいる目だった。殺し合いが好きと言う訳ではない。純粋に戦うことが好きなのだ、ジャックは。


だから、エリカも覚悟を決めた。

これからも、ジーン、フィア、そして目の前のジャックたちと共に在るためには、ジャックに勝たなければならない。


寸止めと取り決められている。

エリカの刀は比較的重量があるが、決して扱いにくいわけではない。寸止めもエリカの腕力があれば問題ないだろう。


「言われるまでもなく、最初から全力で行かせてもらいます」


刀を構え、エリカはジャックを見据える。

ジャックの大剣はとにかく龍を相手に戦うために作られている。一撃こそ重いが、一振りの動作が大きい。一気に距離を詰めて喉元に刀を当てれば、そこで試験終了になるとエリカは考えた。


エリカの言葉にジャックは一瞬目を見開くと、すぐに物凄い笑顔になってエリカを見返してきた。その笑顔も、屈託のない、子供のような笑顔だった。エリカもつい毒気を抜かれてしまうような気がしてしまう。


ジャックはヴァルトの方に向くと合図を出してくれと声をかけた。ヴァルトはそれに小さく頷くと手を振り上げる。


「はじめ!」

「はあ!」


そして振り下げると同時にヴァルトの大声がエリカの耳に届き、それとほぼ同時に地面を蹴ってジャックに急接近する。


ジャックはエリカに剣を向けて構えていた。それはつまり、飛び込んできたエリカに対して剣を振る態勢に入っていなかったことを意味する。エリカも当然それを狙って飛び込んだのだ。体格差がある以上、いかに力があってもエリカに分が悪いのは明白だ。最初の一撃で勝負を決めようと考えたのだ。


「うおっ、いきなりかよ!」


ジャックは飛び込んできたエリカに驚きつつも、後ずさってエリカと距離を取ろうとする。だが、小柄なエリカはその身体に似合わない龍のパワーを持っている。そのため、ジャックがどんなに素早く後ずさろうともその距離はすぐさま縮まり、気づけばジャックの目の前でエリカは刀を突きだそうとしていた。


ジャックは剣で防御しようと大剣を自分の前で盾のように腹をエリカに向けて刀をガードしようとする。エリカはそれを見ると素早く刀をどけて姿勢を低くする。今の状態ではジャックからエリカの姿が見えない。ジャック自ら構えた大剣の影にエリカが隠れてしまったのだ。


(行ける!)


エリカは大剣の横から飛び出すとその首を狙って刀を思い切り、もちろん寸止めするつもりだが、振るおうとした。


「ふっ」


だが、ジャックはそれを許さなかった。

エリカが刀を振るう直前、ジャックは盾代わりにしていた大剣を横から蹴り上げた。反動で剣がエリカ目掛けて振られ、エリカはそれを手甲で受けるとその重さに驚愕した。


エリカは剣を受けた勢いで宙に浮いて五メートルほど横に飛ばされる。両足で着地すると刀を構えなおしてジャックに向き直る。


(蹴り上げただけで、この威力ですか……)


腕を支点に刀の切っ先近くを作用点にして回転した大剣は、手で振られたかのような威力を含んでいた。


「どうした、嬢ちゃん。本気で来るんじゃなかったのか? 来ないならこっちから行くぜ!」


距離を取り、ジャックはすでに構えなおしていた。今度こそ、エリカを攻撃できる態勢になった。

そして大剣を思い切り振りかぶると勢いよく走り込んできた。


「そおら!!」

「くっ」


動作が大きいなどとんでもなかった。持ち合わせた筋肉で瞬発的に思い切り地面を蹴ったジャックは大剣を横からいで来た。


エリカはそれを刀で受け流そうと大剣を受け止め、受け流すことなど困難な事を感じ取った。一瞬のつばぜり合いの後、エリカの刀がジャックの大剣に押されて徐々に身体に近づいてくる。


「ぐっ、ジャックさん、寸止めなんてする気ないですね?」

「このくらいで死ぬとは思ってないがな!」


大剣を押し込む片方の手を放すと、ジャックは拳を引いてエリカの腹に強烈な正拳突きを繰り出してきた。刀で大剣を防ぐので精一杯だったエリカはその強烈な1発を貰って先ほどとは比較にならないほど遠くまで飛ばされる。


鎧を身に着けていないエリカは鳩尾にめり込むほどの強烈な一撃に苦悶の表情をするが、攻撃自体は黒鱗によって完全に防がれている。苦悶の表情の中には、相手を侮った自責の念と、ジャックの強さに対する認識を誤った後悔の念が滲みだしていたのだ。


飛ばされながらも姿勢を立て直して着地すると、距離を取って鋭い目つきでジャックを睨み付ける。


(対ドラゴン専用なんてとんでもない。ヒト相手に戦えるからこそ、ドラゴン相手に戦えるんだ……)


大剣を上手く使い、相手の武器を封じると、素手の攻撃を繰り出す。明らかに人間同士が戦う為に作られた技だ。ジャックは大振りの攻撃の中からヒト相手には有効な急所への攻撃を織り交ぜてくる。エリカは黒鱗で守られてはいるが、これではいつまで経ってもジャックに一撃を食らわせるなど無理だ。


