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「この日本において一番恐ろしい人物と評価されているチャール少将からのご下命とあれば、私見を少しだけ披露させてもらいます。

日本はアメリカと違って個人という存在はまだ育っていません。行動単位は家といっていい。家は家長によって意思が決定され、そこに個人が介入できる余地が非常に少ない。つまり個人としての行動思考が十分に育っていない。これは団体の指導者としては大変指導しやすい。つまり扇動に弱いと言う欠点を持つという事です。

 だから、今回の件は関係者からの告発をタイミングよく発表するだけで思い通りの結論に持って行くことが出来る。もしかするとそれ以上の結果が出るかもしれない。

 現在国民がおとなしくしているのはそれでも配給によってギリギリ生かされている事実があるからですが、それが不公平な配分がまかり通っている事実を突きつけられた時や餓死するほどのものしか配給されなくなった時は暴発する危険性があります。

その時に主食の米は十分な量が配れないがパンをアメリカ合衆国からの小麦で作り安く販売する。

米を悪徳商人と組んで高値で売ろうとしている大規模農家を摘発する。

 共産主義の研究でドイツに派遣した共産主義者がソビエトで行われたウクライナの何百万人にも上る餓死者をスタルヒン主導で計画的に行われた事実を発表出来るように帰国させておく。これは、選挙前には必要なことです。共産主義は軍国主義以上に独裁政治が通りやすく、今の日本以上に配給の有無を左右でき、反抗すればすぐに処刑されてしまう実態を派遣した彼らから発表させることが、現在の自分たち以上に悲惨な国民がいて、それが共産主義の実態であることをレポートした人間がありのままに公表する事実に日本国民は自身を照らし合わせてこの国の未来を考えることになるでしょう。そこにアメリカの暮らしぶりを公表していけば、日本国民は喜んでアメリカに追随することを選びます。」

俺はチャール少将とメイス大佐を交互に見ながら言っていくと、

「Mrシミズ、君は共産主義が嫌いなのかね?」とメイス大佐。

「好き嫌いではなく、誤った基本設定によって構築された理論が人類の歴史に刻み込まれたことが、これからの世界に暗い影を投げかける、あなた達にも防ぎきれない大きな波に飲み込まれる未来を憂いているただの一市民に過ぎません。」

 「おいおい、GHQに対して真っ向から意見が出来る一市民なんておるわけないだろ?」とメイス大佐。

 「利害関係を持たない一市民だから思ったことをありのままに表現できるのです。」

 「で、大きな波とは具体的にはどんなものか教えてくれないか。俺は調べるのは得意だが考えるのは今一つでな、Mrシミズの考えを聞かせてはくれないか?」とメイス大佐。

「ドイツで始まっている分断はご存じだとは思いますが、共産主義が国是となる東ドイツから東ヨーロッパの様々な国からの亡命者が続出する流れが出来ているはずです。結果的にそれによってスタルヒンに取って不都合な情報も多く流出する。情報の統制に神経質なスタルヒンにはそれが耐えられない苦痛として自覚する為、強力な秘密警察構築と臨検が東ヨーロッパで行われるようになる。それでも流れは止めようがないと分かり、最終的には共産主義国家群からの自由主義国家群との世界的国交拒絶、支配体制の違いによる分断が始まるという世界的流れになるでしょう。」

 俺の言葉に反応して、チャール少将は右手指でこめかみをリズミカルに叩き始めた。


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