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  昭和21年2月10日 何やかやあって、本日も忙しくしていたな~と詠嘆の背伸びをしていたところに、ラジオから恒例の懺悔の夕べという番組が流れて来た。最初は誰も出演した人物の語る話が現実とは、国内にしか住んでいなかった日本国民に取っては嘘であって欲しい内容の言葉であった。しかし、大陸からの帰還者が増えてくると、ラジオから流れてくる日本兵の行った野蛮な行為を絶対命令の下、泣く泣く無実だと分かっていても女も子供も赤子であっても容赦なく殺さなければならなかった現実が、多くの兵士の心に住み続けて、いつまでたってもうなされている現実があった。

 部隊名や強要した上官は実名を出してもよく、自分の名前は出さなくても良かった為、時には聞くに堪えない様な残虐非道な行為であっても、心情を吐露しない限り終生自分の心が救われることがないと諭す神父によって心の堰が決壊するように話し出す者も多かった。

 後にこの番組は日本の良心と呼ばれるようになった。話した人間はその行った行為を免責ないし軽い罪にしか問わないという進駐軍からの声明があり、戦争犯罪の摘発に多大に貢献する事が理解できたからという現実的利点を肌身に感じたからだろうが。

 さらに多少の食料品のお土産までもらえると分かって出演希望者が目白押しとなるとは、進駐軍によって無理やり企画させられていた番組担当者も驚いたとの話まで伝わって来た。

 この番組によって、日本がしてきた大東亜共栄圏という話が実は軍事的弱い他国を侵略して植民地を作る為、軍部が話を作り徴兵と増税によって何も知らされなかったというよりは嘘の情報を信じさせられた国民が一部の権力者によって幻想の中、長い間踊らされ続けてきたという事実を突きつける発端となった。

 番組の中で神父の言った発言も日本中の国民を怒りに火をつけた。

 「日本の参謀本部に勝利の可能性が全く描けなくなった沖縄陥落後直ぐに、日本が降伏すれば100万人以上の死傷者が少なく領土も無駄に失うこともなかったのではないか。軍部や指導者が権力の座を失い責任を追及されることを恐れて決断できなかった罪は深い。」と言ったからだ。余程腹立つことが有ったのかもしれない。

 発言した神父は番組は降ろされることになったらしいが、後の選挙で見事国会議員になったとか。分からないものである。

 話が横道に逸れてしまった。

 懺悔の夕べを聞きつつ、ここ最近精力的に戦災孤児たちの本来受け継ぐべき地所を確保するという作業を推し進めた成果が上がって来た。戦災孤児の実に65人が土地持ちになったのだ。保全処理をしなかった場合ほとんどが簒奪され何も残らなかった未来しか見えない。特に登記所そのものが焼失した場合は、力の強いものが奪って行っても咎められることがない混乱の時代である。正に力こそ正義の時代であった。

 ポンポンと軽く肩を叩かれる。見上げると書類の束を持っていい笑顔で

 「残業お願いします。」と言う、目力を利かせたお嬢様がいらっしゃった。

 「はい!」そう答えるしかない。力は正義なのだ。


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