第4話 紗耶ちゃん黒幕説、社内で流行る
【朝・オフィス】
総務部に入ると、妙な空気。
小声のヒソヒソ話が飛び交っている。
社員A(小声)
「ねえ、白石さんってさ……気づいてるよね、全部」
社員B(小声)
「ていうか、あの観察力……怖くない?」
美咲(小声)
「ちょっと! 紗耶ちゃんはそんな子じゃないから!」
紗耶が入ってくる。
紗耶
「おはようございます。
あれ、今日みんな声が小さいですね」
社員A・B
「(ひっ)」
美咲
「(やめて紗耶ちゃん、その天然が誤解を呼ぶの……!)」
【デスク】
三枝が紗耶をチラチラ見ている。
紗耶は気づかず、普通に仕事。
紗耶
「三枝さん、昨日の書類、
ファイル名が“最終版_本当の最終版”になってましたよ」
三枝
「(ギクッ)……な、なんで知ってる」
紗耶
「共有フォルダにあったので。
“本当の最終版”って可愛い名前ですね」
三枝
「(可愛いとか言うな……!)」
【午前・給湯室】
紗耶がコーヒーを淹れていると、社員Cが入ってくる。
社員C
「白石さんって……怒ったりするの?」
紗耶
「え? しますよ。
昨日も、家のWi-Fiが遅くて怒りました」
社員C
「(そういう怒りじゃないんだよ……!)」
紗耶
「でも、すぐ直ったので大丈夫でした」
社員C
「(メンタル強すぎる……)」
【昼休み・カフェテリア】
美咲が紗耶に向かって身を乗り出す。
美咲
「紗耶ちゃん、ちょっと聞いて。
最近、“紗耶ちゃん黒幕説”が社内で流行ってるの」
紗耶
「黒幕……?
私、何か隠してるように見えますか?」
美咲
「見えるのよ! なんか……静かに全部見てる感じが!」
紗耶
「見てるだけですよ?」
美咲
「(それが怖いのよ……!)」
【午後・会議室前】
三枝が経理に呼ばれていく。
その背中を紗耶が見つめる。
紗耶
「三枝さん、今日も手が震えてましたね」
社員D(小声)
「ほら……白石さん、全部見てる……」
社員E(小声)
「やっぱり黒幕なんじゃ……」
紗耶
「え? 何か言いました?」
社員D・E
「い、いえっ!」
【夕方・オフィス】
三枝が戻ってくる。
顔色が悪い。
紗耶
「三枝さん、大丈夫ですか?
今日、歩き方がいつもより重いです」
三枝
「(なんで歩き方まで見てるんだ……!)」
紗耶
「疲れてるんですね。
無理しないでください」
三枝
「(優しいのか……追い詰めてるのか……分からん……!)」
【帰り道】
美咲
「紗耶ちゃん、今日も色々あったね……」
紗耶
「そうですね。
でも、みんな仲良しでいい職場ですよね」
美咲
「(いや、仲良しじゃないよ……疑心暗鬼だよ……)」
紗耶はふと立ち止まる。
紗耶
「なんか……
“誰かが誰かを疑ってる空気”がありますね」
美咲
「え、それ分かるの?」
紗耶
「なんとなくです」
その“なんとなく”が、
社内の空気をさらに濁らせていく。
――第4話 終わり




