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現世に転生したけどDNAをいじれるだけなので、ひっそり暮らします  作者: シチュー引き回しカレー道連れ 


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16/20

特別教室に行ったら、転生者だけだった

特別教室。


それは、校舎の端にある、普段は使われていない音楽室だった。

僕は担任に連れられて、そこへ向かった。

『隔離か……まあ、仕方ないよね……』

ドアを開けると、そこには既に五人の転生者たちが座っていた。

影山静香(シャドウ)有栖川愛(アリシア)、月野るな(ルナ)、花園麗(フローラ)神谷理香(ヴァルキリア)

そして、倉田春菜(エリシア)も。


「佐藤、お前たち転校生も、当分ここで授業を受けろ。倉田もだ」


担任がそう言って、去っていった。

ドアが閉まる。


静寂。

僕たちだけが、この部屋に残された。

『転生者だけ……』

春菜(エリシア)が僕の隣に座った。

「アルヴィン、大丈夫?」

転生者だけなので「アルヴィン」。

「うん……まあ、覚悟はしてたから」

嘘だ。全然覚悟なんてできてない。


静香(シャドウ)が静かに言った。

「アルヴィン様、昨日は申し訳ありませんでした」

「私も……」

(フローラ)が俯く。

「私たちのせいで、アルヴィン様が苦しむことになってしまって」

(アリシア)が眼鏡を外して、目を拭いた。

「本当に……ごめんなさい」

るな(ルナ)も、元気がない。

「るな、アルヴィン様を守るって言ったのに……逆に傷つけちゃった……」

理香(ヴァルキリア)は拳を握りしめて、壁を見つめていた。

「私は……組織の作戦を止められなかった。アルヴィン様、申し訳ありません」


僕は、彼女たちを見た。

全員、本当に申し訳なさそうにしている。

『彼女たちも……悪気があったわけじゃないんだ』

「みんな、顔を上げて」

僕は言った。


「確かに、昨日のことはショックだった。でも……みんなが僕のことを想ってくれてるのは、わかってる」

「アルヴィン様……」

「ただ、一つだけ約束してほしい」

僕は真剣な顔で続けた。

「もう、自分を傷つけないで。僕のためとか言って、自分を犠牲にしないで」

五人が顔を見合わせた。

「でも……」

静香(シャドウ)が言いかけたが、僕は首を振った。

「僕は、誰かが傷つくのを見るのが嫌なんだ。たとえそれが、僕のためだとしても」

「……わかりました」

(フローラ)が頷いた。

「約束します。もう、自分を傷つけません」

他の四人も頷いた。

「ありがとう」

僕はホッとした。

春菜(エリシア)が微笑んだ。

「アルヴィン、成長したわね」

「え?」

「前は、自分の意見をはっきり言えなかったのに」

『そうかも……少しずつ、変わってきてるのかな』


その時、ドアがノックされた。

「失礼します」

入ってきたのは、田中裕子(ユスティア)教頭と山本美咲(ディアナ)保健教諭。

二人とも、穏健派の転生者だ。

「アルヴィン様、お話があります」

裕子(ユスティア)が真剣な表情で言った。


裕子(ユスティア)は、僕たちの前に立った。

「まず、昨日のことをお詫びします。私たちも、新世界の使徒があそこまで過激な行動に出るとは……」

「いえ、先生たちのせいじゃありません」

僕は首を振った。

「それより、これからどうなるんですか?」


裕子(ユスティア)美咲(ディアナ)が顔を見合わせた。

「実は……学校側から、あなたに『自主退学』を勧める動きがあります」

「退学……」

やっぱり。

「ただ、私たちが全力で阻止しています。あなたには、普通の高校生活を送る権利がある」

美咲(ディアナ)が優しく言った。

「でも、正直なところ……このままでは難しいかもしれません」

「報道陣は毎日来るでしょうし、生徒たちもあなたを特別視します。授業も、まともに受けられない」

『やっぱり、普通の高校生活は……もう無理なのか』

春菜(エリシア)が僕の手を握った。

「大丈夫。私たちがいる」

理香(ヴァルキリア)も頷いた。

「佐藤様、私たちは最後まであなたと共にいます」


その時、窓の外から声が聞こえた。

「佐藤くーん! いるんでしょ!」

窓の外に、大勢の生徒が集まっていた。

「治療してー!」

「私の花粉症も治して!」

「骨折してる友達がいるんだけど!」

『うわあ……』


裕子(ユスティア)が窓を閉めた。

「これが、現実です。あなたの能力が知られた以上、こういう状況は避けられません」

「でも、全員を治療するわけには……」

「もちろんです。それをしたら、あなたは一生、治療に追われることになる」


