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俺はラスカル少尉の表情に考え込むような眉間のしわを見ながら話を続けた。
「アメリカ政府は独裁者としてのスタルヒンの中国に対する欲望には政治的・経済的・軍事的要素から勝てない。
後続の朝鮮戦争はアメリカとスタルヒン・ソビエトの代理戦争という様相となり初期には人的資源を圧倒的に持つ中国共産党が同盟国として参戦し南朝鮮への席捲が推測出来できる。
しかし、スタルヒンは決して表には出て来ない。アメリカが朝鮮・中国に対し新型爆弾を使うかどうかを見極め、自らに火の粉が降りかかる様な立場に立つような愚かなことはしないはずだから。
一方アメリカは顔に泥を掛けられるような行動に対しては、何が何でも軍事行動を起こさなくてはならなくなり、不利な立場で激戦が予想されても乗り出すしかない状態になると思います。結局、相当数の死者が発生してもアメリカは戦争を継続する流れとなるでしょう。
ひょっとしてそんな状態になってしまうと、除隊が効かなくなりますし、あなたを失ってしまう可能性まである。あなたは私の大切なパートナーであり、私は世界中を駆け巡る商売を一緒にして欲しいと思っています。」
「俺にはよく分からんが、シミズは色んなことを考えるんだな。お前が日本軍の参謀でなくて本当に良かったよ。しかし、お前の言うような状況になったら、アメリカとしても引けなくなるじゃないか。という事は俺も結構危ねえ状況になるかもしれん。
もう戦争のタネが無くなるからのんびり軍隊生活しようと思っていたが、命あってのものだねだ。なるべく早く除隊するように考えてみるわ。何よりお前との商売はワクワクするほど面白そうだしな。」
「そうですよ。これからの戦争はますます人間味が無くなって行きますから、足を洗うなら早い方がいいですよ。世界を相手に商売して儲けていった方がよっぽど面白い人生が待ってますからね。
商売のネタはまだまだありますし。俺と組んで暴れまわることを楽しみにしておいてください。」
「そりゃ確かにいいね。戦争はやっぱり性に合わねえからなぁ~楽しい方がいい。頭が良くて信じられる人間でその上夢まで見せてくれる男なんて、シミズくらいしか見つかりそうにねえか。」 ラスカル少尉は右手で痛いくらい握手した。




