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 民主経済党については横須賀に滞在中、GS(内政)のメンバーと綿密な打ち合わせを俺はしていた。何しろアメリカから遥々日本に帰ってきて仕事をしてもらう形になるのだからある程度受け入れる側も準備を整えておかないと格好がつかないし。GSとしてもアメリカの流儀をよく理解し、新しい施策も積極的に受け入れてくれる代議士の誕生は歓迎されているし、人物も日系二世部隊の関係する人物な訳だから心配しないで済む。後は日本の社会が受け入れてくれるかの問題であるが、敗戦と言う未曾有の混乱時期であるからやりようによっては大歓迎されるかもしれない。要は受け入れられる為の段取りをきちんとやっておくことが必要という事だ。

 まずは東京の選挙区の10区画と大阪6区画、兵庫、愛知、和歌山、神奈川を1区画ずつ立候補区画を決め、それぞれの中心地に店舗建物と選挙事務所をGSが借り受けた後、転貸してもらうことにして、店舗は直ぐにでもパンの製造販売が出来るように整える。設備はパン職人を育成する段階から発注はしてあった為、運ぶだけの状態になっていた。本来は米の絶対量が足りない事が明白であった為、小麦の活用でパン食の普及が欠かせない要件となっていたことから、昨年の晩秋より積極的に取り組んで来た成果が意外な所で発現出来たことになる。

  選挙事務所開設前から隣接パン屋は低価格パン販売を行い、家庭にある小麦のパン焼き代行も行う。パンに必要なイースト菌や砂糖、牛乳などは取り急ぎアメリカ軍基地から分けてもらう。取り敢えずの小麦は先般輸入した小麦を当てるが更なる輸入をGHQによって執り行ってもらう。代金は接収した資金を使いGHQの滞在費分のドル交換の一部を使うことで捻出する。これらの事でアメリカ軍は議会に対して予算を増額要求せずに日本に対して食糧支援する名目を得ることが出来た。

 選挙の公示前にはパン屋は全て開店が出来、辺り一面にパン焼きのいい匂いが広がり、連日多くの人が行列を作って手持ちの小麦粉の持ち込みでのパン焼き依頼や低価格のパンの購入に目の色を変えて群がり、パンが焼けた後から直ぐに完売するような大盛況となるのにさほど時間がかからなかった。

空腹のひもじさは経験した者でなければ決して分らないものである。それでもくそ不味いスイトンは食いたくないと感じている人が当時はほとんどであった。だからこそ、まるでお菓子のような食パンの美味しさを味わってしまうと、同じ小麦で作られるスイトン食の元に戻ろうとする人間はいなかった。

 正に東京都民も大阪府民も胃袋を掴まれて、選挙の事を真剣に考えることになったのだ。そして選挙戦が始まると立会演説会の会場では小さなパンが候補者との握手と共に必ず配られた。前日の夜徹夜でパン屋の窯はパンを焼き続けていたのだ。その頃の選挙手法として買収などは日常茶飯事のことであり、それが不正一時金を議員全員が喜んで受け取った原因の一端でもあった。

 しかし、民主経済党は一貫して現金買収はせず、食糧の多様化による低価格化と公的仕事の創造による就労支援と安価な住宅物資の供給を支援する施策の確立を訴えた。

公共工事ではGS(内政)のメンバーがニューディール政策でやった経済政策が第二次世界大戦の開戦によって、効果不明という結果の不満を持っていた。

ところが日本版ニューディールを行っていい財源を得たことでGSメンバーはアメリカ本国の政治の同意を得やすい環境に変化し積極姿勢と変わったことが、民主経済党にとって大きな後押しに繋がった。


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