美咲(ディアナ)が続けた。

「だから、私たちは提案があります」

「提案?」

「あなたを、私たちの組織で保護します。安全な場所で、普通の生活を送れるように」

『保護……』

静香(シャドウ)が口を開いた。

「それは、アルヴィン様を隔離するということですか?」

「隔離というか……守るということです」


裕子(ユスティア)が答えた。

「新世界の使徒は、今後もアルヴィン様を利用しようとするでしょう。私たちは、それを阻止したい」

理香(ヴァルキリア)が立ち上がった。

「それは、新世界の使徒から引き離すということか」

「……そうです」

「断る」

理香(ヴァルキリア)がきっぱりと言った。

「私たちは、佐藤様を守るために存在している。あなたたちの庇護など、必要ない」

裕子(ユスティア)が溜息をついた。

「ヴァルキリア、あなたたちのやり方では、アルヴィン様が苦しむだけです」

「それは……」

理香(ヴァルキリア)が言葉に詰まった。


確かに、昨日のことで僕は苦しんだ。

でも、だからといって穏健派に任せるのも……

「待ってください」

僕は立ち上がった。

「僕のことを、僕抜きで決めないでください」

全員が僕を見た。


「僕は……まだ、どうするか決めてません。でも、一つだけはっきりしてることがあります」

僕は深呼吸した。

「僕は、逃げたくない」

「アルヴィン……」

春菜(エリシア)が驚いた顔をした。


「確かに、昨日のことはショックだった。でも、だからって隠れて生きるのは……もう、嫌なんだ」

『異世界では、ずっと隠れて生きてた。引きこもって、人と関わらないようにして』

『でも、この世界では……少しだけ、違う生き方をしてみたい』

「僕は、学校に残ります。みんなと一緒に」


裕子(ユスティア)が困ったような顔をした。

「でも、アルヴィン様……報道陣や、治療を求める人々が……」

「それは……何とか対処します。はっきり断ります」

僕は自分でも驚くほど、強い口調で言った。

「僕は、誰でも彼でも治療するわけじゃない。本当に必要な時だけ、助けます」

静香(シャドウ)が微笑んだ。


「アルヴィン様……強くなられましたね」

(フローラ)も嬉しそうだ。

「はい。異世界の時とは、違います」

(アリシア)が拍手した。

「素晴らしい決断です、アルヴィン様!」

るな(ルナ)が飛びついてきた。

「アルヴィン様、かっこいい!」

『ちょ、近い近い!』

理香(ヴァルキリア)が僕の肩に手を置いた。

「アルヴィン様、私はあなたについていきます。どんな決断をしても」

春菜(エリシア)が僕の手を握った。

「私も。最後まで、一緒にいる」

裕子(ユスティア)美咲(ディアナ)は、少し考え込んでいた。

「……わかりました」

裕子(ユスティア)が頷いた。

「あなたの意思を尊重します。ただ、何かあったらすぐに連絡してください」

「はい」

美咲(ディアナ)が付け加えた。

「私たちは、いつでもあなたの味方です。アルヴィン様」

二人が部屋を出ていった。


残されたのは、僕と春菜(エリシア)、そして五人の転生者たち。

「さて……」

僕は窓の外を見た。

まだ、大勢の生徒が集まっている。

「まずは、あの人たちに説明しないとね」

「アルヴィン、本当に大丈夫?」

春菜(エリシア)が心配そうに聞く。

「大丈夫……たぶん」

僕は窓を開けた。

「みんな、聞いて!」

生徒たちが静まり返った。


「僕は、誰でも治療するわけじゃありません。命に関わる時だけ、助けます」

「えー!」

「花粉症は!?」

「ニキビは!?」

『ニキビって……』

「それは、病院に行ってください。僕は医者じゃないんです」

「でも、動画見たよ! すぐ治してたじゃん!」

「あれは……特別な状況だったんです」

僕は続けた。


「僕も、普通の高校生です。普通に授業を受けたいし、普通に友達と過ごしたい」

「だから、お願いです。普通に接してください」

生徒たちは、少し戸惑っているようだった。

でも、一人の女子生徒が言った。

「わかった。じゃあ、佐藤くんとは普通に友達でいる」

「うん、俺も」

「私も、別に治療してほしいわけじゃないし」

少しずつ、生徒たちが散っていった。


『よし……第一歩だ』

春菜(エリシア)が微笑んだ。

「アルヴィン、すごいじゃない」

「まあ、これからどうなるかわからないけど……」

その時、特別教室のドアが勢いよく開いた。

「アルヴィン様!」

入ってきたのは、セレスティアだった。

『え、なんでここに!?』

セレスティアは息を切らしていた。


「大変です……新世界の使徒の本部が……」

「本部が?」

「襲撃されました。あちらの組織に」

『え!?』

裕子(ユスティア)たちが、新世界の使徒を攻撃した?

