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 昭和21年3月10日午前11時ころ堺基地に20組の家族総勢84名が到着した。基地の衛兵は一行に同行した将校と軽く挨拶を交わし、食堂へ連れて行くように指示した。

食堂では俺とベーカー大尉が一行を出迎えた。皆が多少くたびれた様相を示していたが、心に何かを記するかのような真摯な態度が俺には伝わって来た。彼らは予想以上の破壊された日本の現状に心を痛めると共に復興に関して関わり合いになる仕事を想像して興奮もしていた。

 彼らは俺が堺基地で知り合った日系二世将校の知り合いであり、去年の内に日本の復興を手伝ってもらおうといくつかの条件を付けた上で、ベーカー大尉やミッチェル准将からGSの了解の下、アメリカ本土やハワイにおいて募集した人員なのだ。彼らはアメリカの民主主義や自由主義をよく理解し、さらにアメリカにおける人種差別も実感している人たちだ。こちらの出した条件に同意した日本人移民で日本国籍である人物を中心とした家族であった。

 彼らには大田村商事の顧問として一時的になってもらい、国政選挙に新党で立ち上がってもらうつもりで来てもらっていた。正しい情報を選挙民に広く流し(ラジオの対談を組ませる。)、同時に彼らの名前を売るようにG2にも協力してもらう。G2に取ってアメリカの流儀をよく理解している議員が多数誕生する事に賛成しているから物事はとんとん拍子で進んでいく。

 GSもまた彼らの改革を理解できるだけの民生能力を持った人間が議員として日本に誕生する事に異議はない。というより積極的に支援するというヒューストン局長直々のお墨付きが出ている。

そう言う準備があった上で、2日後には今回のほとんどの代議士が拘束される事態となっての選挙戦が行われることになったから、全く予想の付かない選挙として戦後初の選挙が始まることなった。

長旅の疲れもあるため家族の人は基地内のゲストルームでそれぞれ休んでもらって、今回の主役である20人とGHQ関係者が10人ほどで今後の打ち合わせを行う事になった。

会議の冒頭に堺基地のミッチェル准将が

「清水ファミリーとなる皆さんは、この日本を新たに作り直す為の基礎を築くという大事な役目を受け持つことになります。但し、ここにいる若僧のMrシミズを信じればきっと容易いことだと、後々皆が痛感すること間違いないくらい、ワシ自身、この若僧に驚かされてきた。心行くまで存分に話し合ってくれ。」

と言う衝撃的な一言から始まった。

「ミッチェル基地司令からの暖かい言葉と紹介をいただきました、見るまでもなくこの中では一番若僧の清水健吾と言います。お初にお目にかかります。どうぞよろしくお願い致します。

 時間もないので早速本題に入ります。この国の荒れ様は道々の風景や人々の様子を見てご存じだと思いますが、それ以上に日本の中核を担うべき若い柔軟な頭脳と労働力、物を作り出す生産力が衰え、更に旧軍事勢力による経済破壊によりこの国は亡国の危機であると言えるくらい悲惨な状態です。しかも誤った思想を何故誤っているのか根本的な理解をしないまま、共産主義の思想が戦後の混乱に乗じて広がる様相もあります。未曽有のこの様な危機だからこそ、今と言うこの時は思い切った変革を行うことのできる最大のチャンスなのです。」

俺は言葉を切って一同を見回した。


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