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「Mrシミズ、あなたは世界的な戦争が終わったばかりのこの世界に新たな戦争の芽をもたらそうとするのか?」

チャール少将は俺の目を覗き込むような強い視線で尋ねて来た。

「終わりの見えない貧しさを感じる人々と、不遇の知識階級が結びつくと既存の社会組織そのものを変えようとする流れが発生する。

 植民地では自国の復興を急ぐ宗主国による収奪が厳しくなり、地域全体に先の見えない未来に対する絶望感が現地の不遇知識階級を中心に巻き起こり独立運動の始まる流れになる。ここに理論的欠陥を持った共産主義が入り込むと、平等と公平をもたらす幻想を、経験したことのない共産主義体制について夢のように素晴らしい社会であると希望のない人々に宗教のように広がってしまう危険性が高い現状が簡単に予想できます。

 独立戦争がボーア戦争のような民族思想戦争になればどのような大国であっても経済的回収が困難な泥沼のような戦いとなり、その中で無駄に有用な資源が無くなるだけの状態に陥り、しかも終わりの目途が立たない戦争という事に気づく宗主国。そこに共産主義の恐ろしさがある。

思想、主義の対策としての現状最低限の仕事として、G2はソビエトのこれまでしてきた事実を克明に調べて、日本の新しい教育の中で人々に検討させることが必要です。それが事実かどうかを問う。例えソビエトとの共同統治であっても、歴史的事実を研究することはこの日本では必要な事であるとの趣旨で。」

「Mrシミズの予想は悪魔のような現実的必実感を我々に突きつける。我々も将来ソビエトとは争う事になるかもしれないとは予想しているが、今はまだそこまで明確に判断を下す時期ではないと考えている。但し、あなたの打つ手に今まで誤謬と言えるものが大変少ない現状を考えると我々も十分に検討する必要があると思っている。少し時間が欲しいところだ。」

 とチャール少将は横にいるメイス大佐を促すようにしながら言うと。

 「今、一番重要なことは選挙が実施される前という短期間に旧日本軍の影響下にある勢力をいかに無力化できるかが問題であり、力を集中しなければ日本国内の掌握さえ十分に出来ていない我々に取ってかなり難しいことだと理解している。」とメイス大佐。

 「だからこその新政府樹立に対する「国家反逆罪」という大義が生きてきます。日本人は大義に弱い。この物価高も、財閥支配も、大地主制度も敗戦の悲惨さも全ては旧日本帝国がもたらしたもので新政府が一新すると公言すべきことなんです。その行動に正義をもたらすものが大義なのです。日本中の隅々に旧日本帝国の悪の情報を流して、大義による断罪と関係者の告白による免罪発表で一挙に日本国民を新政府に取り込んでしまえば、「金融緊急措置令」によってお金の足跡は消すことが出来ず身動きも取れない瞬間に相手を仕留めることが出来ます。いたって簡単なお仕事があるだけではないですか。

数字に強く正義感溢れるアメリカに住む日系人と日本人から新生日本に生まれ変わるための官吏採用と特別財務官を採用してはどうですか?どれほど旧日本政府が腐っていたかという事実を以て、彼らからの怒りをアメリカ本国の日本人たちに伝われば彼らの日本に対する思いも断ち切れるでしょう。GHQとしての言葉の壁をこじ開け、誰でもが通れる自由な道を作る先兵としてのアメリカ在住日本人を起用する事でアメリカ合理主義を理解する本当の民主改革に繋がるとは思われませんか?」


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