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 俺とラスカル少尉の交友はそんな会話を積み重ねながら深まり、気が付けばあっという間にラスカル少尉の大田村の駐屯の日々が終わったが、その後もラスカル少尉を通じて堺基地に在籍していたハワイ在住の日系二世少尉ジミー沢田やカリフォルニア在住の日系二世少尉ディロン堀川などの日系アメリカ兵と多く懇親を深めるきっかけを彼は作ってくれた。

 最悪な印象による日米開戦の影響はすさまじく、何十年もかかって積み上げて来た信頼と実績と共にアメリカ在住の日系人は、ほとんどは全ての財産が没収され又は捨て値のような値段で手放さなければならなくなり、アメリカに忠誠を誓いアメリカ軍に応募するもの以外は全員収容所に送り込まれた話を知っていたので、先ずは個人的に日系人には大変な迷惑をかけたことを謝ってから彼らの話を聞くようにしたところ、日系人の誰もが驚きを持って俺を迎い入れてくれた。

 日系米兵のほとんどが日本人から裏切り者の様な目で見られており、アメリカ本国でも軍人であっても蔑視の視線によくさらされる現状があるという。彼らは自身の血を流すことで少しでも日系人自体の待遇改善を図るため、アメリカ人として見てもらえるために過酷な任務を熟すことが強いられたのが日系米兵である。と真剣な顔で話す。

 俺自身日本の軍人や帝国主義という宗教に感化された信者によって暴走した日本全体が加害者となって、アメリカ日系人の生活を破壊した責任があると話し真摯に謝罪した。

 そのようなことを話す日本人は初めてであり日本に来て胸のつかえが漸く取れたと多くの日系米兵から感謝されることになった。

 俺は今後大田村の事業の一部を海外展開する予定であり、手伝ってくれる人材がいるなら紹介して欲しいとお願いしたところ、誰もが本気にしなかったが皆笑って「シミズの事業なら何時だって喜んで手伝うよ。」と言ってくれた。

そう、日米戦争のとばっちりで貧乏くじを引いたアメリカ在住の日系人を積極的に応援する意味と日本に対するイメージの回復を図るためにアメリカでの事業展開は彼らを使おうと決めていたのだ。

 彼らこそ義理堅い日本の良さとアメリカの合理主義に折り合い着けて生きて来た人間だから日本人種蔑視の苦難を超えて未来を一緒に拓く力を結集できる仲間になれると俺は思っていた。

事実彼らは後々大きな力となって、俺の事業を飛躍させる原動力になった。

とにかく、堺基地のアメリカ兵とは結構多くの人が俺を見知ってくれた関係で、いたるところで声を掛けられるようになったことは嬉しいことであった。


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