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「分かりました。 少なくとも大部分のアメリカ人は日本の事を狂犬のような武装強盗団であると認識している。その大きな理由として、宣戦布告もしないで突然真珠湾を襲い艦船と多数の市民殺傷した。戦争における宣戦布告を蔑ろにする列強国は存在しない。
闇討ちで行動する国は最早強盗団と何ら変わりない。その行為の結果によって無差別の空襲や新型爆弾の投下に国としての痛痒を感じなくさせた部分もあるように思います。
更にもう少し終戦が遅れたら、京都に新型爆弾を落とされていたかもしれない。理由は一度も空襲されていない都市に新型爆弾を落とせば正確な威力を測定できるとか。新型爆弾を開発した責任者が強く主張していたとの話も漏れ聞こえてきたようです。
それもこれも全て武装強盗団としての日本がアメリカに認識されていることに起因していると感じています。
日本国として宣戦布告なき真珠湾攻撃について正式に謝罪するとともに、同時に日本国内で罪もない婦女子や幼児がどれ程無差別空襲にやって焼死しているかをアメリカ本国に知らしめて、アメリカ国民のちょっとやり過ぎたんちゃう?という気持ちと民間人の贖罪は済んだという幕引きを図り、このような事態を招いた軍部及び官僚に対する徹底的な責任追及を行う姿勢を国として行わなければ、卑怯な国家としての日本、及び日本人に対する印象が長くアメリカ国民に根付き日本の国益を著しく損なう結果となるでしょう。
「Remember Pearl Harbor」この言葉を五陵さんは知っていますか?」
「いや、初めて聞きましたが真珠湾攻撃のことですか。」
「ええ、「リメンバーパールハーバー」はアメリカが日本との戦費を調達する際にこの戦争の象徴としてアメリカ国民に広く知らしめた言葉なのです。日本は宣戦布告もなくいきなり真珠湾を襲い多くの市民や軍人を殺した。この事は全ての人が銃を持つことが出来自分が襲われた時は、まず自分の身は銃でもって自分で守る国民性からすると強力な武装強盗団にいきなり町が襲われている状態と同じ感覚に感じられたのでしょう。アメリカ国民は激怒した。非合法な日本と日本人を許すな。
「リメンバーパールハーバー」にはそう言う意味が込められている。
大義はアメリカにあり、アメリカが正義なのだと。
「リメンバーパールハーバー」戦後長くアメリカ国民の心の中に留まりアメリカ国内にいる日本人や日系人を見るたびに繰り返し投げつけられる言葉です。それは日本人は卑怯な闇討ちを得意とするから決して油断するなという意味が込められ、やっつけてしまえという意思を表した主に白人至上主義者や中層から下層のアメリカ国民が日本人に対して好んで使う言葉です。こう言った反感を持つ言葉は早く丁寧な対応で拭わなければ何十年も生き続けるものです。」
「今いるほとんどの日本人は真珠湾攻撃を正当な奇襲攻撃として賛美しているから、それが卑怯な闇討ちであったと国際的に評価されている行為なのだとしたら、その事を広く国民に知らせて、軍部と官僚はその責任を認めさせなければならないはずだが・・・そんな事する訳ないか。敗戦の今は両者とも責任逃ればかりが目に付く。」と五陵。
「そんな人間ばかりだからアメリカ国民から信用されない。もともと多民族国家のアメリカは個人的な繋がりを重視します。自分の目で見て信用するか決める国と言えます。だから、私は日本国と立場を一線引いて個人の立場で行動する形になると思います。」
俺がそう五陵君に言うと彼は俺の右手を握手して
「清水さんと知り合えて良かった。日本国民には軍部や政府から大事なことは何も知らされていない。知らないままで進駐軍と真摯に向き合い付き合おうとしても、肝心の出発点が誤りならば、真の交流は望めるはずがない。私自身がこの混乱した時代をどう生きていくか迷っていたが、何やら道が見えてきたように感じます。」




