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 3月12日にGHQから衝撃的な発表があった。現在の内閣のほぼ全てだけでなく大物政治家と呼ばれる政治家、戦事犯として既に収監されている軍政治家だけでなく高位軍人の多数、軍族商人、財閥、官僚、神仏宗教者や無名の団体までの人間が逮捕収監されたというラジオ発表だった。その容疑は「国家反逆罪」であり、この悪性インフレを引き起こした原因を作った者であると。

敗戦時の8月15日から5000億円(約500兆円)近くの紙幣を権限のないまま印刷し、彼らの間に収容隠匿し、新政府の下での国民の生活不安を引き起こし新政府の転覆を画策したものであるという内容が日々の暮らしも行き詰まっている人々の怒りに火をつけることになった。

 日本全体の怒りと大義のない行為に命令されただけの人はGHQからの免責条件を受けようと、進んで状況の経緯を告白し出したため恐ろしいほどのスピードで全容解明が進んでいった。

但し、日銀に収納されていた金の延べ棒の内5000万円分(約500億円)が紛失している経緯は、担当者が不審死していたため容易に追跡することが出来なかった。

これまで政治団体や宗教団体など財務調査出来なかったところからの「国家反逆罪」という重大な犯罪の一翼となった経緯を重視しGHQは財務査察特別局の創設と今まで無税とされていた法人全てに対しても商法に準じた帳簿作成の義務と財務査察特別局に対する報告、収益の1%を納める制度の発足を公布した。本来は内閣より発表すべき事柄であったが、政治家の「国家反逆罪」容疑による拘束が相次ぎ内閣を形成するだけの議員を確保する事が出来なかったことと、選挙で新たに代議士を選出しても新人ばかりであり、要領よく取りまとめることが難しい喫緊の問題である為、追認を得る形で発足させることになったそうだ。いわゆる、どさくさに紛れて通常なら認められることの出来ない実験的な案件をGSが通してしまったという状況であった。

 この事件によって日本の歴史は大きく変わることになった。

帝国支配層に取ってこれから自由に教育されていく日本人が知らされていく知識に自分たちに関する都合の悪い情報は教育の段階で全て排除しなければならないが、その為には確固たる力の温存が必要であり、その行使できる立場にいなければならない。その力とは圧倒的な金の力が全てである。これは資本主義の根本原理に基づくものであり、アメリカ合衆国が信奉する自由の根幹を形作るものである為、この原則は支配が変わっても変わらないルールであることを誰よりも良く帝国支配層は知っていた。その牙城があっけなく崩れ去ってしまった事件が「国家反逆罪」容疑によるGHQからの戦後支払い金の全額徴収だったのだ。帝国支配層は敗戦国民と同じ経済ラインに立たされた現実を受け、彼らを茫然自失とさせた事件であった。

 マックバーガー大将はこれ程巨額の資金が旧日本帝国の資金として眠っていた事実に慄然とした。その事実を知って改革を導く場合と知らずに表面だけを改革する場合ではその結果は天地の差ができることを分かっていたからだ。

「Mrシミズには大きな借りができたな。ヒューストン。」

「まったく、あの若さで恐ろしいほど智謀がある。しかも、欲がない。とんでもない化け物かもしれませんね。」

「ははは、ひでぇ言いようだな。」とマックバーガー大将はパイプをゆっくり燻らせた。


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