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白石さんの微笑みは、今日も誰かを追い詰める  作者: 双鶴


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第1話 天然OL、観察する

【朝・オフィス】


総務部のフロア。

コピー機の音、電話のベル、雑談。

その中で、白石紗耶(28)は静かにコーヒーを注いでいる。


紗耶(心の声ではなく、普通の独り言)

「今日の豆、ちょっと焙煎深いですね…」


同僚・美咲

「え、分かるの? 私いつも同じ味に感じるんだけど」


紗耶

「なんとなく、です。気のせいかもしれません」


美咲

「(笑)紗耶ちゃんって、たまにすごいこと言うよね」


紗耶は首をかしげるだけ。

その柔らかい仕草に、周囲の空気がふっと和らぐ。



【デスク】


上司・三枝(40代)が書類をドサッと置く。


三枝

「白石、この前の経費精算、数字が違ってるぞ。確認しろ」


紗耶

「はい。……あ、これ、三枝さんが書き足した分ですね」


三枝

「は? 俺が?」


紗耶

「字が、三枝さんの癖と同じなので」


三枝

「(イラッ)……お前、俺の字を覚えてるのか?」


紗耶

「いえ、覚えてるというか……見たら分かるだけで」


美咲(小声)

「(紗耶ちゃん、なんでそんなこと言うの…!)」


三枝は何か言い返そうとして、

しかし“確かに自分の字だ”と気づき、黙り込む。


紗耶は気づかず、にこっと微笑む。


紗耶

「直しておきますね」



【昼休み・休憩スペース】


美咲

「ねえ紗耶ちゃん、さっきの言い方ちょっと危なかったよ」


紗耶

「危ない、ですか?」


美咲

「三枝さん、ああ見えて繊細なんだから」


紗耶

「そうなんですか? いつも声が大きいので、強い方かと」


美咲

「いやいやいや、あれは虚勢だから!」


紗耶

「虚勢……なるほど。じゃあ、気をつけます」


美咲

「(この子、分かってるのか分かってないのか…)」



【午後・コピー機前】


三枝がコピー機の前で焦っている。


三枝

「なんでだよ……数字が合わねえ……」


紗耶が通りかかる。


紗耶

「あ、三枝さん。さっきの書類、前回のと数字が違ってましたよ」


三枝

「(ビクッ)……お、お前、またそれか」


紗耶

「いえ、ただ“違うな”と思っただけで。

 あ、コピー機、紙詰まりしてますよ」


三枝

「……っ!」


紗耶は紙詰まりを一瞬で直す。


紗耶

「これで大丈夫です」


三枝

「(なんなんだこの女……!)」


紗耶は気づかず、またにこっと微笑む。



【夕方・帰り際】


美咲

「紗耶ちゃん、今日もお疲れ」


紗耶

「お疲れさまです。明日もコーヒー楽しみですね」


美咲

「(この子、ほんとマイペース…)」


紗耶は帰り道、ふと立ち止まる。


紗耶(独り言)

「三枝さん、今日ずっと落ち着きなかったな……

 何か、困ってるのかな」


その声は優しい。

しかし、その“観察”は鋭すぎる。


紗耶は気づかない。

自分の一言一言が、

三枝の精神をじわじわ削っていることに。


紗耶

「明日、また普通に話そう」


その笑顔は、柔らかくて、どこか底が見えない。


――第1話 終わり


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