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 3月3日、日銀内部はGHQからの緊急通告によって恐慌状態となった。それは、3日までに新札発行した金額と支払金融機関の明示をGHQが要求してきたことと、3日、4日の全金融機関の口座の凍結及び口座残高の報告を命令して来たからだ。直接の命令は異例で初めてとも言えるものだった。

 当然、政府にもGHQは郵便貯金の各郵便局の残高報告と3日、4日の口座凍結を命令してきた。これはGSが主導で経済の実態調査に必要な為である。との報告がされ不承不承、新政府の首脳は了解した。ところが、3月4日にGHQから「国家反逆罪」になる案件として、旧政府による終戦日の8月15日から猛烈な勢いで増刷された日銀紙幣について取り調べをする旨の通告がなされたから、寝耳に水の現政府高官だけでなく旧軍高官や軍財閥関連、財閥関係が恐慌状態になった。関係書類は一切焼却し後に残らないようにしていたが、国家予算の数十倍にも当たる金額の紙幣は新札に切り替えなければ紙くずになる為、全て金融機関の口座に名義を粉飾し巧妙に隠されていた。ところが金額が金額である為にその巨額な額まで隠すことが出来なかったのだ。

 「どう言うことだ!お前ら何やってたんだ!これからアメリカに対して我々旧日本帝国による新しい国を作る為に、苦心して積み上げて来た日本の宝を見す見す取られる程、俺たちは甘くねえぞ。

お前らも覚悟してアメ公に話をつけな。決して舐められるンじゃねえぞ!」元軍の高官からの日銀長官に対する激励の電話がひっきりなしに入って来る。

 もちろん総理大臣と呼ばれる人間にも何人もの面会予約が入っていたが、今現在話し合っている人物以外は全て断っている。総理には既にG2の人間が張り付いていることを理解していたからだ。

 今このタイミングで旧勢力の関係者と会う事は自分の全てのキャリアが潰されてしまう可能性しか見えなかったからだ。

ただ戦没者の慰霊という事柄自体は許される範囲内だとギリギリ判断したのだが

「総理、この度のGHQの命令はどう言った意味のものでしょうか?」

幣国神社の総宮司が宮本総理大臣に対して質問を発すると

「ワシにもいきなり命令されて驚いているところだ。こんな不意打ちは全くの予想外だ。ワシらはとにかく悪性インフレという経済状態の改善をさせる為に「金融緊急措置令」を公布して新円切り替えを行う算段だったのが、その布告を逆用して全ての金融資産の洗い出しに使うという悪魔のごとき策を施してきたということしか今は言えない。日本帝国の礎は今確かに揺らいでいる。敗戦よりも最も深い敗戦の際に立っていると言う事だ。」と宮本総理。

「私は御前様に何と言えばいいのですか?」

「御前様まではGHQの手を近づかせないように努力しますと。」

「私はその様な報告を御前様に届けることは出来ません。」とうなだれる宮司。

「すまない。今はそれしか言えない。閣議が目白押しで今日はこれまでだ。然るべき方法で連絡は入れるがもう面会はG2がいる以上出来ない。」

そう宮本総理は言って足早に閣議の場所に去った。

「どうしよう。」とつぶやく宮司はたたずんで途方に暮れた顔をするしかなかった。


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