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 民主経済党の候補者は20名しかいなかったが、全国から民主経済党の推薦候補として公認の要請が相次いだ。それは既存政党への不満と労働党、共産党への不信感がラジオ討論によって大いに浮かび上がったためだ。さらに稲川大二郎さんが国民ラジオに度々ニュース解説で登場し、時事問題の解説や日本の地方の情報としてお便りを中心に紹介したり、時には問題解決の方法を模索したりと、現在の政治コメンテーター顔負けの多様性を発揮しながら、世の中を気持ちいいくらいにぶった切っていく活躍をし出したのだ。

 通常はG2(諜報・検閲)によって踏み込んではいけないと規制の対象になる話題であっても、稲川だけはラジオで話していくことを許される内に稲川節を聞きたくて彼の出演するラジオ番組を心待ちしている人も多くいた。

 その稲川節の中に民主経済党の施策が実行できれば瓦礫の日本の復興は10年早くできるという一説が良く出ていた。そう、彼は大の民主経済党の応援者に変貌していたのだ。自由で柔軟な思考による異次元の解決策の提示は、社会の既存の制度を大幅に変える可能性もあったが、利益の落としどころを設定すれば社会全体が潤うし当事者もまぁ我慢できるか仕方ないなーの選択も取れることとなる。

例えば、民主経済党の打ち出す山林法の考えは先祖からの山林の所有は認めるが同時に山林は国全体のものであるという考え方をする事によって、木々の伐採や植林は公認の森林組合が所定の手続きを取れば所有者の同意なしで行える方法が出来、木材の伐採量が飛躍的に多くなり、木材高騰を沈静化する効果があった。乱伐による土砂崩れが起きれば、その乱伐をした当事者の責任者や組合長が刑事罰の対象となるルールが付加されている為、植林や残される木々の選定などのルールを守った山林の攻略が森林組合の腕の見せ所となる。そこには資本主義でもなく共産主義でもない不思議なルールによって世の中を組み立てて行こうとする世界が広がっていた。その世界に稲川は魅了されたのだ。

 最終的に民主経済党の20名の立候補者は全員当選することが出来た。更に無党派層の議員から多くの賛同者が出て50名近い議員集団となり今回の選挙による議員数の第3党として日本の政治に関与していく事になるのは後の話だ。

 選挙は周りの後押しだけでなく当然本人たちの頑張りもあった。色々な人の話を聞き、時には日系二世部隊の面々を動かして問題解決をするパフォーマンスを見せることによって、GHQ内に一定の要望を入れることのできるスーパー候補として一気に熱気が上がったのだ。他の候補にはまず無理な話だから。

 英語でGHQの人間と問題について毅然として話し合う候補者の姿は当に新時代の政治家として応援者の心にバッチリ「バエタ!」のは間違いない。問題解決は結構最初からの仕込みが多かったそうであるが、G2の調査能力と表現力もなかなかのものであった。

政治後発組は多少あくどい事をして人々の人気を集める手法を取ることも仕方がないのだ。


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