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風鈴の音が呼んだモノ

なろラジ大賞参加作です。


ある夏の日。


優人は自宅の敷地にある蔵の前にいた。


両親は出かけ夕方まで戻らない。


開けてはいけないと言われていた扉を、好奇心という鍵でこじ開けた。


埃っぽい闇。


奥の棚に和紙で巻かれた桐箱があった。


墨書きの札が貼られている。


優人は札を引きちぎる。


中には真っ赤なガラスの風鈴。


絵付けではなく、ガラスそのものが血のように赤い。


短冊代わりに動物の毛髪を束ねたような黒い房。


「ただの風鈴か」


拍子抜けした優人がそれを持ち上げた。


チリン。


その瞬間、蔵の扉が音を立て閉まった。


闇。


優人の喉がひきつる。


手の中の風鈴が振動を始めた。


風鈴の中から何かが這い出してきた。


それは人間の胎児のようでもあり、老人のようでもあった。


握り拳ほどのソレの表皮は白く、背中に蛾のような羽が生えている。


「うわぁっ!」


風鈴を投げ捨てようとしたが動かない。


『イタイ』


幼子と老婆の声を混ぜたような不気味な声が脳に響く。


這い出たソレは優人の腕を駆け上がり、その顔に飛びついた。


「ぐっ!」


冷たく湿った手が優人の両目を覆う。


その足が優人の喉を強く踏む。


『マブシイ』


「あ、が……」


息ができない。


ソレは優人の耳元に唇を寄せ、長い舌を這わせた。


ぬるりとした何かが侵入してくる。


『オマエ、オコシタ』


ソレが囁くたび、激痛が走る。


「ご、ごめんなさ……」


声が出ない。


涙と涎が溢れ出る。


殺される。


『コロサナイ。デモ、ヤクソク』


首を踏む力が緩んだ。


優人は喉を鳴らし空気を吸い込んだ。


『エサ。オマエ、ハコブ。ダレニモ、イウナ。イエバ、メダマ、タベル』


ソレが、優人の瞼を無理やりこじ開ける。


視界に映ったのは黒目だけの眼球。


奥には闇が渦巻いている。


「言わない!誰にも言わないから!」


優人が心の中で叫ぶと、ソレは笑った。


『イイコ』


ソレは再び風鈴の中へと消えた。


その夜。


机の電気スタンドにあの風鈴が吊るされている。


親には古道具屋で買ったと嘘をついた。


本当のことを言えば、目玉を抉られる恐怖が待っている。


チリン。


風もないのに音がする。


優人は震える手で、引き出しからカッターを出し指先を切る。


風鈴の下に指を差し出すと、中から伸びてきた何かが滲んだ血を吸い上げた。


『アマイ』


満足げな声が脳に響く。


優人は涙目で絆創膏を巻いた。


罪の代償。


階下から母親の笑い声が聞こえる。


平和な日常。


僕の部屋だけは、地獄と繋がっている。


チリン。


風鈴が鳴った。


「まだ足りないの……」


優人は涙目で反対の指に刃を当てた。


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