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第1話:モーニングティーをどうぞ

こんにちは。

千歳雨です。

今回、オリジナル作品を書きました。

テーマは年上女社長と年下男秘書のきゅんきゅんラブストーリーです。

今まで、逆パターンはよく見てきましたが反対版ってあんまりないなと思ったのと私の身近にいる後輩くんのふとしたギャップからインスピレーションを受けて今回の作品のテーマになりました。

楽しく読んでいただけると嬉しいです。




コンコン


「はい、どうぞ」


「失礼します。」


ノートパソコンを打っている手を止めて、社長室に入ってきた人物に目をやると秘書の加賀 冬茉(かが とうま)が社長室に入ってくる。


艶やかな黒髪はセンターパートのウルフヘア。前髪は少し長めのでキレイに後ろのほうに流れて整えられている。

キメの細かい色白い肌には、ネービー色でチェック柄の細身スーツがよく似合う。

縁が細めの丸みがかった銀縁メガネの奥には虹色に輝くシャボン玉のようなバブル色の瞳。

スッキリしたフェイスラインに高く整った鼻。

薄くも厚ぼったくもないバランスのいい唇が目に入る。

手にはB5サイズで黒のタブレットとモーニングティー用のトレーには紅茶を淹れてあるティーポット、ソーサーにのったティカップ。その他に白い何かが乗っているであろう食器をのせてこちらに近づいてくる。


「社長、おはようございます。

本日はいつもより冷えますね。」


「冬茉、おはよう

そうね、今日は雨だしどんよりしてるわね」


冬茉が社長机まで近づき、モーニングティーの準備に取りかかる。


「こちらが本日のモーニングティーでございます。

茶葉はイギリス産のダージリンです。

本日のオススメはマシュマロのせになっていますがのせてもよろしいですか?」



手際よく、いつものようにティーカップに紅茶とミルクを注ぎこむとマシュマロの入った食器を私に見せてくる。


「お願いするわ」


冬茉は私にニコっと微笑みながら「承知致しました。」と答えたあと、マシュマロを1個、2個、3個とティーカップにのせていく。


もうすでに5個目になってもまだ乗せようとするので私は止めた。


「冬茉、もういいわ」


その言葉を聞いて動きが止まった冬茉が少し悲しそうな表情でこちらをみる。


「社長、オススメは”ティーカップが埋まるまで”でございます。」


私はティーカップに目をやるとすでにマシュマロがパンパンに入っているようにみえる。


「私的にはもう、埋め尽くされているように見えるんだけど…」


私がそう言うと怒られた子犬のように小さく肩をすくめ、手に持っている小さいお皿の中に入っているマシュマロを見ては私を見ての反復行動をする。


「わかった、冬茉の入れたいように入れていいよ」


「ありがとうございます!」



私は諦めると花が満開になるような笑顔でマシュマロをティーカップに追加する冬茉の姿があった。




「それでは、本日の予定ですが」


満足した冬茉は通常業務に戻るよう、社長席から1歩下って今日のスケジュールを伝えていく。


目の前には先程、注いでもらった”マシュマロ増し増しミルクティー”。

結局、食器に入っていたマシュマロは全部、ティーカップの中だ。


少し、動かしたら溢れるんじゃないか、と思うくらい難易度高めの飲み物になった。


本日のスケジュールを聞きながらこぼれないようにソーサーを持ちあげ口にティーカップをあてる。


ダージリンティーの芳醇な香りと口いっぱいに広がる程よく溶けたマシュマロの甘さ。

角砂糖とは違う、まろやかな甘さをマシュマロが出してくれている。


「美味しい」


私がそうつぶやくとスケジュールを読み上げるのをやめて、私の顔を覗き込む。


冬茉が私に近づくとふわっと冬茉からいつもつけている香水が香った。

ベルガモットとマリンのまるで爽やかな海の風を思わせる香りが私の鼻孔をくすぐる。


「お気に召しましたか?

