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 堺基地から大田村に帰る途中のトラックの中で

「代表は怖くないのですか?全ての日本人の生殺与奪権を握っているGSやG2の本部に出向くんですよ。」

常にない言葉遣いで俺に聞いて来る。だけでなく、俺の袖を握るところから小刻みな震えが伝わる。失礼なことに、あれ!意外としおらしいところあるジャン!と思ったことは内緒にしておこう。

「お嬢、俺は予科練に志願して行った時にもう死んでいる。だから怖くないとは言わないけど、覚悟は出来ている。今からやることは死んでいった人々の存在を価値あるものに変える為に誰かがやらなきゃいけないことだと信じているからやるだけのことなんだ。それがたまたま俺になったと言う巡り合わせなんだろうね。」

 多少かっこつけたよ。昭和の石原裕次郎風に!まだ世に出てないけど。けれどお嬢は俺の言葉に野獣のような直感力をもってかっこづけの匂いを嗅いだのか、無言で肝臓を打ち抜いた。

 痛いから体育会系はやめようね!


 とにかく、東京に行ったらいつ帰れるかわからないから、仕事の段取りをつけるのが大変だった。しかし、こういう事態がやって来る事は前々から予想していたため、事業部の代理責任者をそれぞれ決め成績や事業進展状況を評価してボーナスを支給する環境を整えていたことにより、たいした混乱なく、逆に自分の手腕によっては大幅なボーナスを期待できると喜ぶ人物も相当数いる、能力次第の下剋上時代が早くも大田村商事においては訪れていたことが幸いした。

 「金融緊急措置令」は概ね村長以下役場の職員には予めの対処法を教えてあるし、分からないところは五陵君に相談するようにと言い置いた。もちろん五陵君にはこの度のことを口止めの上告げることにしたが、驚いて口が塞がらない様子が電話から伝わって来た。

「食糧緊急措置令」については何か困ったら堺基地のベーカー大尉に相談するように村長にお願いした。英語が堪能な人材が大田村商事に何人か勤めるくらい成長著しい企業となった証か、もしくは有能な人間であってもインフレ不況が酷くて雇う企業がない状態だからか。取り敢えずうちのような中小企業に取っては絶好の人材補給の時期だった。最後に大田村の重鎮たる大田の爺さんには挨拶をして、GHQの本部へ向かう旨を伝えたところ、

 「好きなようにして来い。」との全てを見通したような発言をもらいこの爺さん何者なんだと俺が驚かされた事は内緒にしておこう。

香奈子お嬢様には「この度の東京行はひょっとすると帰ってこれなくなるかもしれないから俺一人で行く」と言ったら、

 「これほど面白い見世物はうちの生きている間に二度とは巡ってきーへんえ!代表のえげつない話聞きはったGHQの皆様の顔を見れるのは、今しかおへんえ~。すかたんゆわんと、うち連れてき。」

と言葉は柔らかいのだが、俺の右腕をきめながらする話とちゃうやろ!結局お嬢はボディガード枠にて連れていくことに決まった。


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