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 実際は様々な事案をミッチェル准将と話し合ったが大変有意義な時間として准将に認められることになり、双方に利益のある時間となった模様だ。ミッチェル准将は事あるごとに「日本には世界の未来を予見する稀有な若者がいる。我々戦勝国も彼の話に真摯に耳を傾ける必要がある。勝って兜の緒を締めよと日本のことわざもある。」と俺の事を話の引き合い出していたらしい。

全く迷惑な話である。

 俺はというと忙しい。堺基地にはジョンソン神父と新聞記者のリックがいて戦災孤児の件で打ち合わせをしなければならなかった。

 もし、俺が介入しなければ恐らく保護下にある大半の孤児は生き残れなかっただろう。なにしろ、世紀の美女と呼べる程の篠原姉妹の存在は令和時代の俺の調べた戦後史の記録の中では一切残っていなかった。新聞にも時々戦災孤児の死亡者が毎日何十人といるという記事が取り上げられている。自分が生き残るだけで精一杯のこの時代で戦災孤児の面倒まで看られる人はほとんどいない。彼らが生き抜くためのシステムを何とか作り上げたい。俺がこの時代によみがえった意味がそこにもあるように思えたからだ。

 リックの写真と俺が構成した戦災孤児を援助するための基金への寄付と定期的報告付き個人への教育育英基金の寄付を紹介し、それぞれ篤志家に寄付を募るパンフレットを教会を通じて広く募集する為にジョンソン神父に教会本部への働きかけをお願いしていた。

 ジョンソン神父も想像以上の都市の廃墟を目の当たりにして、心を動かしてくれた。しかも、今後に繋がる布教活動付きで、全米に幅広く自分の名前が売れるという特典付きでもある。特に目玉の篠原美鈴と百合の姉妹は日本のプリンセスと表現しても全くの違和感を覚えない程の凛々しい美しさを持っている。後十年も経てばどれ程の美貌を持った女性に成長するのか。知性を煌めかすのか。誰もがため息を吐いて想像させるほどの魅力が彼女らにはあった。

 悲劇のヒロインが存在する、しかも絶世の美女に成長していくであろう少女を基金のシンボルとしている。誠実に対応するだけで成功するであろう。もっとも、さらに別の施策も行う予定であるのだが。

ジョンソン神父もこの育成基金の成功を確信していた。アメリカにおける上流階級の弱者救済の精神と戦争による荒廃の中に放り出された戦災孤児を救いその感謝の心が現実に手紙として反映するシステムは今までにない画期的な目に見える感謝の気持ちが寄付をした寄付者自身に返って来るものであったから。そして、それを仲介できる一人として自分にも多大な恩恵が返って来る。ジョンソン神父の未来は明るいらしい。アメリカ本国の教会関係者に熱心な根回しをしていて、順調に展開しているという話であった。

 俺の作った原文と写真の組み合わせをジョンソン神父は絶賛してくれたが、印刷状態の悪い日本で作るより、アメリカ本国で印刷と最終校正を行った方が良いとの提案を受け入れて、俺はジョンソン神父にアメリカ向け寄付募集パンフレットを写真ネガごと渡してお願いすることになった。


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