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 話は少し遡る昭和21年3月14日大田村役場の村長室

「はぁ~、何でワシが代議士に今更でないかんのじゃ!もっと相応しいもンがいるじゃろ。」と村長が息巻いていた。

「和歌山の代議士全てが昨年の終戦後に戦事慰労一時金として10万円(約1億円)もろとる話がGHQより公表され、それは不当支払いであり、さらに不払いであるはずの戦時国債が不当に代議士にだけ償還されている事実まで暴露され、GHQによって収監拘束されている状態で、正当な代議士候補が一人も見当たらない結果、大田村のご隠居から推薦されたのです。諦めてください。

 村長であれば立派にこの国を再建していただけると皆信じております。」と助役がしきりに村長をなだめているが

「俺はもう60を過ぎておるんじゃぞ。そんなもン代議士なんぞ忙しくて直ぐに卒中で倒れてくたばっちまうじゃないか。俺は楽隠居したいンじゃ!」

「村長、お願いいたします。ご隠居様のたっての願いでございます。この村のような住みやすい国にしていただくようたっての願いです。」

「ムムムムム!ちゅうことは全ては清水代表のせいではないか。代表を呼べ。ワシゃ、あ奴のゆーた通りにして来ただけやないか。

この件はワシの腹に入らん!あ奴に責任取ってもらう。」

という一幕があって、急きょ俺が村長室へ呼び出された。もちろんお嬢も一緒である。

「村長、何か大変なことになっていると助役さんから呼び出しがかかったのですが?何かありましたか?」そう言って村長室に入っていくと

「清水代表!お主のせいでワシゃこの年になってから代議士にならにゃならんことになっちまったぞ。どうしてくれる!」と村長。

「村長、できれば総理大臣になってこの国をまとめてください。この国はあなたのような人が必要です。堂々と一党を引き連れてこの国に素晴らしい未来を迎えられるように頑張ってください。」と俺。

「素晴らしい未来より先に、ワシの方にお迎えがくるわ!どアホ。ようやく次の任期が来れば楽隠居できると思うておったのに、お主の甘言に乗っちまったせいで、御隠居様からたっての頼みで代議士にならなあかんちゅうことになっちまったじゃないか、どないすンのや。」

「それが村長の運命だしたんだっせ。吉宗さんの将軍様や!あんじょう気張っておくれやす!」と俺。

「どアホ!」と村長が返すと、

「村長!あなたは代議士になる。あなたは代議士になる。」

久々の南園寺香奈子嬢の一喝と共に眼光が光ると

「ヒェ!」と村長は一声出してカクカクと頷いた。

心臓発作起こらなくて良かったね。まだまだ大丈夫です。村長。


 とにかく旧政府の与党も野党もそろって10万円から100万円(約1-10億円)の戦時一時金と自分たちだけ戦時国債補償(紙くずの旧政府戦費調達国債)を密かに現金化し、受け取っていたため4月の選挙には前職が誰一人立候補できないと言う異常事態になってしまっていた。ここから未曽有の国政選挙戦が始まったのであった。


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