僕も先日、この美味しさに出会ってしまいまして。

ぜひ社長にも共有したいと思ったんです。」


そう言って、にっこりと可愛らしい笑顔をするうちの秘書。


「共有してくれてありがとう。

思っていたより甘さもちょうどいいし、ダージリンの香りもしっかりしてとても落ち着くわ」


私がそういうと嬉しいのか、照れてるのか少し顔を冬茉は伏せた。


「ゴホン、それではスケジュールの続きですが…」


少し、赤くなったであろう頬を隠すようにいつもより高めにタブレットを持っていた。


思えば、私達が出会ったあの日から冬茉はよく笑顔を見せることが多くなった。



今日みたいな冷たい雨にうたれて、捨て犬のような少年と出会ったのは5年前だった。



ーーーーー ーー --


5年前の夜、都会の路地裏に落ちていたのは、弾ける直前のシャボン玉のように危うい、虹色の瞳を持つ少年だった。



代々、時雨(しぐれ)家が経営する、300年続く老舗 簪・ジュエリーショップ『時雨-SHIGURE-』の13代目 代表取締役社長に就任して3ヶ月が経った日。前代表の祖母 千代子(ちよこ)に連れたれて、取引先との会食を終えたばかりの私の足が、不自然に止まる。

叩きつけるような雨の音に混じって、誰かの吐息が聞こえた気がした。


街灯の少ない路地裏に入るとゴミ箱の陰、濡れたアスファルトに座り込んでいたのは、透き通るような白銀の髪を持つ少年だった。


「こんなところで何してるの?」


突然の声にびっくりしたのか、体をビクつかせながら私の言葉に、彼がゆっくりと顔を上げる。


傘の隙間から差し込んだ街灯の光が、彼の瞳に触れた瞬間、私は息を呑んだ。


――虹色


一生をかけても出会えないような、奇跡の色。まるで太陽に照らされたシャボン玉のような瞳が私を映した。


「僕って生きてる意味あるのかな…」


絞りだした声は掠れていて、雨と涙で頬は濡れていた。

制服を着ているようで見た目から高校生くらいだろうか。

私を見つめる虹色に輝くバブル色の瞳は揺れていた。


私は少年の前にしゃがみ込み、少しでも雨を凌ぐよう差していた傘を少年の方に傾けた。


「なにがあったかはわからないけど、生きる意味なんてこれからでも作っていけばいいじゃない。

意味があるとかないとそんなことより、今を生きてることが偉いんだよ。」


少年のバブル色の瞳が大きく見開いた。


「ほら、風邪引いちゃうからとりあえず、うちにおいで

まずはお風呂に入って、ごはん食べるよ

嫌かもしれないけど、今日は遅いからうち泊まってて

ゲストルームもあるから」


そう言って私は羽織っていたコートを少年にかけると持っていたハンカチで顔をふく。


近づいた瞬間、彼からふわりと漂ったのは、雨の匂いと混じりあう、今の香りと変わらない爽やかな海風の香りだった。





「社長、聞いていますか?

18時から宮原商事との会合ですが僕も同席してよろしいでしょうか」


少し、心配そうにわたしの顔を覗き込んでいるバブル色の瞳と目があう。


どうやら、昔の思い出に浸りすぎたみたい。


「あ…ぜひお願い。

あそこの社長さん、ちょっと苦手だからいてくれると助かるわ」


私がそういうと社長机にタブレットをおく冬茉。


タブレットをおいたかと思うと、座っている私に冬茉が近づいてきて椅子の肘掛けに手をつく。


半ば強制的に冬茉の方に向くと私の耳元で冬茉がつぶやいた。


「物思いにふけって、業務そっちのけですか?

陽緖莉(ひおり)さんは誰のこと思い出していたんですかね。」


低いけど甘い声音で囁かれ、心臓が跳ねた。


”あなたとの出会いを思い出していました”

なんて恥ずかしくて言えない …!!



慌てて彼を見ると、彼はすでに一歩下がり、いつもの「可愛い秘書」の笑顔で首を傾げている。


「……えっと、そのー…」

「何を言いたいかわかるので大丈夫ですよ?

さあ、午前にある会議の資料を確認しましょうか」


さっきのは幻だったのか、冬茉はなにもなかったかのようにタブレットを開く。

彼の横顔を見つめながら、私は高鳴る胸を抑えた。


――最近、うちの秘書は、可愛いだけじゃない!!ーー


どこか嬉しそうに資料を見せてくる秘書を横目に胸の高鳴りが聞こえないように私は平然を装った。


…多分、できていないけど。




1話目を読んでいただきありがとうございました。

私の秘書が可愛かったのに、日に日にオスみが増しててキュンが止まらない!!の更新日ですが2週間ごとの更新を目指していきたいと思います。

年下秘書にきゅんきゅんする女社長のお話をお楽しみに。

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