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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第四章 開拓
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女神とその騎士

なるほど、これは確かにあのロベルトが落ちても違和感はない。

アーノルドは目の前に座る二人を見て思った。

長く美しい、この帝国の王族しか持たない銀髪。

今は亡き皇妃様が持っていた左右で色の違う瞳。

スラリとした体型に美しい容姿。

実際の結果を見なくともわかる。どんな令嬢でも彼女に勝つことは不可能だと。


彼女と彼は、どんな関係なのだろうか?

二人の間にあるのは尊敬の念か、それとも愛か。

アーノルドにそれを確認する術はない。

きっと、確認してはいけない。

彼らは今の関係が、今一番いい形なのだ。


多分、第二皇女様は愛を理解しきれていない。

彼女がロベルトに抱く感情が愛だと断言できるわけではないが、断言できたとしても、彼女がそれを理解するのはもう少し先になりそうだ。


「さぁて、座りっぱなしじゃ疲れたでしょ?面白いものを見せてあげるよぉ。」


アーノルドは席を立ち、カナリアとロベルトを招いて尋問室へ向かった。

興味しかない第二皇女様の反応を想像しながらアーノルドは進んでいく。


今日1日は、刺激的な日になりそうだ。

アーノルドは胸を弾ませた。


***


いろんな場所を案内したり。

川に連れていったら、第二皇女様が水面を覗き込みすぎて落ちそうになっていたり。

それを慌ててロベルトが抱き止めたり。

それを僕は横で大笑いしていた。

なるほど、彼女の周りに自然と人が集まる理由がわかった。


第二皇女様は、お優しいのだ。

彼女の待とう雰囲気が、人を自然と寄せ付ける。

彼女の周りは暖かくて、心地がいい。

まるで、女神様の膝下にいるかのように、心が凪ぐ。

どんな荒波でも、彼女が目を向ければ、穏やかになるように。


だから、ロベルトは笑える。

だから、彼はあの頃のようにならない。


「私、ちょっとお手洗いに行ってくるわ。」


夏の日差しを避けるように作られた木の下で休んでいたところ、第二皇女様はそう言って立ち上がった。


「ついていこうか?」


ロベルトが心配そうに第二皇女様を見上げる。

人とは、これほど変われるものなのだな。

いや、これが彼なのか。


「ううん、大丈夫よ。ロベルトはここで待っていて。すぐ戻るから。」


第二皇女様はそう言って建物に戻っていった。

彼女のことだ。全ての部屋の位置も用途も記憶済みなのだろう。


「……」


「……」


ロベルトと二人残され、僕は木漏れ日を浴びて目を閉じた。

二人の間に沈黙が落ちる。


「ロベルト、第二皇女様は、いい人だね。」


「…そうだな。」


垣根のそばで、誰かが植えた朝顔が揺れる。


「ロベルト、単刀直入に言うよ。彼女とどうなりたい。」


「…はっ。不思議なことを聞く。私と彼女は、今の関係のままでいい。」


ロベルトは小馬鹿にしたような笑みで笑う。

…いつも通りになった。

第二皇女様がいないと、彼は『公爵』になる。

そう、染み付いてしまったのだろう。


「君は本当にそれでいいのかい?彼女と恋仲になりたいとか、愛し、愛されたいと望まなくて。」


「ああ。だってもう彼女は………



ぶわりと風が吹く。


「ロベルトー!」


風に乗って、遠くから声がする。

よく通る、綺麗な声だ。


「カナリア。」


ひらりと、ロベルトが手を振る。

ロベルトが立ち上がった。


日光に照らされた彼の横顔は美しい。

そして、深い海の色をした瞳の先には、美しい人がいる。



煌めく銀髪。

色づいた頬。

華奢な体。

優しく細められた瞳。


白い手が、ロベルトの腕に触れた。



ああ、なるほど。



君は、もう彼女に愛されているのかもしれない。


彼女が愛を理解していなくても。


君がさっき言いかけた言葉の続きが、わかった気がする。



「綺麗だ…」



微笑みながらこちらに歩いてくる二人は、この世の人間ではないかのようだ。

とても、絵になる。


女神とその騎士が、天から降りてきたのかと間違えてしまうほどに、二人はお似合いだ。

夏の草原で、アーノルドはそう思った。



***



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