「どうした嬢ちゃん、まさか俺が鈍重な牛だとでも思ってたのか?」

「正直、思ってました。けれど、牛は牛でも猛牛ですね、あなたは」

「へへ、どうも」


素直にジャックが嬉しそうな顔をすると、エリカもつい今ジャックが倒すべき敵であることを忘れてしまいそうになる。


「だけどよ嬢ちゃん、なんかズルしてるだろ? 俺の一撃を貰って悶絶しないでも立っていられるのは相当厳しいと思うんだが」

「やっぱり寸止めする気ないんですね……」


苦笑いしつつも、内心では賞賛と同時に、驚嘆する。


ジャックはただの1発でエリカの黒鱗に気が付いたようだ。さすがにやりすぎたか、とエリカは身構えるが、ジャックは笑顔を崩さずに剣を構える。


「ま、そのくらいないと俺には勝てないけどな。ズルだってれっきとした戦術だ。さあ、仕切り直しと行こうぜ」

「はい、ジャックさん!」















「あら、もう始まっちゃってるわね」

「バ、バーバラさん!?」


突如、背後からかけられた声にジーンとフィアが驚いて振り返ると、そこにはアレックスを連れたバーバラが立っていた。日差しが降り注いでいるにも関わらず、日傘1本、かなりの薄着で現れたバーバラは2人に手を振ると近寄ってきた。


「珍しいですね、バーバラさんが昼間から出歩くなんて」

「私は太陽が天敵な訳じゃないわ、ただ嫌いなだけよ~」


ならばなぜ、ほぼ全身黒づくめなのか、とジーンとフィアは心の中で呟いた。熱を吸収して相当熱いだろうが、バーバラは汗一つかいていない。


「アレックスも元気そうだな」


ジーンがアレックスの前に立って頭を撫でようとすると、アレックスはプイッと顔をそむける。

ジーンが複雑な表情をすると、それをフィアとバーバラが苦笑しながらその様子を見ていた。


「ふふ、アレックスはジーンが相変わらず気に食わないようね」

「そりゃあ、初めて出会った時に尻尾踏まれれば嫌いにもなるわよね」

「そろそろ忘れろよ、アレックス……」


ジーンはアレックスが理解しているかは別として小さく呟く。アレックスはそれに反応するかのようにジーンに顔を向けると、鋭い牙をむき出しにしてジーンに唸りを上げた。


「ダメな様ね」


がっくりと項垂れるジーンは、フィアの隣へ戻ると、今度はバーバラに話しかけることにした。


「で、エリカの様子を見に来たのか?」

「まあね、期待の新人ってところなのかしら。ちょっと興味が湧いたのよ」


クスッと笑うと、バーバラはジャックと戦うエリカに目を向ける。


「速いわね」

「ええ、とてもじゃないけど初めて、いえ、子供とも思えない反応速度です」

「普通の人間だったらあの正拳突きで倒れるところだと思うが……」

「ジャックの正拳突きを喰らったの?」


バーバラが冗談ではなく驚いたような表情をする。それに2人が小さく頷いた。


「驚いた、頑丈なんて言葉じゃ説明つかないんじゃない?」

「しかも、死角からの攻撃に反応しました」


最初、ジャックは大剣を盾にエリカの攻撃を防ごうとした。エリカはそれを逆に利用して大剣の左側から飛び出したエリカはジャックの首を狙って刀を振ろうとした。


ジャックはそれを刀を蹴り上げて下から斬り上げるような形で防いだのだが、エリカは右手で刀を振っていた。それはつまり、丁度肩から肘にかけての影から大剣が斬り上げてくる形になったのだ。本来ならば自分の影になって死角になるはずの位置からの攻撃に、まったくタイムラグなくエリカは反応した。


エリカもジャックも気が付いていないようだが、外野から見ていたジーンとフィア、そしておそらくヴァルトもその様子をしっかりと目撃していた。


「いろいろ聞きたいことが山積みねぇ」

「ああ、でも今は、エリカが勝つことを応援しよう」

「そうね、エリカ~、負けるんじゃないわよ!!」


フィアの大声に、一瞬エリカの動きが止まると、ジーンたちのように振り向いて小さく頷いた。対戦相手のジャックもその様子をニヤニヤと見ながら大剣を身体の前でぶらつかせている。


そしてエリカは、再びジャックに向き合い、刀を構えて地面を蹴った。


「ふふ、あとでゆっくり聞きたいわね……」


バーバラの呟きは、隣にいるフィアにすら聞こえることはなかった。

唯一反応したのは、アレックスの耳だけだった。



難しい……


な、なんだこれは?


銃とミサイルとロケットだけよりよっぽど書きやすいはずなのに、どうしてアイデアが浮かんでこない?


戦闘描写が難しいのは得物が変わっても変わらないという事でしたか……迂闊でした。


さてさて、エリカ、人間になってから初の対人戦闘です。


あれですよ、レベルマックスにして最初からやり直したから武器だけ初期化された感じですよ。HPはマックスで。


エリカの場合は、HPじゃなくて防具が最強という事になるのですが……。


エリカは果たして見事ジャックを下して入団することが出来るのでしょうか!?


そこ、結果は見えているとか言わない! 思っても口に出さない!!


強靭、無敵、最強!! にはまだほど遠いですが、徐々に強くなっていくことを切に願います。え? 作者なのに、って? 


分かってませんね、どうなるかは、本当に! ガチで! 真剣に! 神のみぞ知るのですよ!! あらすじに書いたじゃありませんか!!


てなわけで今日はこの辺で……


感想等お待ちしております!!



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