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終戦直後の混乱時代はどん底と希望の時代

翌日早速、俺は鈴木さんに連れられて村長のもとへと役場にやって来た。鈴木さんの話に村長の顔色は見る見るうちに白くなり、直ぐさま関係者を集めて会議を開くことになった。普段ならとても偉そうな警察署長や特高の人は出来るだけ目立たないようしおらしくしていた。こいつらは何時だって肝心の時に使い物にならない。と俺は心の中で断じていると突然、村長から俺に「米軍対応をどうしたらいいのか。」という問いかけがあった。

 俺は史実が米軍の関西進駐が和歌山に始まった事を知っていたから、後付けの推理で「米軍の艦船が瀬戸内海は機雷で埋め尽くされ危険で、大規模な上陸部隊での和歌山制圧後、大阪への進駐を考えられることと駐屯地は堺にある陸軍の基地がなるだろう。」と予想を言った。

警察署長も特高の担当も胡散臭そうに俺を睨みつけていたが気にせず、「この村は侵攻路の重要地点であり、何かの不祥事があった場合は、関係者はただでは済まない事になる。」とさらに断言すると二人とも顔色が変わっていた。

 「今必要なことは、なるべく不祥事が起こらないように、不祥事の元を排除しなければならないこと。例えば米兵に危害を加えようと計画する者、また米兵が乱暴するような見目麗しい子女や婦人を米兵の前に出してはいけないこと。また安全確認するための先遣隊や治安維持部隊の宿泊先や、米軍の高級士官が宿泊できる宿を整えることが必要になってくる。場合によっては占領接収という米軍の伝家の宝刀が繰り出された場合、摂取された家屋の人に対してどう村で対応するのかを決めておけば無用な不祥事を抑えることが出来るでしょう。

事件が起これば村そのものが無くなる可能性もあるのです。」ここまで俺が言うと会場は騒然となった。

 「先ず早急に探さなければならない人としては米国語を話せる人で、米軍将校と交渉する度胸のある人を見つけることが一番肝心なことになります。次に山奥に婦女子の避難所を早急に整えること、炭焼き小屋として炭を作っていてもらえば後々きっと役にたつと思います。手配してもらうものとすれば、大田村から大阪に向けての詳細な地図がたくさん欲しいです。彼らは軍事侵攻の一環として作戦を立てているはずですから、詳細な地図は喉から手が出るほど欲しいはずです。日本国は降伏して、国民も戦いはもう望んでいなくても、米軍にとっては日本人が不気味な存在で何を考えているのか分からないと思っています。ならば協力できるところはとことん協力するべきです。意地が張りたいなら、和歌山に上陸する米軍に向かって「天皇陛下万歳。」と叫んで突っ込むべきです。後ひと月も和歌山で待っていたら必ず米軍は上陸してきます。そこでなら、大田村には一切迷惑は掛からず、南洋諸島でも、沖縄でも、無数の兵士が米軍に突撃していったものと同じです。それが日本人としての立派な意地の通し方だと思います。もっとも、今では国賊として裁かれるでしょうが。」話している間に考えていたのだが、よく考えると俺はこの集まりの中でも精神年齢は一番高いんじゃないかと思ってしまった。

精神的圧、パネェ。村の皆は飲み込まれたのか金縛りに合ったかのように身じろぎしなかった。

 会議が終わる頃には、満場一致で村の全権代表として俺が矢面に立つことになってしまった。


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