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 昭和21年2月25日 早朝に堺基地を飛び立った俺とお嬢にミッチェル准将と参謀のヘルメス中佐を乗せた飛行機は無事昼前に横須賀基地へ降り立つことができた。ジェット旅客機には何度か乗った経験が前世ではあったが、空の上でのプロペラ軍用機は何とも胸のムカつくような嫌な感じがあり、飛行機乗りである俺としては飛行機酔いを発生する訳にはいかない為、平静の表情を保つのが実は大変な状況だったのだ。一応周りの人はこれからの会談のことでやっぱり「シミズ」ですら緊張するのかという認識を持って静かに対処してくれていたので助かったが。もっとも、お嬢はケロっとして初めての空の旅を楽しんでいた。さすが体育会系である。

 横須賀基地で簡単な昼食を取った後、すぐさま丸の内にある大国生命ビルのGHQ本部へ向かった。この幹線道路は瓦礫が綺麗に撤去されていて快適なスピードのまま本部ビルに着くことになった。

 会談の時間まではまだ多少余裕があったため、俺とお嬢は小さな部屋で休憩し、ミッチェル准将とヘルメス中佐は挨拶と打ち合わせの為に別行動となった。

「代表、今日は静かですね。さすがに代表でも緊張されることもあるんですね?」

「色々な状況を考えるとな。」ともっともらしく答えておく。

「でもまさか特攻隊員が飛行機に酔っちゃって、青白い顔になっていたなんてことはないですよね?」

ぎょっとした表情が一瞬よぎったのを見逃すお嬢ではなかった。

「やっぱり、そうだったンですか?」

「魚捕りには自信があって、漁船で毎日隊員に新鮮な魚を調達するのが俺の役目になっている間に戦争が終わっちまったことが、運命の分かれ道だったようだ。この話は誰にもしてないから、言うなよ!」

「ガッテン!承知の助です。」どこまでもマイペースなお嬢であった。

時間が過ぎ乗り物酔いを克服して、万全の体調になった時に会議への呼び出しがきた。お嬢も一緒に行っていいとの案内役の兵隊が不愛想に告げたのは、きっとミッチェル准将が俺の平常心を促すために手助けしようと気を利かしたようだ。確かにお嬢がいると何となく落ち着く事は間違いない。

階段を上って3階の小会議室のような場所に案内された。そこにはそうそうたるメンバーが揃っていた。現在の日本を牛耳る軍人たちだ。

 部屋の一番奥の机にマックバーガー大将が一人座り、右手側の長机には苦虫を噛み締めた様な渋い表情の50代の男が2人、今にも噛みつきそうだよ。左手側の長机には60代と50代の表情が幾分柔らかい二人が俺たちを興味深そうに見ている。

 入り口側に設けられた机に座っていたミッチェル准将とヘルメス中佐が俺とお嬢の座るべき机の位置を指し示し、俺は裁判の被告人席のようなマックバーガー大将と向き合った位置に設置された机に、お嬢はヘルメス中佐の横に座ることになって、いよいよ歴史を変えるための会談が始まることになったのだ。


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