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結局イベント前日の1月19日に堺基地に泊まることによって遅刻を防ぐ方法となった。とにかく目力お嬢のマックバーガー大将とどんな話をするのかゲロせーよ。との苛烈な取り調べをかわして、話は成り行き任せになるからどんな話になるのか今からは見当もつかないと煙に巻いておいた。俺から話を振るわけにはいかない立場ですから。何か胡散臭いものを見るような眼で見るな。全く!
しかし、中々面会の時間が巡ってこない。考えて見れば遊びに来ているわけでは無く、膨大な決済業務も兼ねて、下向しているのだから仕方ないのだろう。特に今は日本をどういう方向で再建させるか、長い将来を見据えて国家の基礎を立てる最も重要な時であり、今を逃せば規定できない限られた条件を付けることが出来る稀有の時であるともいえる。後世の人間からすれば当たり前に受け止められる条件が軍国主義者だった者からすれば屈辱的条件であり到底飲めない条件であっても、敗戦の今であれば飲まざるをえない条件。
民主的な自由な人間を育てる制度、責任を伴った権利の構築。
軍国主義、国粋主義などの偏った価値観で教育されて来た人間の矯正。難問であった。
マックバーガー大将に取って天皇制はカソリックのローマ法王と同じところに置いておくことが一番落ち着く落としどころであった。
マックバーガーの悩みの一番の問題は日本人の考え方が理解できない部分が多いことであった。四六時中薄ら笑いを浮かべている顔を見るだけで、こいつ一発殴ってやろうか、と言う気にさせる態度。殴らないけど。
日本人の官僚は意見の表明がどの様な答えも持っている曖昧な回答しかしてこないし、実際にやらせて見ればこちらの意見の反対に近い行動しかしない場合が結構ある。その為最終的には恫喝して意見を聞かせるしか方法がない状態なのだ。
最近では自分の眉間のしわがより一層深くなっているのが分かる、毎朝鏡を覗き込む度に確認することが日課となってしまった。
「マックバーガーよ!お前は常に優秀で、軍学校でも常に首席であった。しかし、日本を破り意気揚々とこの国に入ったが、何故この国はこんなにも貧しいのだ。表面上を取り繕っている役人どもばかりが大きな顔をしている。全くこの国に住む日本人の本当の姿が見えない。どうすればいい?」そう自問自答するがどことなく本質をとらえ切れてない手段しか思いつかず、胃が痛む。
本日は、日本の現況をとらえるとの名目で堺基地に気分転換でやって来た。ミッチェルから面白れぇ野郎がいるから、憂さ晴らしも兼ねて大阪に遊びに来ないかとの誘いを受けた為、たまには羽を伸ばしたらいかがですかと言う副官の勧めもあって、仕事を一時休止にして年始休暇を兼ねて堺基地を訪れることになったのだ。
休みと言っても在阪の部下たちをねぎらいの意味を込めて話を聞かなきゃならんし、褒めてもやらなければ気持ちよく仕事してくれないし、頭禿げないように適当にやるしかないか。




