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 村長以下村の主だった者を集めて秘密会議を開いた。

 力のない無能な役人がこれからどのような政策を打ち出すのかを皆と共有したいという名目で。

日銀は大企業や復員兵に対して無制限に紙幣を印刷してばら撒いている現状があり、供給が不足している配給品だけでなくあらゆる物の値段が上がってきている状態に歯止めが掛からない事態が現実となりつつあること。

 さらに配給品供出の政府買取価格が安く抑えられ、闇市等非正規価格が随分と値上がりしている為、配給品そのものが集まらなくなっていること。それに対して有効な手段を考えることが出来ない政府に対して国民は怒り、いつ暴動が起こるか分からない状態になりつつあること。

 最悪の場合は来年度早々に預金封鎖と新円切り替えが行われるかもしれないこと。などを話していった。

 幸いにも大田村はGHQとの関係もあり、早い段階で食料の確保に俺が手を打っていた為、配給そのもののシステムを変形させて、全村協力の食品その他の生産体制を築き上げることに成功し、政府の配給にあまり頼らない状態で村民自身の生活を守る体制を作ったため、村外の混乱に多少鈍感であった。

 その中で俺の発言した預金封鎖や新円切り替えとはどのようなものになるかを皆が真剣に問いただしてきた。俺も予想できる範囲として

「今のお金は価値が持っていてもどんどん失われていくから手元に置くより使ってしまいたい。一方で政府からの配給は遅くなったり、配られなかったりして、それに頼って生活する事が出来なくなっている。一方戦争で働き手を取られた農家のコメの生産力は落ち、天候不順も加わって大不作。捨て値のような政府の供出米価格では農家は真面目にやってられないから、おざなりの供出しかしない。

結果、圧倒的に米が足らない。農産物が不足する。魚介類他食品類全てが値段を上げていく。生きていくために欲しいものが時間と共に値段が上がる、紙幣は手元にあるからとにかく皆物を買う。

商人はここが商機と買い漁る。売り手が少なく買い手だけがたくさんいる状態が続いていくと物の値段が天井知らずになる。

 だから政府は市中にある全てのお金を一旦金融機関に納めさせて、必要最低限の新札だけ発行し流通させる。旧札を持っていてもある日限を持って無効、文字通り紙切れにしてしまえば市中にある紙幣は一掃され新札発行ぶんだけしかお金そのものが無くなってしまうから、物を買うことが出来なくなり物価は沈静するというのが官僚の描いた筋書きだ。

 がそんな訳あるか。もの不足だから値段がどんどん上がる道理は古今の歴史。ならば世の充足に足るだけの物を作り出すこと、もしくは充足させるだけの安い物を外国から輸入すること以外にこのインフレーションと呼ぶ物価上昇を治める方法はない。

 預金封鎖は最低額の新円現金引き出し額しか認めず、預金を使って物が買えなくなることを目指し、新円切り替えは新札しか買い物が出来ないという状態。どちらも買い物が不便になる。そして価格高騰を先導している闇市を規制するということ。しかし、闇市を全て無くすと餓死者が出るし暴動が避けられない。結局ほどほどの取り締まりになる。根本的な解決が何もされず先送りになるだけの策という事実にしかならん。


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