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大田村は食糧品生産を大幅に増やすこととGHQに食品提供する対価にアメリカ産の余剰穀物を輸入することを目指す。それによって食糧不足の解消を図る。
しかし、預金封鎖、新円切り替えとなれば、著しい通貨の供給が不足し経済の混乱は免れない。だから今は余分なお金は全て物に替える。物を生産する機械等の資本財や船、漁具などの資材、輸送トラック、大規模な鶏舎と鶏に資金を集中することが大事であると思います。
村の事業としてお金を集め、年間30%位の利息設定で毎月利息を支払う設定であれば預金封鎖があっても村から新札を配ることができ、出資者も村も利益を得ることができます。募集債は12月中頃を締め切り予定で行いたいと思っています。
今は誰よりも早く行動を起こす者だけがこの混乱を乗り切ることが出来る時代です。この村がいち早くGHQの内懐にもぐりこんだからこそのこの村の平安と未来があるのです。」
そう言って俺は皆を見回した。誰もが真剣に考えている。間違えば全てがご破算になるかもしれない。一方今の大田村の繁栄と平和な落ち着きは日本全国を探してもこの村だけかもしれない。全ては清水健吾という若者がもたらしたものである。信じられるものが無くなった世の中である。沈黙を破って、網元が
「清水君の言ってきたことで、今まで間違ったことを言ったことがない。政府が配給品の供出を強硬に言ってきている現状もあっている。しかも、とうてい現状に合わない安い価格で買い取ろうとしている実態も、役人は何も我々の生活を見ていないことを裏づけている。
もし、清水君の言うような状況にこの先なるのなら全面的な協力をする事にわしはやぶさかではない。清水君の先見の明にかける者だけが資金を出し合うという案であるならば、わしは賛成する。」と
「ワシのような老いぼれでは到底付いていけない時代やの。皆それぞれ考えて、自らの行いを決めてくれ。」と村長。
「結局村長さんはどっちじゃなのー。」と庄屋の一人が言うと。
「ワシは任せたちゅうこっちゃの。」と村長。




