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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第四章 開拓
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その名は 2

ただのイチャイチャ

眩しい。

温かい。

遠くで小鳥が鳴いている。


「ん………」


朝日に照らされて起きた場所はいつもと違った。

ロベルトの部屋だった。

そうか。昨日、あのまま…

もう一度閉じかけていた目を開ける。

微睡の中で見たものは、ロベルトの手だった。

私よりも大きな手が、手に重なっている。

左手は使えない。

なので、右手でその手に触れた。


すると、大きな手は私の両手を包んだ。

パッと後ろを見ると、至近距離でロベルトと目が合う。

優しい、優しい瞳だった。

青い海が煌めいて見える。


「おはよう。」


そっと、挨拶する。


「うん。おはよう。よく眠れたみたいでよかった。」


大きな手は離れ、代わりに優しく頭を撫でられる。

普段よりも温かい手がゆっくりと動く。


世界は、貴方はこんなにも美しかっただろうか?

なんだろう?

貴方がいつもと少し違う。

貴方の抱いていた感情が、形を成したような、そんな感じがする。


「……ねえロベルト。愛してるの。」


それは、言葉にしたことのあるもの。

けれど、いつもと違う。

ロベルトは目を丸くした。

けれどすぐに、ふわりと笑う。

嬉しそうな、幸せそうな笑み。


「知っているよ。僕も君のことを愛している。」


ふんわり抱かれた体はやけに熱い。


なぜ、こんなに、熱いの?


わからない。


なんで。


だって、響きが違うの。


ロベルトの愛しているが、違うの。


今までの愛しているは、優しくて、温かい。


今もそうだけど、違う。



無意識に口を引き結んでいた。

握っていた手はどくどくと脈打っている。

全身に火がついたよう。


「…カナリア?」


名前を呼ばれるだけで。

私を見てくれるだけで。

それだけで、こんなにも体は熱くなったかしら…?


恐る恐る顔を上げる。

透明なサファイアに、私が映った。



***



緩く握られた白い手を包んでいた。

その手が動いて、声がした。


もう片方の手で触れられたので、二つとも手に収めてみた。

そうすれば、パッと彼女が後ろを向き、その瞳が丸くなる。

意外と近いことに驚いたのだろう。


普段よりも温かい体温がもぞもぞと布団の中で動く。

くるりとこちらを向いて、へにゃ、と笑いながら言われる。


「おはよう。」


透き通った声は高くも低くもない。

君のその一言で、嬉しくなってしまう。


「うん。おはよう。よく眠れたみたいでよかった。」


昨日は随分と夜遅くまで起きていたから、少し心配だったのだ。

そっと頭を撫でる。

触り心地の良い銀髪は月を持ってきたかのように光り輝いている。


「ねえロベルト。愛しているの。」


急にそんなことを言うから。

思わず頭を撫でる手を止めてしまった。

でも、君から言ってもらえて嬉しくて。


「知っているよ。僕も君のことを()()()いる。」


言葉にして仕舞えば、それはもう確信に近くなる。

そうだよ。僕も愛しているんだ。

世界で一番。

生きてきた中で一番。


撫でていた手をカナリアの背に回す。

そのまま抱きしめた。

あまり力を込めすぎないように気をつけながら。

愛している君から贈られた愛しているは、こんなにも嬉しくなっただろうか。


暫く経って我に返ると、カナリアが微動だにしない。


「…カナリア?」


小さな頭を見つめる。

ゆっくりと上げられた顔は、真っ赤になっていた。


「……!?」


きゅっと結ばれた小さな桃色の唇。

赤くなった顔は今まで見たことがない。


呆然とその顔を眺めていると、カナリアは恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋めた。

ぎゅっとシャツを握られ、よく見るとその手もほんのり赤い。

顔は見えないけれど、髪から覗く耳は小さな林檎のようだ。


これは、いけない。

こちらが、抑えられなくなる。


「カナリア様ーーーーっ!!!どちらにいらっしゃるのですかぁぁーーーーーーーーーー!!!!!」


突如響いた悲鳴にも似た叫びに二人して驚く。

なんだか甘くなった雰囲気はそれで飛散した。


「へっ!!??」


びく、と飛び跳ねたカナリアはするりと腕から抜けてしまう。

そのままごろごろと部屋の角まで転がった。

少し寂しい気持ちになりながらも、猫のようなその仕草に笑ってしまう。


「ふふ…」


ああやっぱり、僕は君のことが好きなんだな。


「ほら。どうやら屋敷を騒がしくしてしまったらしい。起きようか。」


そっと手を差し出す。


「…うん。」


そっと取った手は、まだ赤かった。


こうして、ロベルトの部屋から出てきたカナリアを見てメイドたちは安堵し、レイは主人の失態に呆れ、カナリアはただただ困惑し、ロベルトはなんだか嬉しそうにしていた。


こうして、カナリアたちのいつも通りの日常は幕を開けた。

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