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 俺の言葉を聞き、これほど愉快な見世物は無いというような感じでニコニコが止まらないミッチェル准将は

 「どういう仕掛けになっているのか、時間はゆっくり取ってありますからMrシミズの話を心行くまで聞きましょう。」と。

 

「先ず最初の話です。日本がこのような経済状況になった原因は何故だと思いますか。第一次世界大戦後のドイツが陥った最悪の経済状況に大変似ています。あの時のドイツは戦勝国から莫大な戦時賠償を課せられて国家予算の何百倍もの大量の紙幣を発行するする羽目になったことが、悪性インフレの原因だったと後世の経済学者は断定し、この日本で再発するのは統治にとって良くない事として、極力戦時賠償を求めることをしない方針をGHQは持っていると伺いました。」

 ミッチェル准将とヘルメス中佐に俺が視線を向けると、

「確かに、Mrシミズの話すとおりです。」とヘルメス中佐。

「ところが、いざ占領統治に取り掛かったら悪性インフレが日本に蔓延しかかっている。GSの皆さんはさぞ予想外の展開に戸惑っているのではないですか。こんなはずではなかったと。」

「Mrシミズは千里眼なのか?まさに局長のヒューストンにしても次長のダラスにしても会う度にその様な愚痴をこぼしておったな。」

そんな内情は部外秘にも拘らずミッチェル准将は面白そうにうそぶく。

「GSの言っている事は真っ当なことです。通常戦争が終われば物価は落ち着いてきます。という事は、物価を押し上げている人為的な事が起こったという事を示唆しています。何故か日本銀行は昭和20年8月15日から不眠不休で紙幣を印刷し続け始めました。

 それは軍人と軍企業や関連企業にあるこの戦争によって発生した国家予算の何百倍にも達する膨大な債務を敗戦政府が勝手に支払うために必要だったからです。日本と言う国を戦争に追い立て、日本国民の膨大な血を啜った挙句にその財産まで奪い去ろうとする国賊がこの日本では大きな顔をして、より一層肥え太っているのです。

 この根幹を断ち切らない限り真の軍国主義の放棄はなく、政治・経済・文化・精神の全てにおいて日本に平和を愛する心を根付かせることが出来ない事をしっかり認識しなければ、必ずGSの改革は中途半端で挫折することになります。」

 今までMrシミズとして使うことのなかった厳しい口調の先にある膨大な日本の暗闇を指している事に気づいたミッチェル准将は一転して困難な作戦を前にした司令官の顔つきになっていた。

「それでMrシミズはそれに対してどのような処方箋を持っているのかね。」

およそ作戦行動の考えを聞くには場違いな表現をしたミッチェル准将は鋭い目つきで俺を睨んで言った。ヘルメス中佐もベーカー大尉も固唾を飲んで集中して聞いている。お嬢は変わらず俺の肝臓を打ち抜きながら「いてこましたれ!」とハッパをかける。お前は何処の人間や!


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