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 結局、俺とお嬢は日本人には決して知られてはいけない最重要人物として、横須賀基地にて上級将校待遇で逗留することになった。

少なくとも3月4日まではここに逗留しなければならないことになることをお嬢に伝えると、そこまでの長逗留を予想していなかったお嬢は珍しくやや狼狽えた様子をしたため、衣類関係の要望はG2とGSが護衛兼執事として付けてくれたうちの一人、日系二世のメイベル青木少尉にお願いすれば最新のアメリカモードの服や下着まで何でも揃えてくれるから言ってみな。とささやくと、上流階級の娘である仕草と言葉づかいでメイベル少尉に要望を伝え、あっという間に基地のアメリカ人将校の奥方だけでなく日本全般を担当する婦人服の制作担当者がお嬢だけでなく、俺のサイズを計って衣類全般を調達してくれることになったのだ。

 昭和21年2月26日も朝から横須賀基地にはGSとG2のナンバー2が代わる代わるやって来た。もう既に各漫遊機関に対する新札納入先の金額をチェックしているらしい。出来る人間はやる意味を理解すれば行動は素早い。

午前中はGSナンバー2のダラス次長と日本改革メンバーの人間だった。横須賀基地の小会議室で挨拶を交わした後、

「昨日は色々と目も覚めるような話を夕方に持ってきてもらって、夜中まで目がギンギンに覚めてしまって眠れなかったンだぞ。おかげで今日は寝不足だ。若いのも一緒に連れて来たから、お前の引き出しから目も覚めるような話を一つ頼むぜ。」とのっけから要求のハードルが高いダラス次長。

メイベル少尉が会議室内の人員にコーヒーを配っている。朝から飲むコーヒーは格別であるが、気を引き締めて室内のメンバーを見渡す。正面に座るダラス次長は50代半ばの額に深いしわが印象的な鷲鼻のアメリカンだ。ファイターベル大統領の下にニューディール政策を行ってきた経済通でもあった。その為「金融緊急措置令」のいかがわしさとそれに乗じた膿の切除を図る俺の策の有効性を一目で見抜き絶賛した人物でもあった。その隣はカーディナル少佐という30~40代のどこかの先生のような雰囲気をした背の高い痩せた男であった。右手側のテーブルには横須賀基地の参謀のような人が座り、左手側にはメイベル少尉が一番端に座るようだ。もちろんお嬢は俺の左隣に静かに座っている。不気味である。

「ネズミ一匹逃さぬ手腕ありがとうございます。これで日本帝国に巣食っていたネズミをようよう一網打尽にして、新民主国家としての確かな礎を築けます。そこで新国家において一番重要となるものが何かと言えば私は人民であると答えます。各個人が権利と義務を負って自由で民主的な国家運営が可能になる為には、各人の自立を促す強力な法による制御と国家の制度としての制御が必要であると。法による制御はアメリカが最先端でありお任せして大丈夫と考えていますが、国家の制度としての制御については新しい機関を創設する事を勧めます。」と俺は予想外の話をし出した。


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