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猫日和  作者: 高遠響
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エピローグ

エピローグ


「で、どうよ。浜本さん」

 御使いはテーブルの前に座っている一人の男を見た。男の顔は前回とはまるで別人のように穏やかで落ち着いている。

「その様子だと、アンタの悩みは見事解消したって感じだわね?」

「はい」

 浜本は大きく頷いた。

「心配いらないようです。アレはアレなりに、成長していってくれそうです」

「そう」

 御使いはうんうんと頷いた。

 実は少しばかり心配だったのだ。浜本に下界の様子を少しだけ覗かせてやりたいと神様に頼んだのは良かったが、神様が下界に使わす器として許可したのが可愛げのないボテボテの猫だったのだ。これには御使いも思わず抗議した。

「猫って……だいたい、浜本さんのうちの猫でもない、ただの近所の飼い猫になる予定の子でしょ? あんまりじゃありませんか。それも相当可愛くないですよ? 娘さんが猫嫌いだったら一発で追い出されちゃう。いや、三味線にさせられちゃうかも」

 と、一応抗議したが全く相手にされなかったのだ。

「あいにく、どの器も出払っていて、残ったのはこの器だけ。それに今時の三味線は猫の皮では作らないのです」

 と、とりつくしまもなく大親分にそう言われては、御使いもそれ以上何も言えない。もっとも当の浜本はワラにもすがる思いだったので、可愛げのないボテボテ猫の身体を借りてそそくさと下界へと下りたのだった。

 浜本は頭を掻きながら照れくさそうに笑う。

「しかし、なんですねぇ。猫というのは現金なもので。私がいくら紗枝の近くへ行こうと思っていても、猫の心は餌をくれる女の子の方にばっかり行くもんだから……。いやあ、参りました。そのうえ、猫と来たらどうも紗枝よりも女の子の方が好きだったみたいで」

「ま、そんなもんよ。良かったじゃない。借りた身体がゴキブリとかじゃなくて。娘さんに叩き殺されちゃ目も当てられなかったわよ」

 御使いはガハハハッと笑った。ゴキブリはぞっとしないなぁと浜本も苦笑した。

「で、最初の話に戻るけど、どうするの? アンタの記憶」

 御使いは机の上に両肘をつき、組んだ手の上に顎を乗せてニコニコしながら浜本を見る。

「消してしまった方がいい? それともこのままでやっていく? ん?」

「このままで大丈夫です。このままゆっくりとこちらで過ごさせてもらいます。そのうち母ちゃんがやって来て、そんでもって娘がやって来て、楽しく色んな話を聞けるでしょう。そんな気がしてきました」

 浜本は穏やかにそう言った。御使いは満足そうにうんうんと何度も頷いた。

「そう。じゃあ、これでアナタの件も一件落着! もう迷ってんじゃないわよ~」

 御使いは満面の笑みで浜本を部屋から送り出した。

「はい、お次の方~!」






天国ってこんなんじゃないわよ!! とお怒りのクリスチャンの方がおられましたら、ごめんなさい~。あくまで小説ですから……。


ドラマチックな展開はなくとも、なんとかまとまるモノはまとまるのです。はい。地味に、でも真摯に人生を模索しているGirls(老いも若いも)をささやかながら応援しているのであります。 …自分も含めて(笑)。

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