その名は 1
その夜。
ロベルトと一緒に大事なことを決める。
両方とも、湯浴みを済ませ、後は寝るだけの状態である。
「やっぱり、これかな。」
「うん。」
二人に名前をあげようと思ったきっかけは、実に単純明快である。
分かれる間際、名前を聞けばないと言われた。
なので、私たちが考えてもいいかと聞くと、喜んで承諾してくれた。
たくさんの名前の中から厳選した二つの名を、あの子達にあげようと。
そう決めて、こうして真夜中にロベルトと一緒に机に向かい合っている。
試行錯誤して悩んだ末に決まった二つの名前。
何枚もの紙に書かれたたくさんの名前の中に付けられた二つの丸は存在感がある。
・アランディーノ
・ヴァロアナ
それは、この国の古い言葉で「幸福」を意味する。
アランと、ロアナ。
愛称も可愛らしい。
「私たちの『幸福』。貴方達の髪は不吉なんかじゃない。
私に『幸福』を運んでくれた、綺麗な色。
貴方達の歩む先が、例え真っ暗闇に見えても、進んだ先に明るい結末が訪れますように。」
この名が、暗闇を照らす灯りとなりますように。
***
温かな体温がくっつく。
小さな白い手が握られている。
伏せられた睫毛が白い頬に影を落とす。
川のように流れる銀髪は翼のようにベッドに広がっていた。
あれから、カナリアは眠ってしまった。
部屋に連れて行こうと思えば、一緒に寝たいと言われた。
そんなお願いを拒む術を僕は持ち合わせていなかった。
ということで、こうやって僕の部屋で寝ているというわけだ。
普段とは違う暖かさに違和感がある。
でも、嫌いじゃない。
寧ろ、心地好い。
「アランと、ロアナ。」
それがあの子供達の名前。
カナリアがつけた、美しい名前。
『貴方達の歩む先が、例え真っ暗闇に見えても、進んだ先に明るい結末が訪れますように。』
カナリアはそう言っていた。
私たちのつけた名前があの子達の灯りになれますように。とも。
君は、どこまで彼らの先を見ているのだろうか。
とても遠くを見つめていた。
銀河の果てよりも先にある、決して証明のできない場所を。
カナリアを見る。
隣で眠る愛しい存在の隣にいたいと、そう願っては駄目だろうか。
その瞳に僕だけを映して欲しい。
君が見る世界が、美しいもので溢れていてほしい。
君の笑顔を一番に見たい。
君に笑っていて欲しい。
そう望めば望むほど、心の奥底にある感情が溢れ出す。
それは温かくて、黒い。
もう、目を逸さずにはいられない。
僕は、君に惹かれている。
君の笑顔に。
君の優しさに。
芯があって、美しい。
僕の大切な人。
命に換えても守りたい人。
ねえ、カナリア。
愛がわからない。
これは本当だよ。
でもね、カナリア。
定義など存在しなかったんだ。
僕が気づいたら君に惹かれていたように。
それは愛にも言えることで。
どうしようもなく、君が愛しい。
理由はたくさんあるけど、ない。
だって、君がそこにいるだけで、生きていてくれるだけで僕は満たされる。
君を幸せにする存在が、僕であってほしい。
本音を言えば、僕がいい。
物心ついてからずっと人を好きになったことがなかった。
でも、君は違う。
僕が見つけた唯一。
君は、僕を選んでくれるのかな。
そっと手を取る。
僕の全てを捧げるから。
どうか、僕を選んで。
***
この日、ロベルトの感情は変わった。
慈しむ存在。愛する存在。
それは人に抱いた感情。
惹かれた人。愛している存在。
今この時、ロベルトは"カナリア"に惹かれた。
恋として。
それを本人が知るのは、もう少し先の話である。
大晦日!
今日はご馳走の我が家です!
ようやく!ようやくですよ!ロベルトっ…作者はこれが書きたかった!!