「カイザー様が……リーダーが、捕まりました」

セレスティアが悔しそうに唇を噛んだ。

「お願いです、アルヴィン様。カイザー様を助けてください」

「待って、カイザーって……」

「新世界の使徒のリーダーです。あなたも、異世界で面識があるはず」

『異世界で……?』


僕は必死に記憶を探った。

でも、思い出せない。

「ごめん、覚えてない……」

セレスティアが悲しそうな顔をした。

「そうですか……やはり、あなたは覚えていないのですね」

彼女が続ける。

「でも、カイザー様は、あなたのことをずっと……」

その時、窓ガラスが割れた。

『!?』

黒いスーツの男たちが、窓から飛び込んできた。


「佐藤健太、確保する!」


理香(ヴァルキリア)が僕を庇った。

「佐藤様、下がって!」

春菜(エリシア)も構えた。

「アルヴィン、私の後ろに!」

静香(シャドウ)(アリシア)、るな(ルナ)、(フローラ)も戦闘態勢。

黒スーツの男たちと、転生者たちの戦いが始まった。


教室が一瞬で戦場になった。

理香(ヴァルキリア)が男の一人を投げ飛ばす。

春菜(エリシア)が空手で別の男を蹴り飛ばす。

静香(シャドウ)は素早い動きで男たちの急所を突く。

(アリシア)は……なぜかテーザー銃を持っていた。

『いつの間に!?』

るな(ルナ)は身軽に動き回り、男たちを翻弄する。

(フローラ)は優雅に、しかし確実に男たちを無力化していく。


『みんな、強い……!』

でも、男たちの数が多すぎる。

窓から次々と入ってくる。

「アルヴィン様、こちらへ!」

セレスティアが僕の手を引いた。

「ちょ、ちょっと!」

「ここは危険です。私が守ります!」

セレスティアは僕を連れて、教室の外へ。

廊下を走る。


「待って、みんなは!?」

「大丈夫です。彼女たちは強い。それより、あなたを安全な場所へ」

『でも……』

階段を下りていく。

その時、下から足音が聞こえた。

また黒スーツの男たちだ。

「くっ……」

セレスティアが僕を庇った。


「アルヴィン様、私の後ろに」

男たちが迫ってくる。

セレスティアが構えた瞬間、男たちが倒れた。

「!?」


後ろから、裕子(ユスティア)美咲(ディアナ)が現れた。

「セレスティア、アルヴィン様を離しなさい」

裕子(ユスティア)が冷たい声で言った。

「ユスティア……!」

セレスティアが睨む。

「これは、あなたたちの仕業ですか!?」

「仕業? 何のことです?」

美咲(ディアナ)がとぼける。


「カイザー様を捕まえたのは、あなたたちでしょう!?」

「証拠は?」

裕子(ユスティア)が冷静に返した。

二人の間に、火花が散る。

僕は……どうすればいいんだ。


『新世界の使徒と、穏健派が、本格的に対立してる……』

『そして、その中心に僕がいる……』

その時、校内放送が流れた。

「佐藤健太くん、至急、校長室へ来てください」

校長の声だ。

「繰り返します。佐藤健太くん、至急校長室へ」

セレスティア、裕子(ユスティア)美咲(ディアナ)が、僕を見た。


「行かないで、アルヴィン様」

セレスティアが言った。

「罠です」

「いえ、行くべきです」

裕子(ユスティア)が反論した。

「学校側の判断を聞く必要があります」

僕は……考えた。

『校長室……何があるんだろう』

でも、逃げていても仕方ない。

「行きます」

「アルヴィン様!?」

