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君の好きな花の名前

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/02/18
 2026年4月、東京都下町の花川商店街。就職に失敗して自信をなくしかけた穂花は、空き店舗のシャッターに貼られた手書きのチラシ「何でも屋 手伝います」を拾う。電話の主・櫂は「捨てていい」とぶっきらぼうなのに、困りごとを前にすると黙って手を動かし、作業手順を紙に書いて置きっぱなしにする男だった。
 穂花は依頼人の話を最後まで聞き、うまくいった瞬間に手を叩いて一緒に喜ぶ。櫂は約束の言葉を並べず、翌朝いちばんに現場へ立つ。受付と伝票は古本屋の店番・条がきっちり管理し、喫茶店の常連・利里が低い声で情報を流す。商店街の面々に振り回されながら、二人が受ける依頼は、失くし物、渡せなかった花束、書けなかった謝罪文、花言葉の勘違い――「かくれんぼ」みたいなものばかりで、子どもまで巻き込んで町じゅうを走ることになる。
 やがて穂花は、櫂が閉店した花屋「花むすび」の前で毎朝立ち止まり、鍵穴だけを見つめる癖に気づく。亡き母の店を2026年中に開け直したいのに、大家にも、町にも、「助けて」が言えない櫂。穂花は自分の挫折をごまかさずに話し、櫂の“言葉の代わりの行動”を受け止めて並んで手を汚す。シャッターの内側の埃、黒板の文字の間隔、伝票一枚目のめくれる音――小さな手触りが、少しずつ二人の心を揃えていく。
 花束を渡せず引き返す大人、花の名前を思い出せず眉を寄せる老人、保健室の先生に渡す花束を企む子ども。櫂は「君の好きな花の名前」を覚えることで、告白の代わりの言葉を用意していく。
 終盤、商店街を巻き込む「花の絵」を辿る大がかりなかくれんぼが始まる。探し当てた先にあったのは、忘れていた花の名前と、書き直した「令和の抱負」。穂花が手を叩くのは、誰かが“言えた”瞬間だ。そして櫂の口からやっとこぼれた一言――「ありがとう」。シャッターが上がる朝、花むすびは小さく、確かに動き出す。
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