75
「GHQは日本人の心を変えようと思っているはずだ。けれど、GHQとしての上からの告発ではみじめな敗戦を痛感している日本人に取っては反発心しか起こらない。しかし、日本人全体をだまして、自分たちだけがのうのうと暮らしている軍人、役人、財閥などがいる。しかも死なずに済んだ多くの人を無意味に自分の保身のために見て見ぬふりをしていた。この事実を日本人全体によく分からせることが出来れば、日本中の人間は今までの日本を支配していた人間を許さないし、決して信用する事は無くなるだろう。
一見荒療治に見えるが、公正な立場でGHQがこれらの事実を日本人内部からの告発として発表して、この日本では真実を隠し、虚偽の報道は許さないという姿勢を示すことがGHQにおいてできるなら、どの様な改革であろうと日本人は受け入れる。これは歴史的民族性の性質と言ってよいからだ。但し一つだけ忘れてはならない事は、食べ物についてはどんな手段を講じても十分な量を確保しなければ日本中の争乱要因になりかねない、という事を肝に銘じなければいけないという点です。」
「Mrシミズの話は面白い。しかし、そんな手段に出れば日本中が混乱に陥り、フランス革命のような状態になってしまうのではないかと心配する向きもあるのではないか?」とミッチェル准将。
「大丈夫です。日本人にはもう革命するようなエネルギー残ってません。但し、復興する為には怒りのエネルギーがあった方が早くできるというメリットがあります。特に旧来の政治、経済、軍事、文化、精神的なもろもろの仕組みを一挙に作り変えてしまうには旧来の代表的な人物のアラを全てぶちまけて、悪の象徴のようにしてしまう事が一番簡単に変化を受け入れる下地を作れます。これは世界の歴史が示していることです。それと、斬新で世界の主義を変えるような考えもありますから、大丈夫です。」
俺が自信たっぷりに宣言すると、その場にいる一同全てがその大言壮語に呆れるような、面白がるような反応を示した。特にお嬢、その嚙みつくような凄いまなじりで睨むな!怖いだろ。
ミッチェル准将はとても面白そうに
「Mrシミズの持っている斬新な腹案とは何か教えてくれるか?」と尋ねて来た為、
「この案はGS、G2及びそれらを統括している人々に話をして、練り上げたうえで紹介できればと考えております。」と答えると
「ヘルメス中佐、早急にマックバーガー大将に面会できる日時を調整して欲しい。 その際、GSのヒューストン局長、ダラス次長、G2のチャール少将も同席願えるように手配してくれると手間が省ける。堺から面白い男を連れて行くから、楽しみにしといてくれとの伝言も忘れずに伝えるようにな!」
結局、あれよあれよと言う間に再度のマックバーガー大将との面談だけでなく、日本の実験的改革に熱意をかけているGSや日本人が最も恐れる諜報、保安、検閲などを任務するG2の代表者と面談することが決まってしまったのだ。恐らく俺の前身も調べられるだろうが腹をくくる以外どうしようもない。覚悟を決める時が来たようだ。




