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昭和20年9月25日 米軍は上陸用舟艇で和歌山市に上陸し始めたとの連絡が入る。すぐに役場に関係者の集合を要請。取り合えず大阪に向かう街道沿いに白旗を持った人と簡易テントを張り、冷やした紅茶やイカ焼きやアジの干物焼きなどの屋台を出して食欲をそそる様な匂いを辺りにさせて進駐軍の到来を待つことにした。

ここにいる人間は村の中でも特に人畜無害の雰囲気持った老人、子供と村長と応接の村役場の人と俺が担当することにした。

やがて準備完了して一時間もたたないうちに遠くの街道から濛々と土ぼこりを立ててジープの車列こちらに向かってきた。


進駐軍のジープは我々が白旗を振っている屋台のところまで来ると何やら物珍しい物を見るような感じゆっくりと停車した。

「It’s pleasure to meet you.」 (お会いできで光栄です)

「I’m fine.」 (どうも)

「I can speak a little English We will ask for your request.」(英語は少しだけ話せます。どのようなご要望がありますか。)

「We are the advance guard of the United States Army’s Sixth Army.」(我々は米国陸軍第六軍の先遣隊だ)

「A squad will be stationed in the village to ensure our safety.」(我々の安全確認のために一分隊をこの村に駐留させる)

「Also ,could you give me any information about road ahead?」(それからこの先の道路の情報があれば教えてくれんかね)

「I understand . There is a detailed map at the village office.」(分かりました。村役場に詳細な地図があります。)

「It is around lunchtime, so we will prepare a light lunch for everyone at the town hall. Please enjoy. 」

(時間も丁度お昼頃になりましたので、役場で皆様の簡単な昼食をご用意いたしますので召し上がってください。)

「Hold on a second, I’ll talk to the lieutenant.」(ちょっと待ってくれ、中尉と相談してみる。)

結局彼らは我々の申し出を受けてくれたので、俺と村長は用意していた自転車で先導して村役場の庁舎まで走った。村役場の前はしっかり打ち水がされており、砂ほこりが立ち上ることなく、涼し気にジープを迎えた。更に、役場の人間全員が整列して米兵を拍手とアメリカ国旗で迎えたため中尉を含め先遣隊の米兵全員が戸惑ったような顔の表情を浮かべていた。 先ずは全ての机と椅子を片付けて役所の一階のフロア全部にテーブルをセットして、先遣隊全員が座れるようにして新鮮な魚の天ぷらや鶏のから揚げ、匂い立つ焼き鳥、南瓜のポタージュと俺の得意料理を披露した。アメリカの料理は昔から量があればいいという大味な料理が多い。繊細で奥の深い現代日本料理から抜粋した料理は彼らの胃袋を完全に掴んだ。後に、アメリカ兵の語られる日本の伝説として大田村が出現した瞬間であった。

 食後、ランセル中尉は俺から何枚もの大阪、京都、神戸などの詳細な地図を渡され、役所に集めた銃器、刀剣の封印と目録、駐屯に際する将校の家屋及び兵士の簡易宿所、最後にこの村を訪れたことを記念して、村人に提供してもらった浮世絵や日本人形に将校の人には奥様のお土産に日本の振袖を受け取ってもらった。戦いの時代は終わった。我々ははるばる日本にやって来た遠く離れた客人を持て成す気持ちであなた達に接している。客人として、善き隣人として日本の未来をよろしくお願いします。と言ったら、ランセル中尉は涙を滲ませて俺に握手をしてくれた。こんなに気持ちいい占領民ばっかりだったら世話ないだろうけど、最後に日本人の中には妻子や夫が死んだ人も多いから、気を付けてください。と言ったら承知していると厳しい表情を始めて見せた。午後三時には一分隊ジープ一台8人だけが大田村に暫定駐屯することになって、残りは大阪へ向けて侵攻していった。


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