「大丈夫。校長先生なら、普通の人だから」

僕は階段を上がり始めた。


セレスティアたちが後を追ってくる。

「せめて、私たちも一緒に」

「いえ、僕一人で行きます」

僕は振り返って、彼女たちを見た。

「信じてください。僕を」

三人は、少し驚いたような顔をした。

それから、頷いた。

「……わかりました。でも、何かあったらすぐに」

「はい」

僕は一人で、校長室へ向かった。


校長室の前。

深呼吸をして、ノックした。

「失礼します」

中に入ると、校長が机に座っていた。

そして、その隣に……見知らぬ男性が立っていた。

30代くらい。黒いスーツ。鋭い目つき。

「佐藤健太くんですね。初めまして」

男性が名刺を差し出した。


「私は、内閣府の者です」

『内閣府!?』

「あなたの能力について、政府としても非常に関心があります」

男性が続ける。

「つきましては、あなたに協力をお願いしたい」

「協力……?」

「はい。国家レベルでの医療支援、難病患者の治療、そして……」

男性が真剣な顔で言った。


「転生者問題の解決です」

『転生者問題……』

「政府は、転生者の存在を把握しています。そして、二つの組織が対立していることも」

『把握してるんだ……』

「あなたは、両方の組織から慕われている。つまり、仲介役になれる」

「仲介役……」

「そうです。あなたの力で、転生者たちをまとめてほしい」

男性が一歩近づいた。


「そして、日本のために、いえ、人類のために、あなたの能力を使ってほしい」

僕は……言葉が出なかった。

『政府まで……僕に期待してるの?』

校長が申し訳なさそうに言った。

「佐藤くん、すまない。突然のことで」

「いえ……」

内閣府の男性が続ける。


「返事は、今すぐでなくて構いません。ただ、考えておいてください」

男性が名刺を置いて、部屋を出ていった。

残されたのは、僕と校長だけ。

校長が溜息をついた。


「佐藤くん、君の周りで起きていること……私には、正直理解できない」

「すみません……」

「謝ることはない。ただ……」

校長が真剣な顔で言った。

「学校としては、君を守りたい。でも、限界がある」

「……はい」

「もし、君が望むなら、転校の手配もする。安全な場所への」

『転校……』

「でも、それは君が決めることだ。よく考えてくれ」

僕は頷いた。


校長室を出ると、廊下には春菜(エリシア)が待っていた。

「アルヴィン! 大丈夫!?」

「うん……大丈夫」

春菜(エリシア)が僕を抱きしめた。

「心配したのよ……一人で行くなんて……」

『あ、温かい……』

でも、今はそれどころじゃない。

「エリシア、聞いて」

僕は、内閣府の人との話を伝えた。

春菜(エリシア)は驚いた顔をした。

「政府が……動き出したのね」

「うん。どうすればいいと思う?」

「それは……アルヴィンが決めることよ」

春菜(エリシア)が僕の目を見た。

「でも、一つだけ言える。あなたは、もう普通の高校生じゃない」

「……わかってる」

『わかってるけど……認めたくなかった』

でも、もう現実から目を逸らせない。

僕は、特別な存在になってしまった。


そして、多くの人が、僕に期待している。

『僕は……どうする?』

その答えは、まだ見つからなかった。

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